ケイサイド8
夏になった。
うん、だけどこれといった変わりは無い。
暑さは凄いんだけど仙力で体温を変えられるからね。
因みに魔力を仙力に変える方法はカールさんに話した後掲示板でも広がり、今では恐らく全ての人が使えるだろう。
だが、亜人は違う。
亜人は魔物と同じように種族によって力の内容が違うらしく、どうしても涼むのに適してない人がいてそういう人はカールさんが作った薬を飲んでる。
本当に凄いよなあの人。
まあでも体温を調子に乗って低くしすぎてリスポーンした人がいたっていう話を聞いた時は笑ったな。
まあ、夏だからといってこれといった変化はない。
それ以上にレインさん、カールさんの活躍が凄い。
まず、カールさんだが。
近くにある草で簡単に調味料を造り上げ、それだけではなく傷薬や毒薬を手掛けている。
毒薬は危なそうに聞こえるが、何かあった時に使用して逃げ切れたという事例もあるから人気だ。
まあ、毒薬を使うと倒した敵の肉も毒になるからそう簡単には使えないんだけどな。
更に、その活躍によってカールさんに弟子入りする人も現れてかなりの有名人になっている。
最近樹力という力を手に入れたそうで性質の研究をしているらしい。
まあでも毒薬や傷薬を渡す変わりに薬の被験体になれって言うのは止めて欲しい。
因みにカールさんの種族は樹人だって。
確かに若干耳が尖ってるような気がする。
後、運営と会った時に名乗り出なかった理由は別に名乗り出る必要が無かったかららしい。
名乗り出なくても現状の生活で十分だし、掲示板で何かの情報の対価としてこの情報を使おうとしていたらしい。
他の亜人プレイヤーはカールさんに恩があるから勝手に言い出す事が出来なかったみたいだ。
それにしても掲示板の話を聞いた時に久しぶりに掲示板を見たな。
色々追加されたスレがあって驚いたよ。
カールさんについてはこんな感じだ。
続いてレインさん。
この人は凄い。
家事や裁縫、製糸等かなりの知識がある。
この世界に製糸の技術も無くなっていたらしく、現存している服を使い回していたらしい。
その為、俺達は最初に着ていた服を毎日井戸で洗って着続けている。
闘技大会の部屋に洗剤と風呂が付いていて良かったよ。
かなりの時間を掛けて洗いまくった。
それに久しぶりの風呂でかなり長湯したなぁ。
それは良いとして、レインさんが製糸の技術を持っていたから魔物から手に入れた毛皮を糸にし、そこから裁縫をして服を作るという事をしてくれた。
まあ正確にはもっと色んな工程があるんだけど簡単に言うとこうだ。
思い返してみると亜人達は様々な服を着てたな。
こういう事だったのか。
料理の腕はシェフ並、そして様々な知識があるという事からカールさん同様に弟子入りする人が多発しついる。
レインさんの種族は妖精だって。
カールさんは分かるけどレインさんって何者なんだ?
まあ、ひとまずそれは良いか。
カールさんとレインさんの話は以上だ。
さて、今またある問題が発生しているんだ。
鉄の資源の問題。
現在鉄は鍛冶屋の人が管理していて何かを作ったら使い終わってそれを再び溶かして使い直すという手法を取っている。
だが、勿論使い回すとそれだけダメになる鉄も現れて来る。
最近になってそれが大きく影響して来て使える道具が少なくなって来た。
それに対してとれる対策はやはり鉱山を見つける事だろう。
だが、そんな場所知ってる訳無い。
どうしようかと愚痴を溢していたらレインさんとこんな会話をした。
「鉱山なら私達の住んでた所の近くにあるわよ」
「何でそんな事を知ってるんですか?」
「知らなかったら私達が家を建てた時の道具はどう説明出来るの?」
「ふふ、私こう見えても鍛冶の知識もあるのよ?」
「それに恐らくこの鉱山使うだろうなって思ったから私の旦那さんはあの場所を更地にしたのよ?」
っと。
レインさん本当に何者!?
