イースサイド16
あれから数日経過した。
そして未だに僕はこの国にいる。
何故かって?
世界樹さんの事をまだ後悔しており立ち直れ無いから?
否!
久しぶりに昔の夢を見たから?
否!
っていうかなんで知ってるの?
まあそれは良いとして。
僕がこの国から離れていない理由。
それは、この子達が可愛い過ぎるからだーー!
そう言った僕の手元には小さな人間の子供が居た。
この事態は数日前。
世界樹さんが死んだ次の日に起こった。
………………
…………
…
うーん。
寝覚めが悪い。
なんで僕は今あの時の事を思い出しているんだろう。
まあそれは別に良いか。
はあ、世界樹さん………。
ダメだ、切り替えないと!
顔を洗ってと。
よし、多分皆も今日は暗い雰囲気になるだろうから僕が盛り上げないとだね。
さて、何かゲームでも創ろっかな。
オセロ大会とか。
うーん、逆に暗い感じになりそう。
そんな思考を巡らせて外に出ると…………
「えーーーーーー!?!?」
沢山の人間の子供が歩き回って居た。
「え?え?どういう事?」
そんな風に混乱する僕の声で皆も起きて来たようだ。
「うわっ何だこれ?」「可愛いーー!!」…………
「どうたしてこうなったんだ?」
そしてそう呟くナイトとその子供を抱きしめてミルがやって来た。
「いや、僕にもさっぱり分からないよ」
三人で暫く呆然としていたらどうしてこうなったかが分かった。
倒れた世界樹さんによって壊された柵の間から魔物達が入って来てるのだ。
そしてその魔物を殺そうと僕は近寄ろうとしたらナイトがそれを止めた。
「ちょっと待って………もしかしたら」
そうナイトが呟いた次の瞬間!その魔物は世界樹さんの切り株の上に乗るとここら辺にいる人間の赤ちゃんと同じ姿になった。
「え!?これ魔物達なのー!?」
「うん、そうみたいだね」
「この子も可愛いーー!!」
ミルはともかく僕とナイトはかなり驚いた。
ひとまずその柵を修復して世界樹さんの亡骸?はとりあえずこの国の中に入れて置いた。
「…………この子達どうしよう」
「殺す?」
「こんな可愛い子供を殺せる訳無いよ!」
「うーん、となるとこの子達を皆で育てる?」
「そうしよ!」「そうしましょ!」「おう!」………
独り言のつもりで呟いたのだが周りの皆もその意見に賛成のようだ。
世界樹さんが死んだ事から精神が弱くなってるだろうし子供を育てるのでそれを癒せるかもしれない。
そう考えた僕はこの国の住民としてこの子達を招く事に決めた。
………………
…………
…
まずはこの子達を世話出来る場所。
そして世話する人。
更にはその世話の内容についての情報収集をしなければならない。
世話出来る場所については保険としていくつかの家があったのでそこを使う事にした。
次に世話をする人だが、これはすぐに決まったね。
ミルとは他にアイスさん、ミレイさん、ナツさん。
この四人で面倒を見る事になった。
流石に一人で面倒を見るには人数が多過ぎたからね。
そしてその世話の内容としてはおばあちゃんがこのゲームに居てね。
確か名前は菊さんだった筈。
このゲームで漢字の人が居たなんて初めて知ったよ。
それでそのおばあちゃんが彼女達に育て方を教えてくれてる。
それでそのお世話する人……うーん、長いしこれからはシスターって言うか。
姉妹を英語にするとシスターなんだけどなんで世話する人もそう言うんだろう?
あ、これは因みに流行ってた漫画をこっそり読んだ時の知識だよ。
僕は基本的に経済学とか心理学の商売に関わる勉強をさせられてたから普通の授業はある程度免除されてたんだよなー。
歴史の授業とかで普通習ったりするのかな?
いや、確か教会の女性をそう言うんじゃ………
ってそんな事どうでも良いんだよ。
で、そのシスターにならなかった理由は「子育ては大変だし若い人に任せる」だって。
やっぱり子育ては大変なんだなー。
さて、それじゃあ早速そこに行こうか。
だってあの可愛い子供が沢山いるんだよ?
