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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
13章 地底の陰謀
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ケイサイド33

ここに来てから約半年。


まあ、実際には地上と時間の流れは違うから正確な事は言えないんだけど。


その間、俺達はひたすらに倒し続けた。


闇人…いや、元プレイヤー達を、か。


この半年間、様々な違和感を感じ続けた。


何故、こんな事をしているのか。


何故、あの女の子に権力が集中しているのか。


どこから、食料を調達しているのか。


そして、何故、メニューにあのポイントが追加されているのか。


そんな疑問点が多く存在する中、俺達はその義務を果たし続けた。


レイヤが心配で探したかったという事もあるが。


まあ、この場所で生きるにはそうしなければいけないからな。


そうしていく内に、自然と他のプレイヤーとも関わるようになる。


そして……そこで俺は真実を知らされた。


俺は今すぐにでも止めたかったが、何が目的かも分からないのにそんな事はしようが無かった。


だから俺はせめてリスクだけは減らそうと思い、その義務を肩代わりして行ったりとかなり忙しく動いていた。


恐らくライ達も同じ現状にある。


この半年間で一切その事実を知らされていないなんて事はほぼほぼあり得ないからな。


そして同時に、俺は行動を起こす時まで情報をひたすらに集めた。


とはいえ、集まった情報は非常に乏しい。


昔、あの女の子に家族が居た。


この闇人の一部は過去の人間。


他にもいくつかあるが、殆どは真実か眉唾かすら分からないものばかりだ。


それに結局レイヤの居場所は今になっても分かっていない。


まあ、メッセージが来たという事は無事なんだろうが。


そんな状態のまま、現在へと至る。

………………

…………


「プレイヤーの皆、広場さ集まってぐれ!」


朝早くにそんな知らせを受けて、俺は起きた。


広場へと集まる事となり、そこから俺達は数ヶ月ぶりに合流した。


「久しぶり!」


「数ヶ月ぶりじゃないか?」


そこにはライとその執事がおり、元気そうに話しかけて来た。


部屋が隣とはいえ自由時間の殆ど無い状況で互いに時間が合わないと会えない今、こうしてしっかりと会うのは久しぶりなのだ。


「久しぶり!」


そう返事を返すと同時に、この場に居ない一人が気にかかる。


「シズクは?」


そうライに聞くが、


「見てないな」


そう言うだけだった。


正直この場所と海のあの場所は雰囲気が似ており、シズクが無事かどうかが非常に気になっていたのだ。


俺達が見ていない間に気を失っていたりしても気付けない。


それを危惧していたのだが、ここで姿が見えないという事もあり、とても心配に思っていた。


しかし、すぐに俺は気持ちを切り替え、ライに聞く。


「どこまで情報を掴んだ?」


すると、ライの執事さんが資料を取り出して、それをライへと渡した。


「……ケイ、心して聞け」


そう言うライさんの姿はいつになく真剣だった。


しかし、その言葉が綴られるよりも先に、彼女の言葉が早かった。


「こぃより、計画は新だな方向へど進める!」


そう宣言すると、演説は彼へと変わった。


「詳しい内容は私から説明させていきます」


「我々はここで沢山の闇人を葬り、奴らの力を削いで来ました」


「だからこそ今、闇人の本拠地へと赴き、そこを侵略するのです」


「今、相手の力は著しく衰えております」


「我々がこの地底にとどまらなければいけないのは、奴らによる呪いのが原因」


「今こそ、我々はその呪縛から逃げるのです!」


そう大声で話す言葉には、謎の重みがあり、その言葉に一瞬にして心を持っていかれようとした。


他の人々は心を持っていかれたのか、彼が演説を終えて進む。


それにつられて他のプレイヤーも一斉に動き出す。


俺も着いていこうとライさんに視線を向ける。


「……上手いな、必要な情報だけを話している」


そう分析する彼を引っ張り、俺は彼らに着いて行った。

……………………

……………


「それで、結局奴らの目的って?」


彼らに着いて行きながら俺はライに尋ねる。


「ああ、まず奴らが俺達を通じてポイントを稼いでるのは知ってるよな」


そうライは当たり前のように言う。


だが、


「いや、ポイントシステムが復活したのは知ってたけどそれは知らなかった」


俺はそれを否定した。


っていうかそんな事してたんだ。


ライは執事さんに目を向ける。


「すいません、彼は殆ど自宅に居なかったため連絡をする機会がありませんでした」


確かに、俺ずっとあの場所で戦い続けてたり情報を少しでも集めようと動き回っていたからな。


そう納得しつつ、心の中で執事さんに謝る。


しかし、そう考えると、一つ疑問が浮かぶ。


「あれ?っていうかそれ普通にチャットで教えてくれれば良かったんじゃないの?」


そう言うと、ライは少し驚いた様子で言葉を返す。


「普通ならな、だが今そんな事をする訳にはいかなかった」


……普通じゃない状況?


