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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
6章 混沌
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ケイサイド12

ライルさんとヒシリーさんが死んだ。


それはあまりにも信じがたい事だった。


この世界はゲームの中で俺達は死ぬ事は無い。


だからこそより死とは無縁になっていた。


勿論この国に住んでいるプレイヤーじゃない人々。


俗に言うNPCの人達が死に、そういった人達に深く関わっていたプレイヤーが「この人の為にお葬式をしてくれ」って頼まれてした事もあった。


とはいえ正式なものが何かは分からない為、火葬をしてその姿を見て黙祷をするのみなんだけど。


それでもその人を思って涙を流す姿を見て、して良かったと思えた。


そしてそれと同時にいずれ俺達にもそういう事が起こると覚悟しているつもりだった。


だけど実際にそうなるとそんな覚悟なんて一瞬で崩れ去った。


今すぐにでも一人になって喚きたい程に。


とはいえこんな沢山のプレイヤーの中でリーダーの俺が泣くのはどうかっていうリーダーの肩書きが邪魔して素直になれなかったが。


だが、そんな時に。


『聞こえるか?』


そう、ライルさんの声が聞こえたんだ。


「え、ライルさん?」


「なんだこの声………」


どうやら二人も聞こえたみたいだ。


『どうやらあいつの言っていた事は本当みたいだな』


『そうみたいね』


「え?ヒシリーさんも………どうして………」


『私達ちょっと私達を殺した人から時間を貰ったの』


『ああ』


「え!?……………ライルさん達を殺した人から?」


一体どうして…………


「その人の名前は…………」


『すまないがそれは言えない』


え!?


「何故?」


『口止めさせられてるからよ、それに私達は別に敵打ちなんて望んで無いしね』


『俺もだ。………時間を貰ったしこういう時は最期の言葉でも言えば良いのか?』


「最期の言葉…………」


「そうか、もう会えなくなるんだな」


「そうね」


『まあ俺から言える事は自由に生きろ程度だな。俺の二の舞にだけはならないでくれ』


「二の舞?」


『私からは自分のしたい事は押し通せ!かね』


「したい事?」


『そうだ!ちょっと私の記憶とあんたの記憶渡してみない?』


『そんな事出来んのか?』


『ええ、私に任せなさい!』


「え?記憶?」


俺達がライルさんの言った事に混乱している間、話は勝手に進んで行った。


『ちっこれは流石に無理か。じゃあこれで』


『分かったわ』


「これは…………精霊さん?」


シズクがそう呟いたその瞬間、頭に様々な記憶が流れて来た。


「ぐっ」


「あっ」


「くっ」


『ちっそろそろ時間か。最後に一つ、この世界を救いたいなら俺の日記を探して過去の出来事を探………』


『え?』


そう最後にライルさんは言い掛けて居なくなった。


「え!?それってどういう…………」


「…………ダメだな、もう逝ったみたいだ」


「そんな………もしかして師匠さんも同じように残してたりしない?」


「いや、近づいてみたが何も反応が無い」


そうライルさんが言った瞬間師匠達が死んだ事を改めて悟った。


「師匠さん達が死んだ…………悲しいだろうがここで突っ立っていても意味ねぇぞ」


「一先ずここに集まって来た人達の整理と死体の処理をしようか」


「うん…………」


その後俺はそこに集まって居た人達を仕事に戻らせた。


師匠達が殺されたという衝撃は俺達にはかなり強かったが、ライルさん達は他のプレイヤーとめちゃくちゃ関わっていたという訳では無かったから他の人達は通常通り仕事をこなした。


だが、俺はライルさん達が死んだ事が衝撃的でその日は仕事をサボって家に籠った。

………………………

………………

……


一晩泣き更けり、起きたのは昼だった。


それでも何があったかを思い出し、更に涙を零しそうになったが頑張って思い留まった。


涙を零したら再び泣き更けってしまうと、そう思ったからだ。


もし再びそうなったら皆に心配をさせてしまう。


だから虚勢を張っても俺はそれを続けよう。


リーダーがそんな状態じゃあ皆も普通の生活を過ごせないだろうから。


俺はそう考えた。


そして俺はそんな精神の不安定な状態で数日過ごした。

……………

…………


俺は普通に過ごしたと思っていたのだが、ライとシズクは心配してくれた。


まあ俺は逆にシズクが精神を病んでいるような状態だったから無理矢理休ませたんだけど。


そんな日々を過ごして今日が終わった。


日に日に精神が病んで行く。


自覚は無かったのだが今考えるとそんな感じだった。


しかし今日はいつも通りライ達と解散し、家に帰るとライが来た。


何かと思って部屋に招くとライは言った。


「ケイ、無理し過ぎるなよ」


「無理?」


「気付いて無いのか?俺から見ると大分無理していると思うんだがな」


「俺は別に今すぐその悲しみを越える必要は無いと思うぜ、だから、無理するな」


そう言ってライは去って行った。


俺はその言葉を聞いた瞬間に涙が溢れた。


そして同時に俺は無理をしていたのだと自覚した。


今すぐ悲しみを乗り越える必要は無い。


その言葉は深い安心感を与えてくれた。


いつの間にか寝ており、朝起きると今までの辛さが嘘のように吹き飛んだ。


そうは言っても時々ライルさんの居た日々を思い出して悲しくなるのだがそれでも前のようになる事はなかった。

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