思わず叫びたくなっちゃったよ。
そんな事があったから今その鉱山に向かっている。
因みに同行者は俺とライとシズクとさっき言った鍛冶屋をしているゲンゾウさんとその弟子になっているマインだ。
うん、ゲンゾウさんだけ名前が日本風なのは気にしないでおこう。
因みにマインはあの時に盗賊に襲われてた人だ。
守れなくて…………本当に申し訳ないな。
謝ったんだけど気にしなくて良いって言われたんだよな。
ダメだ、切り替えないと。
さて、更地まで来たけど…………あれか?
近くに小さな山があったからその方向に近づいてみると。
「おお、これだこれ」
タタッ
「待って下さい」
そう言ってゲンゾウさんとマインは走って行った。
「ふむ、この鉱山中々良いぞ。管理もしっかりされておったみたいだしこれは長期間使えそうだ」
「そ、そうなんですか?」
「まあ、何故か爆発された後があるんだがそれに当たっての対処もしっかりしておる」
爆発?ずっとどうやって鉱石を採掘したのか気になってたんだけどもしかして…………。
「爆発?」
「まあ、それは良い。とりあえずお前も鍛冶師の弟子なんだから鉱山について説明するか」
「分かりました」
「うむ、しっかりと聞けよ、ここが……………」
とりあえず俺達はその話が終わるまで待っていた。
「それで、あ!すまない、夢中になっておってお前らの事をすっかり忘れていたわ」
「いえ、大丈夫です」
「とりあえずこの場所は覚えたから鉱夫達を呼ぼうか」
「え、そんな人達居たんですか?」
「おう、もう鉱山が無いからと農夫になった野郎達がいるからな」
「後は俺らに任せて大丈夫だ」
「そうですか」
こうして鉄の資源の問題は解決した。
……………………………
…………………
……
そして季節が移り、秋になった。
とはいえ別に変わった事は無く、いつも通り盗みや暴力を振るうプレイヤーを見つけて注意している。
強いて言うなら今日はケントさんと狩りに行く位だ。
勿論ライとシズクは一緒だ。
今丁度集合場所である村の門の前に向かってるんだが………。
「お、居た」
「おう、来たか」
「よろしくな」
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな」
「さて、それじゃあ今日はあの猪に挑むか」
あの猪とは俺が戦っためちゃくちゃデカイ猪の事だ。
あれから時間も経ちレベルもかなり上がった為、殆どの人がパーティーで勝てる相手になっている。
とはいえ時間が被る恐れがある為予約制で挑めるという形だ。
予約は既にケントさんが済ませており、その上で誘って貰った。
申し訳ないな。
そして暫く歩いて目的地に着いた。
猪は倒されたらすぐに出現する為倒された後との時間が開く程レベルアップをして強くなる。
今回はそれほど時間が開いている訳ではないので大丈夫だろう。
「居た」
「本当か?」
「嘘なんて付かないよ」
仙力感知に反応があった。
因みに仙力感知は生命力を感知する。
闘技大会でライ達が俺を見つけたのもそれを使ったからだ。
生命力も相手によって違いが厳密に言う事は出来ないがある。
あの猪は一度会っているから分かっていた。
「本当だ。あれは………食事をしている?」
「仙力感知って本当に凄いわよね」
「一先ず先制攻撃を仕掛けよう」
「分かったわ」
シズクはいつも半分以上の霊力を使って攻撃をしてくれる。
残りの霊力は保険だ。
「精霊さん、あの猪に一番威力が高い攻撃をお願い!」
ピシャーーン!!