皆の前ではじっとしてたけどミルみたいにすぐにでも飛び付きたかったんだよね。
………………
…………
…
着いた。
ガチャ
「うわー!」
中には沢山の玩具とそれで遊ぶ子供達が居た。
因みにその玩具は僕が出したものだよ。
中には何人かのプレイヤーが居た。
やっぱり考える事は同じだよね。
ここだけでは無く何個かの家にその赤ちゃんをお世話する場所は別れている。
ここは、
「あ、イースじゃん」
ミルが担当だ。
「こんにちは、遊びに来たよ。ところで………」
僕は奥の隅にいる子供に目を向ける。
「ああ、あの子ね」
「あの子どうやら私達が怖いみたいなの」
「あー………」
確かにずっと野生で生きてたんだしそうなるのもしょうがないか。
よし、今日は仕事をさぼってあの子に懐かれようか。
どうせ今日はまだあの事が影響で皆仕事をさぼるだろうしね。
「こんにちはー」
僕はそう話し掛けた。
「ひっ!」
するとその子は脇目を振らずに逃げた。
うわー、これはかなり重症だなぁ。
うーん………そうだ!
そして僕はスライムの形に変わった。
うん、魔力がすっからかんだけど最近になって人化をスライムの時でも出来るようになったんだ。
今までは別の身体に変えてってやってたんだけどね。
…………あれ?これ鑑定されたら大変な事に………。
うん、後で考えよう。
この状態ならあの子も怖がらないでいられるんじゃ無いかな。
僕は逃げて隅で遊んでいるその子に近付いた。
「うわっ!」
その子は僕に気付くと驚くだけで逃げはしなかった。
よし、このままスキンシップを取って人間の姿でも話せるように………ってこの姿じゃ話せないじゃん!
そんな考えをしている僕をその子は持ち上げて、抱きしめた。
え?え?これは仲良くなってるのか?
そう混乱する僕を気にせずその子は玩具の衣装等で僕を飾り付けて………ってこれ完全に玩具にされてるだけじゃん!
それともペット感覚なのかな?
じゃなくて!
しっかりと僕は大人として接したいの!
あーでもこの状態じゃ話せないしなぁ。
ミルも見てないで助けてよー!
するとついに助け船が来た!
「おい、イースはいるか?」
ナイトーー!!
ここだよ!助けてー!
「あ………ってなんでその姿なんだよ」
この子と仲良くなろうとしたら何故か………ね。
「まあ良い、連れて行くぞ」
そう言って僕をその子から取り上げた。
そしてその子は僕に向かってバイバイしてる。
えー!!めっちゃ可愛いんだけど!!
これを人間の姿で見れたらなー……最高じゃん。
そうあの子との生活を考えていると、
「着いたぞ」
ナイトそう言った。
……………
………
…
着いたの?
そして僕は周りの光景を見て、絶句した。
死体の山?
魔力も溜まったし念話が使える。
ナイトに詳しい事を聞かないと。
『ナイト、これどういう事?』
『うおっいきなりだな。………だがそれを俺に聞かれても分からない』
『え?分からないの?』
『ああ、まず普通プレイヤーは五分程でリスポーンする筈だ』
『…………つまりこいつらはプレイヤーじゃ無いって事?』
『いや、世界樹さんがプレイヤーって言ってたから違うだろう』
じゃあ……どういう事なんだ?
『まあ簡単な話、リスポーンしなかった』
『つまりはこのゲームで初の死人が出たという事だ』
『え!それってヤバくない?』
『ああ、その事実はまずヤバいんだがそれ以上に』
『これをプレイヤーが知ったら大混乱に陥る、か』
今まで死なないと思って行動して来たのに急に死ぬなんて事実が上がったら大変な事になるよ。
『ああ』
『だからこれらの死体を全て吸収し、この事実を抹消してくれ』
………心苦しいけどそれが最善……
『分かった』
そして僕は広範囲に広がったそれらの死体を吸収し、人化をした。
「この事は?」
「一応数人は知ってるがばらさないようにと伝えた」
「噂は残りそうだけど仕方無いか」
「そうだな」
そう話して僕とナイトは解散した。
……………
………
…
あれから数日、あの後人間の姿で行ったんだけどなんと怖がられなかったんだよ!
それからは帰ろうとすると泣いて引き留めようとしてその姿がまためちゃくちゃ可愛くて……
最、高!
だけどそのおかげですぐに怪しまれなくする為にあの国に戻ろうと思ってたのにずるずると数日が経った。
流石にこれ以上はやばそうだったので戻る事にした。
さて、それじゃあ行こっか。
不審がられない事を祈ってね。




