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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
6章 混沌
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とある狼の一生

妾は妖魔神狼皇王という狼の一族に生まれた。


まあ簡単に妖魔の一族でも良いんじゃがな。


その一族は百年程武術、妖術、魔法を鍛えて極め、漸く一人前になって役目を果たすのじゃ。


じゃがな、妾は異端だったのじゃ。


妾は幼少の時から訓練をしたのだが、そこまでして役目を果たそうとは思わなかった。


まあ妾は役目が何か知らなかったのじゃがな。


で、それじゃから妾は別の事をしたいと父上に言ったのだがな、父上はそれを認めなかった。


そして妾は家出をしたのじゃ!


今思えばあの頃の妾はなんと若かったか。


じゃがそれだからこそ今の妾がある。


妾はそれから旅をした。


幸い妾の種族は他の種族よりもかなり優れており、殺される事など無かった。


じゃがな、その途中で妾は思ったのじゃ。


妾よりも下である種族を妾が育てたらどうなるのか、と。


今思えば馬鹿な疑問だとは思ったが幼かった妾はそれが疑問で仕方が無かった。


じゃから妾は早速してみたのじゃ!


確か最初に育てたのは………猫じゃったか?


言語の壁等の沢山の壁があったのじゃが、それでも伝わった時は嬉しくて嬉しくてのう。


父上達はこの気持ちを味わう為に妾達を育てたのかと疑った程じゃ。


それから妾は沢山の弟子を持った。


妾よりも強い弟子が出来た時は驚いたものじゃ。


それから暫くしてある森に来た。


その時に丁度人間達の言っている天変地異とやらが起きたのじゃ。


妾は助かったが恐らく弟子達、そして父上、母上が死んだ。


とはいえ死など長く生きて来た妾にとってありふれた事じゃったからな。


悲しくは思ったのじゃが妾は「安らかに眠って下され」と黙祷してその事は割り切って妾は再び弟子に出来そうな者を探したのじゃ。


そしたらの、『これから異界者を送ります、その者らはこの世界に少なからず善き影響や悪しき影響を与えるでしょう』って声がいきなり聞こえたのじゃ。


これには流石の妾も驚いたのう。


そして妾は思ったのじゃ。


その異界者とやらを弟子にしたら面白そうじゃと。


じゃから妾はその時を待ち、一匹の狼をその標的に定めた。


その狼は凄く、この辺の魔物から一線を引く強さを誇るあの猪に勝ったのじゃ。


妾はそんな姿を見て「こいつじゃ!」と思ったのじゃな。


とはいえおかしなタイミングで弟子にしに行くと敵だと思われそうじゃからタイミングを見計らってな。


その途中で動かなくなったりしたのには驚いたのじゃがな。


そうして妾は最高のタイミングであやつの使っていた念話で話し掛けた。


なのにあやつは妾をストーカーと申したのじゃ。


まったく、失礼な奴よな。


その後なんとか色々と言って妾はあやつを弟子にする事に成功したのじゃ。


じゃが妾が異変に気付いたのはこの後じゃ。


あやつ、一切心を動かして無いのじゃ。


驚き、嬉しさ、悲しさ等がある時あやつが脳と呼んで居た場所の何かが動くのじゃ。


その何かが一切動かない。


なのにあやつは普通に話す。


その事に恐怖し、妾は適当な事を言ってあやつを飛ばしたのじゃ。


種族固有スキル、地獄の門を使ってな。


確か父上はヘルゲートと呼んでいたのう。


これは妾の一族に伝わるスキルの一つで何に使うかは教えて貰って無いのじゃが、ヤバい場所に対象を飛ばすスキルと聞いていた。


そこに住む魔物は妾達の何倍もの強さじゃと。


じゃから妾はそこに飛ばし、この恐怖を無くそうとしたのじゃ。


じゃがな、妾は弟子にした奴を殺そうとした。


あれからの妾はそんな罪悪感で一杯だったのじゃ。


じゃからその罪悪感から逃げるように妾は新しい弟子を作った。


名前は………シズクと言ったか。


彼女も特殊な奴じゃったが今度はそんな無責任な事をしないと心に決めて育てたのじゃ。


ヒシリーとやらと一緒にのう。


それはあやつ、レンを殺そうとした事への一種の償いのつもりだったのかもしれない。


じゃが暫くしたら妾は異界者が生き返る事を知った。


ならば妾はあやつに会ったらしっかりと謝って再び師になって育てようと思ったのじゃ。


殺して無かった…………やり直せる。


そんな風に考える事が出来たのじゃ


じゃが現実は非情じゃった。


あやつは妾を殺しに来た。


始めは誰か分からなかったのじゃがな。


とはいえ妾もあの事を後悔していたのじゃが、そのまま無抵抗で死ぬ気は無かった。


じゃが予想外に強くてな。


妖魔の神眼を使ったのじゃ。


じゃがそれでも負けた。


まさに因果応報。


良く考えれば分かる事じゃったな。


あんな事をした妾を許す者がいる筈が無い。


地獄の門(ヘルゲート)


それを使って逃げる事も出来たのじゃが妾はそんな事をしたくなかった。


じゃから妾は一言。


『ごめんね、最後まで育てられなくて』


と。


しっかりと謝ったのじゃ。


逃げてもレンは殺しに来るじゃろう。


それでも生き続け、後悔し続けるか死ぬかで妾は死を選んだ。


妾は罪を犯した。


弟子を捨てるという重罪を。


そういえば妾が育てた弟子の中に復讐をしようとした者も居たのう。


妾はその時止めようとしたのじゃったか。


まあそんな妾が逆に復讐されるとはとんだ笑い話よな。


ああ、もし来世があるなら、今度は。


今度こそは弟子にした者を育て切ろう。


一人残らず全部じゃ。


そしてシズク。


あやつにも悪い事をしたのう。


妾の自分勝手に巻き込んで…………あやつは優しいからきっと悲しむじゃろう。


あ………もう意識…………が…………

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