説教
う、うーん。
えーっと、あー、そういう事か。
目の前には白を基調とし、美しい装飾をされ、数人の………えーっと、何か物語に出てくる神父みたいな格好の人が居た。
ここは教会。
まあよくあるRPGでのリスポーン地点だね。
この国に来た時にこの国の住民登録をしてリスポーン地点が変わる事を言われたのを思い出した。
そして隣にはケイが。
うん、これ怒られるな。
よし、逃げよう。
そう思い立った矢先にその神父みたいな人がこちらにやって来た。
「あの、大丈夫ですか?」
え、あ、はい。
いきなりの事で俺は戸惑ったがとりあえず頷いた。
「そうですか、それではこの請求書にサインを」
…………ええ!?
「請求書?」
「ああ、あなたは外部からやって来た人でしたか」
うーん、外部からっていうかまあ最近やって来たんだけど。
「この教会は仕事の一つなのですが、我々は食堂を利用せずに個人で成り立っているのです」
個人で?
「ふーむ、まだピンと来てないようですね」
「詳しく説明すると、まずこの教会はリスポーン位置の設定、そして傷の治癒を目的として建てられました」
「まあ殆どがリスポーン位置の設定なのですがね」
へー。
「とはいえいくらその為でも誰も管理する人が居ないというのはまずいという事で治癒をする為の人という名目でその管理者として神官という役職の人の仕事はそのようになりました」
「まあ元々神官とはそういったものなので別に異論は無かったのですが」
なるほど。
「しかし、ここで問題が起きます」
「この問題とは教会の仕事は一切利益を出して無いという事です」
え?利益なら治癒をする事と管理する事で出してるじゃん。
「どういう事?」
「え?どういう………ああ、そういう事ですか」
「ここで言う利益とは共用の利益の事です」
???
「まず仕事という制度は基本的にランダムなものと固定のものの二つがあります」
うん、そうだね。
あ、因みに俺はランダムだよ。
まあ仕事はサボる事が多々あるけど。
「そしてその固定については基本的に無くてはならないものをしているんです」
「門番しかり、食堂しかりとね」
「しかし教会については祈りに来たりするNPCさん達への対応、そして傷付いた人への治癒、そして教会の管理です」
「これらの役割が無くなったらどうなります?」
え?うーん………
「変わらない?」
「そう、全体的にパッとしない仕事な為それほど皆さん重要視しないんですよ」
「まったく、こっちは人数が少なくて大変だっていうのに」
愚痴溢してる。
大変なんだなー。
「特にプレイヤーの方は傷付いたら死ねば回復出来るからって私達を邪魔者扱いしてるんですよ?」
「それなら遠出して強い敵と戦えば良いってものを野宿やだーって子供ですかまったく!」
あーあー、めちゃくちゃ言うじゃん。
「っとすみません。忘れて下さい」
いや、あんだけ言われたら忘れてくれって言われても………
「えー、それで私達はそういった事でクレームが来て、対応に困った為私達はケイさん達に相談しました」
「するとレインさんはリスポーンに対して多少の請求をし、それを食堂に渡せば良いんじゃないかって提案してくれたのです」
「そうすれば食堂の食事を多少豪華にする為の肉等を調達出来るから教会の大切さも分かるんじゃないかっと」
「いやー、その提案はまさに目から鱗でしたよ」
「そしてその制度を実装したらもう始めはクレームの嵐でしたが今ではすっかり大人しくなりましたよ」
「本当、ざまあみろって感じですね」
「あなた達が別にクレームを寄越さなければ別にわざわざこの制度を入れる事も無かったのに」
「因果応報、最高ですね」
………この神父腹黒過ぎない?
