イースサイド4
『ふむ、とは言ってもやるべき事は変わらんな』
え?
『一応魔力操作スキルを手に入れた者がいるが、たかだかレベル1だし実用するには早いのう』
そうなんだー。
がっかり。
『因みに魔力操作は外部に出さずに身体の中で動かそうとすれば魔力を失わないからぞ』
あ、そうなんだ。
明日の訓練ではそれ意識してやろっと。
『という訳じゃしさっさと訓練始めるぞ』
え?もう夜だよ?寝ないの?
僕はなんか寝なくても良いみたいだけど他の、特に動物っぽい魔物は寝ないとだめじゃん。
まあ、寝るのは好きだから寝たい時は寝るけどさ。
『うぬ?睡眠をしたいじゃと?そうか!睡眠か!すっかり忘れとったぞ!』
睡眠を忘れる?ああ、世界樹さんは木だしね。
『仕方ないのぉ、睡眠を取らないと脳の機能が働きずらくなるからな』
『それではお主らにはわしが起こすまで睡眠して良いぞ!』
うーん、僕は寝なくても大丈夫だし魔力操作スキルのレベル上げを頑張ろうか。
………………………
……………
……
『おーーいお主ら、起きろー!』
は、はは、朝まで持ちこたえたぞ。
因みにこれが今の僕のステータスだ。
ステータス
名前 イース
性別 男
種族 レッサーリトルスライムLV3
状態 普通
生命力 21/21
魔力 21/21
スキル
吸収LV3 酸生成LV2 触手LV2
魔力感知LV5 集中LV5 魔力操作LV4
どうだ!
はぁ、はぁ、めちゃくちゃ疲れたー!
魔力操作に魔力感知を3レベルも上げたしね。
ふふふふふ、もう精神的疲れがヤバいわ。
え?だったら寝たら良かったって?
訓練してるのが世界樹さんにばれてずっと訓練見てもらってたんだよ!
そんな状態で寝ますなんて言えるはずがないじゃん!
うん、今日からはしっかりと寝る事にしよう。
『それじゃあ夜の間に襲って来た魔物達がそこにいるから朝食をとれ』
吸収吸収。
あー、なんかお腹空く感覚ないのに身に染みる感じがするなー。
『それじゃあ今日も魔力操作、魔力感知の訓練を開始する』
よし、頑張るぞー!
…………………………
………………
……
『ぶむ、今日はここまでじゃの』
1レベルも…………1レベルも上がらなかった。
えー、どうしよう。
マジでどうしよう。
『イースよ、魔力感知と魔力操作のレベルが上がらなかった事を気にするでない』
うわ、心読まれてた!
『魔力操作も魔力感知も殆どのスキルはレベル5辺りで急にレベルが上がらなくなるのじゃ』
え!?じゃあ躓くのは当たり前って事?
『そうじゃの、大体魔力感知や魔力操作等の一次スキルと呼ばれるものは才能があっても5年程使い続けないとレベルが10までいかないのじゃ』
えぇ、それってかなり時間がかかるな。
『更にその程度なら出来て普通、更に2次スキルを極めてこそ英雄等と呼ばれるようになるのじゃ』
うわー、まあ、才能があって5年頑張れば普通なら結構現実っぽいな。
だって現実でも武術習っている人ってそれくらいしてるんじゃないかなぁ。
しかも才能があって5年なら才能がなくても10年位で出来そうだしね。
『そういう訳じゃしそんなに焦る必要はないと思うぞ』
『というよりもうレベル5になったのじゃから才能があると思うぞ』
そうだね、こういう事は焦っちゃダメだ。
『さで今晩も訓練をするのかい?』
あ、いや、今日はちょっと遠慮します。
『そうかい』
おやすみなさい。
……………………………
…………………
……
『おーい、起きろー!』
ふぁぁ、おはよう。
あー、昨日の疲れが嘘みたいに吹っ飛んだなぁ。
『今日もそこに食料があるからどうぞ』
うーんそういえば殆どの人が魔物食べるのに抵抗がなくなってるね。
慣れたのかなぁ。
吸収吸収。
『それじゃあ今日はお主達の魔力を自分にあった状態に変える事について話そうと思う』
ん?何それ?どういう事だ?
