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道標ない旅-2

 「ところで、諸君」五十六は、胸ポケットからサングラスを取り出して気取りながら掛けると、静かに話し出した。

「われわれの活動だが」五十六

「まったくすぐに豹変するんだから」そう言いながら、美弥は近くの椅子に座り、由貴子を呼び寄せた。由貴子は美弥の側に腰掛け、健太郎も近くに座った。

「さて、先日開設したホームページだが、色々バグもあって、問題が多い。いくつか問題点も発見したのだが、まだまだ修正が必要だ。それに、学校の監査も入っていて、非常に面白くない」五十六

「なに言ってんのよ。学校の紹介のホームページなんだから、先生がチェックするのは当たり前でしょ」美弥

「もちろんだ。しかし、このままでは、われわれの自治権が、ない」五十六

「基本的人権の侵害」健太郎

「その通り、新井君。君の意見は貴重だ」五十六

「バカなことばっかり!」美弥

「そこで、私見ではあるが、ひとつ提案がある」五十六

「なによ」美弥

「裏ページを作ろうじゃないか」五十六

「やったぁ、俺たちも裏ネットか!」翔

「バッカじゃないの!学校のホームページに猥褻画像載せようなんて!」美弥

「待ちたまえ、久保田君。だれが、猥褻画像を載せると言った。まぁ、君が脱ぎたいというなら別だが。私の言ってるのは裏ページだ。つまり、表ページは、学校の紹介だ。いまあるように、先生から頼まれたように、この学校はどこにあって、校内の様子はどんなで、授業はどんなで、入試要領はどうやって手に入れるか、というものだ」五十六

「そうよ」美弥

「一部、われわれの会を中心に、クラブ紹介もあるけど、通り一辺で面白くない」五十六

「もちろん」美弥

「『お手紙ください!』のコーナーも全国の学校からぽつぽつと送られてきて、すこぶる良好だ」五十六

「そうそう」翔&健太郎

「しかし、これでは面白くもなんともないじゃないか。われわれの肉声を感じてもらうにはどうするか、それが裏ページだ」五十六

「だから、なにをしたいの」美弥

「久保田君。睨まなくてもいい。かわいい顔が台無しだ。手っとり早く言おう、チャットだ」五十六

「チャット?こんなとこに?」健太郎

「ツィッターじゃなくて?」翔

「学校のホームページにチャットなんて必要なの?」美弥

「普通はない。しかし、これは面白い試みだと思わないか?メールとして送られてくるものに、われわれがリアルタイムで直接返事することができるんだ」五十六

「でも、おかしなヤツが入って来ないかな」翔

「それならそれでもいい。うまく騙してメールアドレス聞き出して、警察に通報すればいいだけだからだ」五十六

「でも、ずっと相手してられないわよ」美弥

「当然だ。だから、例えば木曜の4時~5時というようにパーティを開けばいいんだ」五十六

「悪くないな」健太郎

「毎週やってると大変なら隔週でもいい。ライブで応答できるということに、意義がある」五十六

「インターネットの利点って、そういうところなのよね」美弥

「電話のほうが早い、というのは現状のことで、将来どうなるかわからない。今やっている試みが、将来メジャーになるかもしれない」五十六

「五十六、やってみようか」翔

「ただ、学校に言うと、認可されないかもしれない。なぜなら、まだまだチャットに対する理解が得られていないからだ」五十六

「犯罪に巻き込まれる可能性もあるしね」美弥

「そこで、内緒で、組み込んで、取り敢えずは試しにやってみようじゃないか、ということだ。如何だね、諸君」五十六

「異議な~し」全員

「いいわ。ね、ユッコちゃんも」美弥

「うん。なんか、楽しそう」由貴子

「よーし、それでは諸君の同意を得たところで、煮詰めていこう。と、言っても、すぐに意見はでないだろう。そこで、今日のところは、この話はここまでで、帰って色々考えてみてくれたまえ。家のコンピューターであちこちのチャットにアクセスしてみるのもいいだろう。目標を一ヵ月先、ということにして、計画していこう」五十六

「でも、もっとすぐにできるんじゃないの」健太郎

「まぁ、一ヵ月というのは、最悪の場合ということだ。早ければ来週でもいい。しかし、周知するには二週間はかかるだろう」五十六

「シュウチ?」健太郎

「そう、チャットを開設したということを知ってもらい、そのパーティに時間を調整してもらうのに、そのくらいは見ておこうということだ」五十六

「五十六、きれてるぅ」翔

「一度にたくさんアクセスしてきたら大変じゃない?」美弥

「それも、意見としてまとめて欲しい。通常のチャットだと、五六人というところだが、こちらの専用ネームも四本用意しておく必要があるだろう」五十六

「わぁー、大変だぁ」翔

「新聞部とか、協力してもらったら」美弥

「それも意見として聞いておこう。ただ、中川はがめついから、金を取られる可能性もある」五十六

「それは、あんたたちの関係でしょ」美弥

「俺、新田と去年同じクラスだったから、話してみようか」

「意見がまとまってからでもいいだろう。それに、裏ページで進める以上、新聞部に知れるのは都合が悪いかもしれない」五十六

「成功した暁は、ってとこだな」

「まぁ、そういうことだ。その時は、新聞部中心に文科クラブに助けを求めて、ゆくゆくは正式のクラブに昇格する。そのプロジェクトの第一段階でもある。くれぐれも慎重に事をくれたまえ」五十六

「イェス、サー」健太郎&翔

「なお、このテープは自動的に消滅する。ドッカーン!」五十六

「なによ、びっくりするじゃない」美弥

「スパイか探偵みたいね」由貴子


 五十六はサングラスを外した。


「じゃぁ、そういうことで、とりあえず今日は、ホームページの修正をしていこうよ」五十六

「完全に別人みたいだな、いつも思うけど」健太郎

「昔っからこうなの」美弥

「昔っからって言ったって、小学校からサングラス掛けてたわけじゃないだろ」健太郎

「掛けてたの。信じられないかもしれないけど」美弥

「嫌だな、二人とも。これはサングラスじゃないよ。ただの色つき眼鏡。ちょっと色が濃いだけ」五十六

「こないだも、先生にそう言って、殴られてたじゃない」美弥

「僕たちの主張は通らないんだ。大人なんて、都合のいいときに子供扱いして、都合のいいときに大人扱いして、僕たちをもてあそぶんだ」五十六

「はいはい。さぁ、やりましょうか」美弥

 冷静に美弥はそう言ったあと、コンピューターの前に座っている由貴子に指示をした。

「先にメールチェックしてみて。何か苦情が入ってるかもしれないから」美弥

「はーい」由貴子

「ちぇっ、いつもほったらかしかよ」五十六

冷めた五十六に健太郎はそっと耳打ちした。

「いいじゃないの、おかげでスケベ画像はうやむやになったし」健太郎

「まぁね」五十六


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