国造り
うっくらくらする。
あ、そういえばまだ回復してなかったな。
こんなボロボロの状態でいたらそりゃあ倒れそうになるわ。
さて、それじゃあ回復しますか。
妖術を使った回復は簡単だ。
記録を参照に傷付いた場所や外部に散った血肉を操って直せば良い。
それにしてもこの回復の方法を手に入れるまでめちゃくちゃ大変だったよなぁ。
あの森で初めて次の境界を越えた時に一回まあまあの傷を負った。
回復手段としてあるのは回復魔法とレベルアップによる回復だけだ。
とはいえレベルアップについては絶対に勝てないのに出来る筈が無く実質回復魔法しか無かったんだけどね。
そして俺は回復魔法を使ったんだけど…………うん、まさかあれほどとは思わなかったな。
全部の妖力を使って漸くちょっとした傷を直せるって感じで全然直せなかった。
いやー、あれは普通に絶望したな。
それから数ヶ月頑張って漸く元の身体になった。
マジで大変だったな。
さて、回復し終わったし今度は服だね。
うん、ボロボロだ。
とはいえ服は流石に記録なんて無いから戻せないんだよなぁ。
記憶でする事も出来るっちゃあ出来るんだけど結構時間が経ったから洋服の形は分かるだろうけど流石に構成なんて覚えて無いだろうし。
しょうがない、ゆみに服貰うか。
多分同じような服は何着かあるだろうしな。
さて、うーん……………この後どうしよう!
まずこのえーっと、サキを捕らえないと動け無いしとりあえず縄でも持って来て………いや、何か引き千切られそうだし止めとこう。
うーん、徐々にこいつ回復してきてるから早く拘束する方法を考えないと…………
そう考えていたら一人のボロボロな布を纏った少年がやって来た。
「あの……………お話、良いですか?」
え!?この状況で!?
とりあえず念話で、
『フォス、冥力でサキの回復を邪魔しろ』
『え、あ、はい。分かりました』
よし、これで一先ずサキは大丈夫。
そしてこの子は何を話すんだ?
「ああ、良いぞ」
「僕は…………僕はどうなっても良いので皆を助けて!!」
……………え?
いや、ちょっと待って。
色々突っ込みたいけどその前に君は誰?
「君は誰?」
「僕ですか?僕の名前はストロマ。あなた達異界人とは違うこの世界に元から住んでる原住民です」
原住民?ああ!NPCか!
そういえば俺初めてNPC見たな。
ステータスとか違うのか?
ステータス
名前 ストロマ
性別 男
種族 人間
職業 ビギナージョブLV1
状態 飢餓
生命力 15/15
魔力 8/8
スキル
避けLV4 予測LV3 危機感知LV3 直感LV2
耐性スキル
痛み耐性LV7 気絶耐性LV3 毒耐性LV4
飢え耐性LV4
固有スキル
万象の瞳
称号
突然変異 小さな勇者 ※※※※※※※
うーん、全体的に弱…………ええ!?
え、固有スキルあるじゃん!
突然変異って事は魂に関わって無いからこれは後天的な固有スキルだ。
うん?生まれた時からなのに後天的?
まあこの子が特殊って事か。
それにしても固有スキルかー。
そしてさっきから気になっていた※の文字。
これ何なんだ?
うーん…………このステータス擬装か?
いや、だったら固有スキルを隠すよなぁ。
「あの、僕のステータスがどうかしましたか?」
いやー、固有スキルを………って鑑定したのバレてる!?
え、あれ?鑑定ってされたら気付かれるんだっけ?
もしかしたらそれが固有スキルの内容なのか?
うーん、分からん。
とりあえず、
「君とは後で話す事にするから今は一旦離れてくれ」
先にサキを何とかしないと。
先にサキ…………
いや、わざとじゃないよ!