「っと、まあそんな訳でこの請求を飲んでもらいます」
そう言って彼は俺に紙を渡した。
えーっと、ああなるほど。
小動物の場合は五匹。
真ん中の動物は三匹。
大きな動物の場合は一匹狩ってくれば良いのね。
そしてあの猪はダメ。
あー、あれ大きいもんな。
あんなのが沢山来たら調理大変そう。
「う、うーん」
あ、ケイ漸く起きた。
「え?あー、そうか」
「それじゃあケイさん、これを」
「ああ、分かった………所でレイヤ?」
ん?どうした………ってヤバっ!
「どうしてあの時あっちに行ったのか聞かせて貰おうか」
よし、逃げろ!
「待て!」
………………
…………
…
「それで、どうしてあの時あちら側に行ったんだ?」
そうライルは正座をし、反省するポーズを取った俺に言った。
うん、何で俺が帰ろうとした先に何でいるの?
俺はあの後教会から飛び出してケイを振り切り、森に入った。
そしてほとぼりが冷めるのを待つついでにこの請求書にある魔物を狩ってたんだよ。
そしてこっそり戻ってその魔物を渡そうとした訳だ。
やっぱり借金?仕事?
うん、まあどっちでも良いけど残ってるのは嫌じゃん。
だからさっさとそれを処理しようとして帰ろうとした先にライル達が。
いやー、何で気付かなかったのかなぁ。
まあ十中八九この妖力感知と気配感知に慣れちゃったからだと思う。
この森には沢山のプレイヤーが居るから人を感知するのは当たり前な訳だ。
だけど勿論個体差はあるし、それを意識したら誰が誰かも分かるんだけど、最近は全然命の危機に瀕してなかったからかなぁ。
うん、一切意識して無かった。
あ、因みにライや師匠との戦いの事は含まれて無いよ。
あれはまあ例外例外。
という訳で彼らに捕まってしまった。
別に逃げても良かったんだけど何かねぇ。
うん、ちょっと怒りの威圧って言うのかな?
はい、正直に言うと怖かった。
とまあそんな訳で連れて行かれてここはケイの家。
そして俺は説教を受けてる。
第一何でいるの?
あの場所に着くには一日位掛かった訳だよ?
あれから数時間しか経ってないのにここに着いてる。
おかしいでしょ!
という訳でライル達に気付かなかったのは必然なのだ。
うん、そういう事にしよう。
「おい、聞いてるのか!」
っとまあ言い訳はこの位にして答えないとだね。
「行ってみたかったから」
「ああ?」
「ただそれだけ」
うん、本当にそれだけ何だよね。
興味があったから行った。
ただそれだけなんだ。
「おい、本気で言ってんのか?」
「まあまあライさん」
「あれは団体行動だった。単独行動じゃないんだから勝手な行動は慎むべきじゃねぇのか?」
「落ち着いて」
そうシズクがなだめるが、完全に非はこちらにあった。
「ごめんなさい」
そして俺は謝った。
うん、確かにあれは団体行動で勝手な行動はしちゃダメだね。
やっぱり俺は自分で全てを決められる単独行動の方が良いや。
それにしても怒られるとか久しぶりの事だなー。
「ああ、それで良い」
話はそれで終わり、次にイースが聞いて来た。
「ねぇ、ところであの外ってどんな感じだったの?」
「あ、それは気になるわね!」
「うーん、俺はあの時レイヤを引き戻すのに夢中で殆ど覚えてないんだよね」
「じゃあレイヤ、どんな感じだったの?」
ええ!?いきなりだなぁ。
うーん、あ、そういえば、
「称号手に入れた」
「称号?」
「あ、本当だ。………うん、言葉では表せないから紙に書くけど「※!∈%⇔∂っていうのが追加されてる」
「何だそれ」
「変なの」
本当にこの称号と言い、状態異常と言い訳分からないよ。
「まあ結局は分からず終いって事か」
「そうか?変な称号を手に入れただけ進展あったと思うぜ」
「そうね、また調査出来る時に調査しましょ」
「そうだな、暫くは無理そうだがあれが出来れば時間が空くだろうからな」
「え?あれって何何?」
「まあそれはお楽しみって事で」
そう言って今日は解散した。




