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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
終章 サービス終了
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運営との対話

「どう?結構良い感じのシナリオじゃない?」


目が覚めると、突然そう目の前に居るそいつに話しかけられた。


「どうだろうな、悪趣味であるとは思うけど」


「……はぁ、この世界を作るのにめちゃくちゃ時間がかかったんだから少し位褒めてくれても良いんじゃない?」


そう残念がるそいつに、仕方なく褒めてあげる。


「わー、素晴らしいシナリオだーとても感動したー」


「うーん、褒められてるのにバカにされてるようにしか感じられないはどうしてだろう」


「共感能力がないんじゃない?」


「突然の悪口!」


おどけて言うそいつに、俺は一言こう言った。


「…はじめまして運営さん」


「いや、こう言った方が良いかな?」


「宇宙人さんってね」


そう言われると、そいつの口元が少し上がる。


このゲームを開発した会社名、ネリア。


それをローマ字に直し、並び替えてみる。


ネリア……NELIA………ALIEN。


これに気付いたプレイヤーは多かったんじゃないかな?


まあ、大抵の人は信じないだろうけど。


「ふふ……まあそれは私達の悪戯みたいなものだよ」


「本当に宇宙人って訳ではないからね」


「ああ、違うんだ」


そう言いつつも、同時に納得する。


だってネリアってローマ字で書いたら普通LじゃなくてRだし。


「それに、君の方がとんでもないと思うけど?」


「ねぇ、このゲームの開発者さん」


そう言われて、俺は少し笑った。


「別に俺は開発はしてない。設計図を書いただけだ」


全ては今から起こる、その時の為にね。




俺は生まれてから暫くして、自分への違和感に気付いた。


何をしても喜怒哀楽が感じられない。


正確には感じるものが非常に希薄だったのだ。


だからこそ物事をより冷静に捉える事が出来た。


焦らずに……一つ一つの事を的確に…ね。


でも途中で思った。


そんな人生に何の意味があるのか。


人は理性、本能、そして感情によって欲が現れる。


しかし感情が希薄な俺は、本能が表す欲求に対する感情がなく、ただ生きる為だけにしか動けなかった。


それを更に理性によって押し止められ、さらに喜怒哀楽の感情が薄いからこそ、行動を起こす気にもならなかった。


人は、それらの欲を満たす事で満足して生きる事が…楽しむ事が出来る。


だが、俺はただ生きるだけの木偶の坊でしかなかった。


だから俺は…自分を誤魔化す事にした。


それが今の俺。


甘い物が好き。バトルが好き。ゲームが好き……


そんな自身を演じて来た。


しかし過去、一度だけ何か大きな悦楽を感じた思い出があった。


酷く昔の事で記憶が定かではない為、何があったかは覚えてない。


その感傷を思い出し、現状に不満が現れる。


そして思いつく。


仮想現実を作ろうと。


ARと呼ばれるものではなく、完全に現実と乖離したVRを。


自分自身が心から楽しむ為に。


そう考えて数年が経ち、俺はそれを完成させた。


しかし、荒削りな知識によって無理矢理設計したそれは莫大な電力を消費し、またその装置自体が酷く高額な材料を必要とした。


そんな時、両親が他界した。


なかったのは事故を起こした男からの多額の賠償金と、両親が残した資産。


とはいえ学費や食費、光熱費、塾代なんかを考えると数年消える金額だ。


バイトをするにしてもそれだけで大学に行くまで賄える金額ではなかった。


親戚もいない妹と俺の二人でこれからを過ごすにはどうすれば良いかと考えた。


そこで、俺はその設計図を売ったのだ。


ただまあ実際に動くか分からないような設計図なんて数千円程度で売れれば良い方、これからを打開する金額には到底なる筈が無かったのだが。


しかし、ネットオークションで販売すると、数千万という金額でとある企業が買い取ったのだ。


今でも覚えている。


ネリアという名前の会社が買い取った事を。


そしてそのお金である程度の学力の高校に受けたりする事が出来るようになった。


その後、郵便物として配達されて来た。


注文した覚えのないVRMMOの機材が。


そして装着すると、その世界から出られなくなるという問題が発生してしまう。


俺は内心喜んだ。


だって、楽しめるチャンスが増えたのだから。




「全く、ログアウト不可の方法までご丁寧に書かれてて本当に面白い設計図だったよ」


「私達の目的、()()()()()()()()()にはぴったりだったからね」


「へー、そんな計画だったんだ」


道理で癖の強い人間が多い訳か。


イースやシズク、ライやカールさん。


後はサキとゆみ、か。


彼らが居た理由もなんとなく察する事が出来る。


「……あれ?ケイは?」


ケイはまさに平々凡々な感じでここに来るような人とは思えないんだけど。


「ああ、彼か。まあ彼はとある実験に巻き込まれたって形だからね」


「私達としても彼を送り込むのは非常に心苦しいよ」


なるほど……ドンマイ、ケイ。


「さて、さっきのでこの世界の過去は知れた」


「じゃあ後は、その罪を背負う者がラスボスとして登場するだけだよね?」


「はいはい、分かりましたよ」


俺とあの人達には似た部分が多い。


ただ違うのは、彼らはその現状を受け入れ、俺はその現状を打開しようとした。


八つ目の大罪は、この世界の罪。


だからこそ、その罪の権化の俺がラスボス…か。


中々に洒落てるんじゃないか?


「それじゃあ、後は頼んだ」


「了解」


そう返事すると、段々と記憶が朧気になってくる。


さて……念願のお楽しみタイムだ。

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