過去編
英雄譚
その村にはある少年が住んで居た。
その村は自給自足で成り立っており、その少年は外の世界に憧れる一人だった。
しかし、そんな少年に悲劇が起こった。
大量の魔物達が攻め込んで来たのだ。
それに逃げ惑う村人達。
そしてそれによって彼は両親を無くした。
それがトリガーとなり、彼は力に覚醒した。
その力の名は……聖魂力。
自分自身の意思の強さで、万象に影響を及ぼすその力は、彼の魔物を殺したいという怨みの気持ちに対応し、魔物は一瞬にして消し去られた。
しかし、それと同時に彼は手に入れてしまったのだ。
大罪スキル、憤怒を。
その後彼はその魔物達をけしかけて両親を殺した黒幕を暴く為に旅に出る。
まずは世界樹と呼ばれる樹の元へと。
彼はその樹に暫くの間育てられ、その後様々な人が横行する王国へと行った。
そこで彼は数多の人と出会い、それと同時に別れを経験した。
ある時は巨大な狼を師として教えを乞うたり。
ある時は巨大な力を持つとされる獣に会いに行ったり。
その巨大な力を持つとされる獣に娘を見つけてくれと頼まれ、彼は対価として修練と称して凶悪な者が飛ばされる森へと飛ばして貰ったらしい。
有名な逸話として彼はそこで巨大な竜と出会い、そしてその地に留まらなければいけないという楔を取り払った事だろう。
そして彼は手に入れた。
七大罪スキルと対になるスキル。
七元徳と呼ばれるスキルを。
それと同時に彼は憤怒というスキルを失った。
その後の事は英雄章には記されてはいない。
………………
………
…
だが、話はここで終わってはいない。
彼はそこで見たのだ。
幾何学的な建造物の数々を。
そして彼はその建造物を手がかりとして考え、その先へと進む事となった。
そこで彼はすぐに確保され、そして捕まった。
彼は真実を知る。
今まで生きてきたその世界は虚像に過ぎなかった事を。
彼を捕まえた人々は彼に真実を話した。
大昔に魔術による衣食住の自動化によって行動しなくても生きれる世界になった事。
しかし数百年という時が経ち、その魔回路は機能しなくなってしまった。
だが、その月日で彼らは自身で動くという事を放棄し、心の中は虚となってしまった。
怠惰ではない。
何もしたいのではない。
そう動く事自体が彼らにとっておかしいのだ。
そこで彼らは初めて考えた。
何をすれば何もしなずに生きれるかを。
そして思いついた。
同じ世界を作ってその世界の技術を使えば良いのだと。
発展する為に魔物という明確な危険を作り出し、そうして彼の世界になった…と。
彼は絶望し、それと同時に聖魂力の使用が出来なくなった。
心が折れたのだ。
そして彼らに長年培ってきた技、肉体への制限をかけられ、更にはそのステータスを閲覧を殺さなければいけないという制約まで課せられ、監禁された。
彼にはもう何もする気力が湧かなかったという。
その頃、同時にその世界では反乱が起きていた。
ストロマを筆頭に彼らはこの世界を救おうと動いていた。
魔術が発展したその世界で何もしない人間が殆どだったのだが、そんな世界にも極小数動こうとする人間が居た。
その人達は大昔に禁止された何でも手に入れられるという巨大な魔回路の危険性について調べ、その危険性について訴えていた。
しかし、そんな事も虚しく一切の対策を行われられなかった。
そこで彼が考えたのはこの先に世界の行く末を任せるという事だ。
虚な人々は彼の七元徳スキルを封じたが、大罪スキルになんの対策もしていなかった為、そこに細工を施し、そしてその後の人達がその施設へと入れるように鍵を各地にばら撒いた。
そしてその行動を補助する為にダンジョンに自身のコピーを作ったりとした。
流石に世界樹というイレギュラーを殺す為の魔術やこの先起こる事への対策は出来なかったが、彼はその類稀なる知識で様々な準備を施した。
そして…後に天変地異と呼ばれる、決して後戻りの出来ない自体が起こってしまった。
彼らはその装置を使い過ぎたのだ。
封じられたのには当然理由があった。
それは何かを生み出す代わりにとある特殊な物質を発するという特性がそれにはあったのだ。
魔回路というものは理解する事が難しい。
実際、完璧に理解する為にはストロマのような特殊能力を持っていなければ不可能だろう。
その日、数多の闇がその世界を覆った。
研究所なんかを含め、王都なんかの大規模施設も襲われた。
その最中に英雄である彼はストロマの力を借りて逃げ出した。
そして逃げ遅れたストロマは自決し、自身で開発した魔術で転生したのだ。
逃げ出した彼は暫くの間呆然としていたが、このままでは埒があかないと思い、元の集落へと戻った。
そうして彼は数十年ぶりに幼馴染に出会い、そこで慎ましく暮らす事にしたのだ。




