イースサイド27
………なんでだ?
僕があの国に帰って来たその時、ケイからフレンドのチャット機能を使って連絡が来た。
うん、めちゃくちゃ久しぶりで驚いた。
いや、それだけならまだ全然大丈夫。
でもその後にね、二人の魔物から同じ件で尋ねて来たんだ。
レンの眷属?だった筈。
ケイとレンから同じ件で尋ねられるなんてね。
因みにその件っていうのは、鍵を探せって。
具体的な事は色々書かれていたけど、正直僕…もう休みたい。
スパイ疲れた!
したくもないアイドル活動疲れた!
とはいえ多分この鍵探しはしないといけないんだろうね。
……面倒くさいけど。
そう言って数日位過ぎてるけど。
「早く行きましょう」ってその人達に言われてるけど。
でもやっぱり面倒くさいよ。
数十年間働き詰めだったんだから少し位休ませてよ。
うん……まあ今日行くんだけどね。
ナイトとミルに話したら乗って来ちゃってさ。
なんか流れで今日行くって事になった。
……僕の休みがー!!
………………
………
…
「それじゃあ行こうか」
そう言う僕に続き、彼らも進む。
「久しぶりの冒険だわ!」
「そうだな、最近ずっと事務作業だったし」
楽しげに話すナイト達を見て、僕も久しぶりにウキウキしてる。
よくよく考えたらナイト達との冒険はこれが初めてなんだよね。
今までこういう事はケイとやって来たから。
「どこに行くの?」
そう聞くムシュさんに、僕は自信満々に言う。
「やっぱり謎って言ったら彼だよ」
「「…??」」
皆の頭の上にハテナが浮かぶのが見える。
まあ、全員初対面か。
「楽しみにしててね」
そう僕は言って、彼らを連れて行った。
………………
………
…
僕は何の変哲もない、ただのカフェの中へと入って行った。
「ここは…」
そう呟くナイトの声を聞きながら、僕は小声で厨房の中に立っていた彼に言う。
「サイルは居る?」
「イースさんですね、こちらへどうぞ」
彼はその声に反応し、僕を奥へと案内する。
そこはカフェの裏側、厨房とはかけ離れた姿をしていた。
色々な資料が並べられたそこには、一人の男性が居る。
「また店変えたのか」
「ああ、ちょっとヤバい客に襲われちゃってね」
飄々と言う彼のその姿に、僕は安心する。
この様子ならすぐ潰れる事は無いな、と。
「それで、予約までして何を聞きたい?」
そう言った彼の言葉に、ナイトが反応する。
「待て、本題に入る前に聞きたい」
「まず、君は何者だ?」
……何者、ね。
うーん、言い方悪くない?
ナイトが聞きたい事は予想がつく。
「………俺は情報屋だ」
まあ、そういうだろうな。
ただ、多分ナイトが聞きたいのはそういう事じゃない。
「俺が聞きたいのは、イースとどういう関係か、だ」
だよねー!
僕は一応王様だからさ、ナイトとしては心配なんだろうね。
そう僕は納得しながら、サイルの言葉を聞く。
「うーん……犯罪者仲間?」
今までのサイルへの緊張は一変して、その矛先が僕に向く。
……!?
ちょっと待て、サイル、それはズルくないか?
確かに僕はサイルと会った時は牢獄に入れられてたけど、別に犯罪を犯した訳じゃないからね?
「イースー?」
そう若干怒った様子のミルに、ひたすら弁解を続ける。
「いや、僕が初めてこの国に来た時怪しまれて捕まったけど、犯罪は断じてしてないよ!」
っていうかアイドル事件を考えると僕被害者なんだけど。
そうひたすらに弁解を続けるが、
「ふーん」
一向に信じられない。
だめだ。
信じられてない。
「さてと、それで本題は?」
そう聞くサイルに、お前が脱線させたんだって言ってやりたい。
とはいえこれ以上話を広げたくないから、僕はその質問に返答した。
「真実の鍵って知ってるか?」
そう聞くと、暫くの間サイルは熟考した。
そして暫くして、口を開いた。
「………クエストか」
「うん」
「ちょっと待ってろ」
そう言って彼は周りにある資料をガサゴソと漁り、一枚の紙切れを取り出した。
「これはそのクエストについての情報がびっしり書き込まれた紙だ」
「お前は何を対価に差し出す?」
そう聞かれた僕は、一言こう言った。
「何が欲しい?」
と。
一応僕はお金をある程度持ってはいる。
でも、サイルが欲しいのは僕の金ではなく、魔物の王から手に入れられる情報だ。
「………世界樹と呼ばれるあの木の事件」
……やっぱりか。
前からずっと欲しがってたし。
それだけその情報が貴重って事か。
「ナイト、説明頼む」
僕はその時人間側に居たから、詳しい事は分からないからね。
どちらかというとナイトの方が知ってると思う。
「分かった」
そしてナイトは説明をし始めた。
フォスやムシュも同席し、それを聞く。
まあ魔物だし、プレイヤーでもなかった筈だから別に良いか。
そう考えて。
………………
………
…
「なるほど……ははっそんな初期にこんな事が起きてたなんてな」
そう興奮した様子でひたすらに彼はそれを書き留める。
「さて、それじゃあその情報を渡して貰おうか」
「ん?ああ」
そう言って彼はその紙を渡す。
………凄いな。
僕はその紙に書かれた情報量に感嘆する。
「ありがとな」
「ああ、こちらこそ」
そう言葉を交わして、僕は外に出る。
「まずはどこに行くの?」
そう聞くミルに僕は答えた。
「泥棒だ」
一応色々と選択肢はあった。
先に正規のクリア出来てない場所を探索するっていうね。
ただ、この持ち主が問題だった。
「「え!?」」
そう驚く皆を見ながら、僕は考える。
どうやって盗むのかを。