『そうだな、例えばわしは魔力を持っていない』
え!?
『その代わりにに樹力というものを持っている』
樹力?何それ?
『これはのぉ、自分の外部、正確に言うと身体の外に出すと崩れてしまう性質がある』
ん?それだと何かを出したりする事が出来ないって事でしょ?凄いデメリットじゃん。
『その代わり身体の中ならなんでも出来ると言っても過言ではないのじゃ』
うわ、それってかなり強くないか?
『これはわしの身体が樹であるからこの力が適しており、その分この力が使いやすくなっておるのじゃ』
『もし違う種族でこの力を使おうとしたらコストがかかり過ぎるから非効率なのじゃがな』
へー、ん?だとすると魔力はなんだ?
『おお、良い質問が来たから答えるぞ』
『魔力は全ての種族に少しは適している力なのじゃ、分かりやすく言えば全ての力の元となっているのが魔力なのじゃ』
『だからといって全ての方面に通じている訳ではなく、魔力にも性質があるのじゃがそれは追々話すとしよう』
そう言って話は閉じた。
『さて、この話をしたという事はすなわち今日の訓練は自分の適している力を身に付ける事だ』
うーんそんなに簡単に出来るのか?
『ああ、言い忘れとったが変質させるスキルがないと出来ないから頑張って身に付けるのじゃぞ』
うえ、いきなり言われても無理だろ。
『そしてお主』
え?何?
『お主は魔力が適しているからする必要がないぞ』
えーー!!する気満々だったのに
『じゃからお主は普段通り魔力操作と魔力感知の訓練をするのじゃ』
がっかり。
………………………
……………
……
あれから一ヶ月程経った。
相も変わらずずっと同じ魔力感知と魔力操作の訓練をしていたんだが、今日は少し違った。
なんとメニューにお知らせが追加され、一週間後に闘技大会が開催されるというではないか。
その事を誰かが言ったのか、はたまた心を読まれたのか、特殊訓練が始まった。
……………………………
…………………
……
今僕達はそれぞれ交代制で闘技大会までの一週間ですべき事を世界樹さんに話して貰っている。
それまでの間は魔力操作、魔力感知の訓練だ。
『次はお前さんじゃな』
お、漸く僕の番になったようだ。
『お前さん、名前は何だったかのぉ』
イースです。
『それではイース、お前さんにはまだ話していなかった魔力の性質について話そうか』
魔力の性質か、確かに僕に一番合っている力の性質は知っていた方が良いしね。
『魔力の性質、それは創造にある』
創造?何か大それた事みたいだけど。
『そんなに大それた事ではない』
『魔力というのは数ある力の中でもかなり操り易い力じゃ』
そうなんだ。
『そしてその魔力は何にでも変える事が出来る』
何にでも?もしかして樹力とかも使えるの?
『いや、変えるだけで使う事は出来ない』
なーんだ、使えたら最強なのに…………。
『話を戻すぞ、魔力は何にでも、それこそ魔力に適性を持つ者なら何にでも容易く変える事が出来る』
それってやばくないか?
『ああ、かなり強力じゃな』
『だが、生み出すものが複雑である程魔力を消費するのじゃ』
『まあ、理論上何にでも魔力があれば生み出せるのじゃから十分凄いのじゃがな』
へー、何かよく分からないけど凄そう。
『だからこそお前さんは魔力を増やして欲しい』
え?どうやって?
『魔力だけでなくこの力は使い切る事を繰り返す事により増えるのじゃ』
うーん、でも魔力の回復スピードが遅いと非効率だよ。
『ふむ、魔力の回復スピードは遅いな』
ダメじゃん。
『だからわしがお主に魔力が無くなる度に魔力を渡してやろう』
おお、それなら上手くいきそうだ。
『それと魔力は集める程物質になっていく』
?それがどうしたの?
『完全に魔力が物質になると戻そうとしないと戻らないんだ』
そうなんだ、それが難しいとか?
『いや、前にわしの森であの猪と戦った奴がそれをばらまいていっての、また荒らされたらたまったもんじゃない』
へー、森を荒らすなんて酷いな。
『これで話は終わりだが、質問あるか?』
え!!
あの、肉体で戦う技術、武術の指導とかないんですか?