一体何があったんだ?


胸がざわつく。


得体の知れない恐怖が俺を襲う。


何にしてもまずは状況を知らないとか。


そう冷静になるように心を落ち着け、ライの説明に耳を傾ける。


「説明を続けるぞ」


「奴らはこのポイント収集によって彼女は数多のポイントを手に入れ、それを一部の彼女の傘下へと渡して来た」


「それによって支持を仰ぎ、そしてその傘下を使って更なるポイントを貯める続けた」


「そうしてポイントを貯める事によって彼は、とある目的を達成するつもりだ」


とある…目的?


そこまで話すと、ライは俺の視線を誘導させる。


前にあるのは見慣れない巨大な扉。


こんな所があったのか。


「これより、闇人の本拠地へと赴きます」


そう大声で彼は高々に宣言し、扉を開けてプレイヤー達を誘導する。


歩いてどんどん中へと俺達は入って行く。


「この扉の先へは、初めてこの場所へと来た人達だけが入った事があり、そして彼らは戻って来ると同時にこの扉の先への侵入を禁止した」


「そしてその場所に行ったプレイヤーの中からは多数の死者が現れた。戻って来れたのはほんの一部だけだ」


「その時はまだ、彼女は生まれておらず、そこに行ったのは彼女の父親と母親だった」


彼女は生まれていなかった?


彼女っていうのはこの場所のリーダーのヒョウカだよな?


始めにこの場所に来た人達の子孫って事か?


……そういえば、さっき()が目的を達成って……


「もう、言わなくても分かるだろ?」


ライが真剣な顔でこちらを向く。


俺は今までの情報を整理し、考える。


「……その彼が、恋人を失い、そしてその夫婦の子供のヒョウカがリーダーを勤めている」


そしてその彼が…ある目的を果たそうとしている。


まさか…


「その彼は…恋人を生き返らせようとしている…とでも言うのか?」


「ああ、その通りだ」


「そしてその彼、とはヒョウカの後ろにいる通訳をしている彼だ」


そう言われ、俺は一つの疑問を持つ。


「……なんでヒョウカをリーダーに?」


自分がリーダーになる方が都合が良い筈だ。


なんでヒョウカを…


「それについても調べがついている」


「大量の死者を出したその時、同時に彼らの今まで持っていたリーダーも失った」


「その時すでに彼は恐らくその目的の達成をする為の順序立ても済んでいたのだろう」


「彼と彼女の子供は、プレイヤーとN()P()C()の間の子供という事で、とある特殊な能力があった」


「自分自身の目的を隠す為、そして彼の思い通りに組織を動かす為に特殊な能力を口実にリーダーに仕立て上げたのだ」


「NPCとの子供という事もあり、ヒョウカは一回殺せば死ぬ人間だ」


「彼にとっても都合が良かったのだろう」


NPCとの子供…話には聞いたが、それを利用するなんて……。


いや、何も知らない俺が口出しして良い事じゃないか。


俺がもし彼の立場なら…そうするかも知れないからな。


「でも、許して良い事ではないよね」


数多の人間を犠牲にして、更には今から更なる犠牲を生み出そうとしている。


「ああ、それにその願いが叶うというシステムだって不完全らしい」


…不完全?


「恐らく願い事が叶う変わりに、何らかの大きな影響が及ぼされる」


「だからこそ、この時を運営を待っていたんだろうがな」


運営が待っていた……まさか!!


「これを最終イベントとして、このゲームを終わらせようって事?」


「恐らくな。ここに来て約7、80年。寿命を考えればそろそろだ」


「……確かに」


俺達の身体は未だに昏睡状態だろうが、年月の進みは同じ筈。


そう考えると、時期とイベントが合致している。


「だからチャットを使いたく無かったのか」


「運営がどこから見ているか分からないからな」


そこまで話し終えると、ちょうど俺達が扉に入る番になる。


扉の先は白光りしており、何も見えない。


恐らく転移するのだろう。


……シズクは大丈夫かな。


そう心配しながら、俺とライは中へ進んだ。

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