イースサイド9
季節は秋から冬に変わった。
寒さは全然熱を生みだせば大丈夫だし、雪も降って来たけどそれはそんなに問題じゃない。
今抱えてる問題は冬眠だ!
うん、皆が続々に眠くなったって言うから何事かと思ったらそのまま冬眠しちゃったよ!
勿論ファンタジーっぽい魔物は冬眠しないから大丈夫だし、普通に冬眠しない動物もいるけど…………。
だからって洞穴とかに隠れずに眠るのはやめて!
君達が寝た後隅に寄せるのにどんだけ苦労したか!
世界樹さんは『もっと老人を労れ』って言って何もしてくれないし。
冬眠する時期はまちまちだから訓練を中断したりって大変だったんだから!
はぁ、本当に大変だった。
因みに食糧は世界樹さんが確保してくれたから大丈夫だった。
雪も雪掻きしなくても熱を生み出して溶かしたり出来るから問題は無い。
一番の敵は味方だったって事だね。
さて、そんな今日はクリスマスイブ!
聖なる夜の前日だね。
明日イベントがあるかと思ってたんだけど今日お知らせで善行を詰めって言われたんだ。
詰んだ善行の数と質で夜貰えるプレゼントの内容が変わるらしい。
逆に悪行を詰むと何かされるらしい。
さて、どうしよう。
毎日してる事って言ったら訓練をして食事をして休憩時間にナイトとミルと話してる。
うん、全然善行を詰んで無いな。
というか全然他の魔物と関わって無い。
だって世界樹さんが基本的に訓練をサボろうとしてないかとか管理してるし。
何か問題があっても世界樹さんが解決するし。
あれ?僕達世界樹さんに頼り過ぎじゃないか?
いや、それは今気にする事じゃない。
とにかくミルとナイトに何か困ってる事が無いか聞こうか。
こういう時は自分の交友関係が狭いのが仇となるよなぁ。
『おーい、ナイト、シズク!』
そうそうそういえば念話を使える用になったんだよね。
というより念話の事をすっかり世界樹さんは忘れていたらしい。
うん、「忘れんな!」って怒鳴りたくなったよ。
だけど念話は魔力かそれに似た力じゃないと使え無いらしい。
だから現在使える人は中々に少ない。
世界樹さんの樹力は魔力に似てるんだって思ってたらそういう訳では無くて魔力から変質させて樹力に変えたから樹力から魔力にも出来るらしい。
だからそれで一時的に変えて念話を使っていたらしい。
それの方法も教えて欲しかったけど人化が出来てからって言われてしまった。
『おう、イースか』
『何か用?』
『うん、何か困ってる事無い?』
『困ってる事か?別に無いが』
『あ、イベントの善行を詰もうとしてるのね』
『イベント?』
どうやらナイトはまだお知らせを見て無かったみたいだ。
『なるほど…………ここで!?』
『そう、ここで、だよ』
『かなり厳しいわよね。私はもう捨てたわ』
『とりあえず僕達でそれぞれ困ってる事話そう?』
『ああ、別に良いぜ』
『ええ、分かったわ』
『じゃあまずはナイトから』
『うーん、そうだな』
『じゃああの実験に付き合って貰おうか』
『あの実験?』
『ああ、あれね』
『俺の呪力は残留思念に反応するのは知ってるよな?』
『あ、大体分かった』
『だろうな、その残留思念を殺し方である程度操れるからそれの実験に付き合ってくれ』
『今からだとそんなに時間が無いけど良い?』
『まあ、遅れたら一緒に謝ってくれよ』
『いやよ、それは』
『まあ、とりあえず行こうぜ』
今は結構朝早い時間帯だ。
というより遅くなると強制的に訓練が始まって自由な時間が無いから以外とこの時間に起きてる人は多い。
後夜もだな。
ただ、訓練に支障が出たらそこも取り締まられるから気を付けないと。
遅れたりしても支障が出たって事になるから以外と厳しいんだよな。
さて、それじゃあ頑張るか。
数十分後………
『ありがとな、中々良い結果だったよ』
『僕はもうやりたくない、あんな生命を冒涜するような実験』
『あれは流石にグロすぎよ』
『まあ、そんな時間掛からなかったんだし気にすんなよ』
『とりあえずあんたは一回死になさい』
『え、やだよ』
『じゃあまた夜に』
『そうだな、じゃ』
『バイバイ』
訓練後…………
『おーい、イース!』
『あ、ナイトとミル』
『どうするの?この後』
『そうだね、ミルは困ってる事無い?』
『特に無いわ。強いて言えば私の力も呪力な事かしら』
そう、ナイトもミルも死んだ魔物だからか共通して呪力だ。
だけど自分からその力を使う為に殺し方を選ぶなんて出来ないらしい。
まあ、ナイトが割り切り過ぎなんだよな。
とはいえ、
『流石に力を変えるのは無理だよ』
『そうよね、じゃあイース、あなたは何かある?』
『え、僕?』
僕は…………えーと…………無いな。
強いて言えばあるんだけど今出来る事は無いな。
『うん、無い』
『それじゃあこれにて解散かしら』
『まだ俺一つも善行を詰んでないがそうなるな』
『ごめんねナイト』
『いや、俺は実験に付き合ってくれただけで十分だ』
『そう?じゃあ解散ね』
その夜それぞれのプレイヤーにプレゼントが配られた。
ナイトは少量のお菓子。
ミルはとある本。
そして僕にも本が渡された。
ミルの本は効率的な呪力の使い方という挿し絵の付いた本。
その内容を読んで絶叫した事は言うまでも無い。
そしてイースに渡された本。
それは、既存する魔法集という図鑑だった。
……………………………
…………………
……
月日は流れ、この世界に来てから大体3年位経った。
そして今、僕は喜びを噛み締めている。
2年前、漸く自分のスライムの身体の構造を理解している事を認識出来た。
うん、人化とは全然関係無い事だけどあの時は漸く一歩進めたってめちゃくちゃ嬉しかったんだよね。
まあ、直ぐに考え直して人化までの道を一歩も進んで無い事に気付いて落ち込んだけど。
そして、現在漸く、漸く人間だった頃の記憶から人体構造を認識している事を理解出来たんだ!