『おお、忘れておったわ』
お、これで教えて貰え………。
『じゃが、わしは動けないからな、仲間と組み手でもしておれ』
ああ、そういえば世界樹さん木だった。
うーん、仲間ね、親しい人が一人しかいないとは悲しいな。
チャットで、
チャット
「ナイト、一緒に戦おう!」
「良いぜ」
「じゃあ世界樹さんの前で集合ね」
「分かった」
よし、誘えた。
現実生活でも友達あんまりいなかったからなぁ。
こういう感じで友達を誘うのなんて久しぶりだなぁ。
さて、ナイトが来るまでちょっと魔法試してみようか。
えっと水出ろ!
バシャー
うわ、出た!
テッテレ~
『イースは水魔法スキルを手にいれた!』
ぐっ気持ち悪い。
これが倦怠感か。
『イースは疲労耐性を手に入れた!』
って倦怠感じゃなくて疲労?
どういう事かよく分からないけどまあ良いか。
うーん、魔力が徐々に回復していくのは分かるけど倦怠感は治らない。
これを四六時中しているのか。
キツイな。
よし、回復したし今度は火を出すか。
火、出ろ!
出ない!?
何でだ?
うーん、理由としては複雑だったから?かな。
どっかで火は現象で、プラズマがどうたら、熱がこうたらって聞いた事がある。
なら、火が出来る条件を出せば良いんだ!
まずは燃える物質……………火薬を出すか。
火薬出ろ!
出た!!
『イースは物質創造魔法スキルを手に入れた!』
それにしてももうちょっとエフェクト欲しかったな。
次に熱を出せば………。
ドカンッ
うわ、爆発した!
テッテレ~
『イースは熱魔法スキルを手に入れた!』
そりゃそうか、火薬だしね。
じゃあ次は木に………。
するといきなり目の前に下級骸骨兵士が現れた。
ナイトだ。
チャット
「驚かすなよ、お前の顔怖いんだから」
「へへ、何か面白そうな事に集中して約束忘れるからだ」
「忘れてないよ!」
「それじゃあ戦うか?」
「そうだね、早速初めようか」
「ルールは?」
「そうだね、魔法とかは無しで、純粋な肉体戦、生命力が10を切ったら試合終了にしよう」
「分かった!」
「それじゃあ試合開始ってチャットに書いたら開始ね」
チャット
「試合開始!」
両者一斉に飛び出した。
下級骸骨兵士は剣で、スライムはその自らの肉体を触手と変えて戦う。
まずは下級骸骨兵士が剣を振るった。
スライムはそれを受け止めようとしたが、彼の剣は関係ないとばかりに触手ごと切り裂いた。
それに対して今度はスライムは避ける方向にシフトしたようだ。
うーん、やっぱり強いね。
僕は数回だけ魔物を倒す為に使った程度だが、向こうは剣主体だ。
殆ど使ってない技術で勝てるはずがない。
因みに下級骸骨兵士は持久力というか体力がなく、食事も必要ない。
ただ、睡眠は必要だけどね。
弱点としては物語であるように、打撃、日光に弱いんだ。
だから勝つためにはそこを突く!
日光は魔法が使えないから却下。
となると打撃だな。
隙を見て突進するか。
触手を二本出す。
何で今まで出さなかったって?
重いから操り難いんだよ。
一本ならいけるんだけどね。
これで、触手が切られた後身体切られた瞬間アウトだ!
まずは触手で攻め込む。
するとそっちに対処しようとするだろうから反対からも攻める!
テッテレ~
『イースは予測スキルを手に入れた!』
そして残った身体で突進だ!
ナイトは一本目を対処した後二本目を流れるように対処をする。
そして僕がナイトに当たった瞬間、僕を切り付けた。
チャット
「降参!」
あーあ、負けちゃった。
まあ、思ったより二本の触手の対処が早かったからな。
チャット
「ふ、ふ、ふ、俺の実力を思い知ったか!」
「ははー、参りました」
「いやー、本音を言うとかなり焦ったんだよね」
「肉体を武器にしているから勝てると思っていたんだけどまさかあんな賭けに出るとは思わなかったよ」
「まあ、それでも勝ったけどな」
この後、再び何戦かして、全負けで終わった。