って誰に言い訳してんだ俺。
はぁ。
とりあえずこの場で話し合うのは諦めて貰おう。
「わ、分かりました」
そう言ってストロマは去って行った。
さて、俺はサキの対処をするか。
「一先ずお前達は一つの場所に固まっててくれ。少ししたら向かう」
「わ、分かりました」「了、了解」……………
そうしてぞろぞろとこの国の国民達は去って行った。
俺はサキを持ってゆみの家へと向かった。
「ねぇ、この子どうするの?」
どうするって聞かれてもとりあえず動け無いようにするだけ何だけど。
まあ、
「後々分かる」
説明する必要無いしこれで良いか。
さて、着いたな。
ギィィィィイバタン
「あ、お帰りなさい」
ん?あ、そういえばムシュが居たか。
まあそれは別に良い。
「拘束する道具とか無いか?」
「え、拘束する道具?あるわよ」
あ、あるんだ。
「もしかしてあなたも拘束して虐待を「いやしないよ」そう………」
ただ拘束するだけなのにどうしてそう考えるんだか。
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
なるほど、鉄の手錠か。
これはならなかなか逃げられはしないだろう。
そして俺は両手両足に手錠を付けた。
「肉ーうー喰うー!?」
うん、これだけだと逃げ出しそう。
「こいつを留めておける道具とかあるのか?」
「そうね、鎖ならあるからどっかにこれで繋げておけば?」
そう言ってゆみは鎖をタンスから出し、俺に渡して来た。
ちょっとタンスの中身が気になったのは置いておこうか。
さて、とりあえずこれで縛ってタンスの足にでも引っ掛けておこうか。
とりあえず色々とやるべき事をやってからこいつの対応をするから今はこれでOK。
多分。
あ、そうだ。
「ムシュはまた居残りで訓練してろ」
「え!?……………わ、分かりました」
ムシュがいれば竜力で鬼術が使えないからね。
うん、念には念をだ。
さて、
「ゆみ、あいつらはどこに集まってるんだ?」
あー、「さっきこの場で待機」って言えば良かったな。
「え?うーん、恐らく広場にいるんじゃないかしら」
「広場?」
「ああ、広場っていうのはシムが皆で楽しめる場所として作ったちょっと広い更地の事よ」
へー、シムそんなもの作ってたんだ。
「まあ今じゃそこで行われるのは喧嘩や恐喝なんだけどね」
あー、何かやること全部裏目に出てるな。
「分かった。とりあえずそこに向かおうか」
そう言って俺達はその場所に向かった。
………………………
……………
……
見渡す限りの人、人、魔物。
魔物!?
あー、そういえば魔物も居たか。
いやー、暫く見てなかったから忘れてたよ。
っていうか人間の国なのに魔物がいるって完全にもう国として破綻してるじゃん。
まあここから整備するから変わらないんだけどさ。
さて、何からやらせるか。
うん、やることが多すぎる。
うーん、どうしよう。
「ねぇ、メニューでも見たら?」
メニュー?そんなの見て…………ってええ!?
何か色々あるな。
そう思った瞬間様々な記憶が入って来た。
ぐっなるほど。
今国造りについての機能の記憶が送られた。
恐らくこれは運営からの補助って所かな。
さて、この記憶から最初にすべき事は決まった。
「今から法律を作る。全員賛成をしろ」
まずは法律の製作からだな。
じゃないとこいつら何をやらかすか分からん。
「この国の住民への暴力を禁じる」
「「「さ、賛成」」」
『過半数以上が賛成した為この法律は実装されました』
「この国の住民への詐欺を禁じる」
「「「さ、賛成」」」
『過半数以上が賛成した為この法律は実装されました』
「この国の住民への窃盗を禁じる」
「「「さ、賛成」」」
『過半数以上が賛成した為この法律は実装されました』
まあ、こんなもんで良いか。
これを破らなくても同じような事はまあ出来るっちゃあ出来るけどこれ以上厳しくすると暴動起きそうだし。
じゃあ最後に、
「この国の住居はプレイヤー名、レンの命令に逆らう事を禁じる」
この事を言った瞬間周りは騒然とした。
さあ、どうするか。
「「「さ、賛成」」」
『過半数以上の賛成者が居なかった為この法律は実装されません』
まあこうなるよな。
絶対王政。
歴史を振り返ってそれで国民が得を出来た事は殆ど無い。
とはいえこれはあれに関係あるから認めて貰わないとだ。
だから脅す。
妖術、チェンジ。
「「「がっ」」」
その瞬間、数人が死んだ。
その事実にここにいる人達は混乱し、慌てた。
だが、決して逃げられない。
あの戦いでの恐怖が、トラウマが刺激されるからだ。
一方レンはこの技の名前を本格的に変えようかと思っていたのだが。
「さて、改めて聞こうか」
「この国の住民はプレイヤー名、レンの命令に逆らう事を禁じる」
「俺は賛成するぞ!」「お、俺も」……………
『過半数以上が賛成した為この法律は実装されました』
よし、これでこの先こいつらを使いやすくなったな。
さて、それじゃあ国造り始めますか。