これはしっかりと人化までの道を進めたよね!
本当にめちゃくちゃ嬉しい!
ただ、どうやって人化するかという問題がある。
これは色んな人に立ち塞がっている問題だ。
いや、ナイトは呪術で簡単に出来そうだけど。
ミルは……………頑張って貰うしか無いな。
そういえばミルは最近なんか人化とは別の事をしているみたいだけど何してるのかな。
気になるけど一先ず僕はこの問題を先に解決しなきゃだな。
うーん、ここをこうして………いやだと………………。
よし、これなら行ける!
まず僕は元の人間の構造をした人形を造る。
勿論人形と言っても心臓とかが動けば人間として生まれる事になると思う。
魂とかも一応僕は感知出来るようになったから魂関連の事も生まれるには必要だろうけど今回するのは生命を誕生させる事じゃ無い。
えーっと話を戻すとそこに僕の魂を移してその後は特に無い。
というか魂があれば何とかなるっていう希望的観測をしてるんだけど。
まあ、魂関連の魔法を練習していればいずれ分かるようになるだろう。
さて、そういえば紹介して無かったけどこれが僕の現在のステータス。
ステータス
名前 イース
性別 男
種族 中級賢魔吸粘体(幼体)LV7
状態 普通
生命力 75/75
魔力 2843/2843
スキル
酸生成LV8 触手LV7 魔力感知LV9 集中LV8
魔力操作LV9 予測LV7 避けLV7 創造魔法LV3
危機感知LV3 観察LV7
耐性スキル
疲労耐性LV9 痛み耐性LV7 気絶耐性LV3
種族固有スキル
万能吸収LV4
称号
賢者 魔王
うん、魔力操作と魔力感知は身体の中にある僅かな魔力をずっと弄ってたからだいぶ上がった。
だってずっとジーっとしてるのつまんないし。
え?そのせいで中々ここまで来なかったんじゃないかって?
いやぁ、一応ここまで来るの一番早かったし大丈夫でしょ。
それに過ぎた事を気にしても意味無い意味無い。
後言える事はやっぱり触手スキルかな。
この期間あんまり狩りをしてなかったから触手スキルも上がって無いし進化も一回しか出来なかった。
魔法については夜毎日少し練習したから1上がった位かな。
万能吸収は毎日使ってるから自然と上がるね。
観察は飽きて他の人達を見てたら手に入れた。
ステータスで変わった点はこの位かな。
魔力については触れないでくれ。
うん、こんなに増えるなんて思わなかったんだ。
でも世界樹さんにまだまだって言われた。
どんだけ多いの世界樹さんの樹力量!
はあ、まあ今に始まった事じゃ無いか、世界樹さんの凄さは。
後この世界に大分慣れて来た。
殺す事にも抵抗が……………あれ?元々あったっけ?
精神も魔物寄りに変わってるかもだな。
とはいえ元の世界に帰れるなら帰りたいけど。
まあ、ここ2年の変化はこんな感じかな。
そして現在。
ちょっとアップデートによって問題が発生しているんだ。
発情期。
いや、プレイヤーがじゃ無いよ。
というよりプレイヤー同士でのそういうトラブルは世界樹さんが取り締まってくれているから大きなトラブルは無い。
発情期なのはこの周りの魔物が、だ。
性欲の追加と性器の追加、排泄の追加に伴ってか一気に周りの魔物が発情期になったらしい。
正直このアップデートを聞いてスライムって何を排泄するのかが気になったけどまさかこんな問題が起こるなんて。
因みにこのアップデートは一昨日位でずっと排泄を待ってるけど一向に来ない。
もしかしたら万能吸収でいらないものとなっているものすら吸収してるのかもしれない。
うん、それに性器も追加されたって言われてるけど前との違いが分からいし性欲も特に無い。
このアップデート一切僕に影響無かったな。
発情期の魔物達はプレイヤーである僕達を狙ってるみたいだけど、スライムはどうやら世界樹さんによると新しい種族らしい。
だから同種族が居ないから狙われ無い。
ミルは勿論肉体が無いのに狙われるはずが無く、ナイトも骨だから狙われ無い。
僕の交友関係の中でこのアップデートの影響を受けてるの一人も居ないんだよね。
とはいえリーダーだから皆を襲って来る魔物から守らないといけない。
世界樹さんは面白がって助けてくれないし、このアップデート僕達にとって不利益しかもたらしてないよ。
さて、この魔物のリーダーとしてしっかりと働かないとだ!




