交渉
数多の闇人がひしめく中、俺はそれらを殺し、進んで行った。
あれ以降、他の人間と会う事も無く、ただただ進むだけだった。
途中から闇人の強さが一変した事から、やはり俺が殺していた奴らはプレイヤーだったのだろう。
あの津軽弁のプレイヤー達は、俺達を手駒としてここに送り込んでいるのは間違いない。
この先に彼らは何を求めているのか。
……分からない。
憶測に憶測を重ねようが、それはただの空想だ。
何の情報も無い今の状況で、推測をする事は出来ない。
だから俺は、ただ奴らを殺して、前に進む事しか出来ない。
…………………
…………
…
数日が経過した。
空腹や脱水は、いくら我慢出来ても、身体が追いつかなければ意味が無い。
闇人の強さも、どんどんと強くなり、次第に身体に残る傷の数や、度合いが大きくなってくる。
勿論、進まなければ生き長らえる事も可能かもしれないが、それでは意味が無い。
ただ、ひたすらに進むのみ。
…………………
…………
…
虚無の理解者を使い、思考を最適化させた。
しかし、それと同時に自我が薄れる感覚がある。
無駄な事を考えたりが、出来ないからかもしれない。
前よりも圧倒的に進むスピードは早くなり、虚無によって敵を倒す事により、苦戦もしなくなった。
……それにしても、これだけの量を殺して、レベルが少しも上がらないのは何故だろうか。
…………………
…………
…
身体が朽ちた。
骨が崩れた。
脳が…溶けた。
絶食を続け、動けなくなった俺は、最終手段として……奴を食べた。
闇人と呼ばれるそれを。
その時、俺の中の何かが壊れ、それと同時に身体がどんどん壊れていった。
今思うと、それは魔回路…魔術が壊れたのではないかと思う。
魔回路は生命を保つ為にもあり、それがなくなったから、俺の身体は……
そして気が付くと、俺はあの場所へと戻った。
俺達の作ったあの居住地へ。
……やっぱりリス地は固定されていたのか。
そう思うと同時に、ゆったりと動いていた思考が、活性化する。
!!……ケイ達は?
そう思い、周りを見渡す。
ドアがあった場所には、鉄格子が嵌め込まれている。
………やっぱりそういう事かよ。
俺達を、逃さないつもりなのか。
一応この鉄格子を壊す事は可能だが、そうする前に考えないと。
ここから出て、どうするか。
まずここからは出られない。
そう実際に試してはいないが、そんな不確定要素に身を委ねるのは危険過ぎる。
今一番必要な物、それは情報だ。
………ケイ達に聞くか。
そう考え、俺はチャット機能を開いた。
「無事?」
そう送ると、数分後…
「無事だよ!」
「連絡を取れなくて心配してたんだ」
ケイは勢いよく返信して来た。
そして少しの沈黙の後、こう聞かれた。
「………知ってる?闇人の正体」
……知ってたんだ、ケイ。
そう少しの心配を抱え、俺は返答した。
「知ってるよ」
と。
すると、ケイは「やっぱりか」と言い、俺に忘れていた事実を突きつける。
「半年も失踪してたもんな」
……半年?
そう混乱しながら、思い出す。
外界は、時の流れが違う事を。
すなわち、半年もケイはあの場所に行き続けたって事だ。
どの位入ったのかは分からないが、確実に複数回は入り込んでいる。
闇人の正体を知ってるのに……?
知ってたらそんな事にはならないよな?
ケイは疎い奴だが、こんな事に気付かない阿保では無い。
「一応聞いておくが、闇人の正体は何だと思ってるんだ?」
「え?死んだ人の魂でしょ?」
そう何とも無い様子で答える。
………あー、そうだよなぁ。
本当の事言う筈が無いか。
……まあ、あの人が嘘を吐いた可能性もあるけど。
いや、でもあれが嘘である必要性無いしなぁ。
「今どこに居る?」
「ん?広場かな」
その答えに、俺は一つの確信を得た。
あの真実を得た事を、奴らは監視していた。
ケイが広場に居るって事は、要は監禁状態じゃないって事だ。
すなわち真実を知った俺だけに向けられたもの。
長期間の失踪中にで家の中を弄る事なんて簡単だっただろうしな。
そう考えていると、鉄格子の向こう側から、誰かの顔を覗かせる。
……あの男性だ。
「……取り引きをしない?」
そう言う彼は、松明を持っている。
この家の材質は一応木だ。
すなわち……選択肢は一つって訳ね。
とはいえ、
「話を聞いてから決める」
何も知らずに首を縦に振る事は出来ない。
「……分かった、内容を話そう」
……………
………
…
彼の言う内容は単純明快。
苦しみたくなければ、死にたくなければ協力をしろ。
内容は、反乱分子になり得る人材の、殺害だそうだ。
………俺のあの男性の殺しを見て、殺しへの罪悪感が無いとでも思ったのか?
取り引き内容から、俺はそう受け取った。
とはいえ、これは一方的な取り引きだ。
スポーン位置を特定されている以上、断ったら殺され続けるのは目に見えてる。
ここの情報が少ない今、抵抗した所でどう転ぶか分からない。
「……どうする?」
そう聞く彼に、俺は質問する。
「もう少し、情報をくれないか?」
「君達の最終目的とか…ね?」
そう聞くと、彼は心拍数は…少しだけ、早まった。
まあここのプレイヤーの目的がただの闇人殺しの筈が無いからな。
「………良いだろう」
暫くの間沈黙が流れ、そして彼は許諾した。
「俺達の……いや、俺の目的は……」
そして彼は、彼自身の目的を話し始めた。
……………
………
…
「………そうか」
中々な目的だった。
死者蘇生とか……まあ確かにこの世界なら出来る可能性あるけど。
「で、返事は?」
そう彼は俺の話を催促する。
「……交渉決裂だ」
そして俺は、そう答えた。
「なっ!」
第一、俺がそれに協力しても、メリットが一つも無い。
「お前の生死は俺が握ってる!」
そう焦った様子で彼は諭す。
確かに俺の生死は握られてる。
とはいえ、俺にとってはそれは大きなデメリットにはなり得ない。
……それに、ここで協力するより、ケイ達に任せた方が良いと思ったしね。
「……じゃあな」
そう言うと、彼はどこかへと歩いて行ってしまった。
……さてと、それじゃあ俺は、事が起こるまで休憩しますか。
えーっと……ちょっと今日から暫くの間、投稿をお休みします。
理由としては、まあ新小説の原案を考える為ですね。
今小説は一応成り行きとかは決めて書いてはいたんですが、やっぱりちゃんと決めないとダメだなって思い、休ませて貰う事にしました。
まあ多分一か月程で戻って来ると思うので、その時また会いましょう。
では!