うわっ!電撃だ。
いつもいきなりだから全然慣れないな。
「ブルルルル!?」
よし、気付かれたな。
ここからは持久戦だ。
というか他の方法が無い。
大きな傷を与えられる程の攻撃はまだ使える人がいないからだ。
少しずつ削って倒す。
それがこの猪を倒す攻略法としてあった。
だが、この猪に会う前にケントさんがやってみたい事があると言ってそれをやろうと思う。
奇襲に気付いた猪はこっちに突進して来る。
そして俺達は最高火力で一気に畳み掛けるという作戦?だ。
今までにそういう方法を挑戦した人は居たが、その誰もが火力が足りずそのまま倒された。
その提案をされた時は危険だと止めたんだけどライが面白そうって乗っちゃって止められず。
はぁ、さて、やるしかないな。
身体強化で足と腕を強化。
このレベルの強化はした事が無い。
正真正銘の全力だ。
そして跳んで猪の頭の目の前へ。
「ぐっ」
足がめちゃくちゃ痛い。
因みにこの高さまでケントさんは自力で跳んだ。
身体能力高過ぎだろ!
カールさんから亜人の集落での狩りの担当だったって聞いてたんだけどここまで凄いとは。
そして三人同時に攻撃!
俺は剣をなるべく切れるように整える事を意識しながら。
ライさんは斧による体重等を乗せた威力重視の一撃。
そしてケントさんは亜人であるから仙力でも霊力でもない別の力。
炎力。
この力は火しか生み出せないし、火しか操れない。
だが、火ならば何でも出来るらしい。
そして白く光った炎を拳に纏って殴った。
「ブフォォォォォ!!!」
ドスンッ
「倒し………た?」
「おう、倒せたみたいだぜ」
「そうみたいだな」
「皆大丈夫?」
こうして初のケントさんとの狩りが終わった。
…………………………
……………
……
そして夜。
どうやら今日はハロウィンのイベントがあるらしい。
「今日ハロウィンだったのかー」
「すっかり忘れてたな」
「まあ、この年でハロウィンを意識する事もないよな」
そう呟き、イベントの内容を確認しようとした時。
「ケイ君、一緒に仮装しよう!」
シズクがやって来た。
仮装をしてお化けから逃げるイベントらしい。
もう既にライは呼ばれていた。
「じゃあそれぞれ仮装して見せ合おう!」
流されるまま仮装をする事になった。
20分後………
よし、これで仮装は良いだろう。
俺が仮装したのはゾンビだ。
特殊メイクで血や皮膚を再現して中々良いと思ったんだが、見せた時にシズクに悲鳴をあげられて若干落ち込んだ。
ライは悪魔、シズクは天使の仮装だ。
うん、ライはともかくシズクは似合ってる。
ライは………まあゴツいって事だけ言っておこう。
そろそろ時間だな。
……………危機感知と直感が反応!
この二つはライルさんにあの相談した時にあるなら持っておいた方が良いと言われたスキルだ。
他にもあるが、いずれ使う事になるだろう。
そして俺は身体能力を強化して避けた。
これは泥?
それにしても仙力感知が効かないってヤバくないか?
うわっ今度は水!
再び身体強化をして避ける
筋肉痛が地味に痛い。
因みに痛覚設定は50だ。
ライルさんに少しはあった方が良いと言われたからね。
こうして俺達は地獄の2時間を乗り切った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「これは…………キツイ」
「疲れたぁ」
「これで特に何も無いってひどいだろ」
「あ、説明して無かったけど耐えきったらプレゼントが貰えるよ」
「あ、そうなんだ」
良かった。
流石にこれで何も無しだったら怒ってた。
「ボンッ」
「うわっ」「なんだ?」「え?」
「もしかしてこれがプレゼント?」
そこにあったのはカボチャのランタンとカボチャの容器に入ったお菓子だった。
「これだけやってこのプレゼントは詐欺だろ」
「うん、そうね」
「ああ、それにしてもこれどうしよう」
その後暫く家の前にカボチャのランタンが置かれる家が多発したらしい。
因みにマインが盗賊に襲われてた時にしていたのはプレイヤー達が勝手に捨てた剣等の回収です。




