鍵
えー、先日は宿題に追われて……すいませんでした!
鍵について彼女が説明しようとした時、
「彼らは一応ここに来たばかりなので、一度部屋に案内したらどうですか?」
そう先程通訳してくれた彼が言った。
「分がった」
「おみゃーらついでごい」
そう言われ、俺達は言われるがままについて行った。
「こごがおめらの家だ」
………え?
目の前に見えるのはただの壁。
そして周りにあるのは大きな穴。
………これって。
「掘って家作れって事ですか?」
「そうだ」
そう元気良く返事すると同時に、ツルハシが渡された。
………やっぱりプレイヤーっていうより地底人だろ。
そう突っ込んでしまったが、そうとしか思えない。
「それじゃあ、詳しい説明は後日に」
青年はそれだけ言うと、リーダーと呼ばれる彼女と一緒にどこかへ行ってしまった。
「……行っちゃったね」
「そうだな」
そう呟くライ達を見ながら、俺は妖力を使って壁を立方体にくり抜いた。
「とりあえず家はこれで良い?」
そう聞くと、どうせならもっと良いものにしようという事になった。
聖魂力はもうイースの魔力レベルで何でも出来る為、とりあえず俺は穴を掘り、ライはそれを固める整地を。
そしてシズクとケイで装飾。
ライの執事さんは話を聞きに行った。
完成する頃には深夜を迎えていたが、寝る前にひとまず執事さんの手に入れた情報を聞く事になった。
「私が聞いてきた事としては、カールさんについて、そしてあのリーダーについて、最後に鍵についてです」
……この場所については聞かなかったんだ。
まあ明日説明されそうだけど。
「まずカールさんについての事ですが、彼は火山に通じていた道からこの場所に、入らずに脅したそうです」
入らずに……脅した?
まあ入ったら出られないから、入らなかったのは分かるんだが、脅したってなんだ?
「彼は毒ガスを入る直前で見せびらかし、情報をくれなければ毒ガスをばら撒くと、脅したそうです」
……やっぱりカールさんって結構クレイジーだよな。
「そして一通りの情報を持ち、戻って行ったそうです」
へー……どうやって入ったら出られないって分かったんだ?
まあ、確かに予想出来ない事は無いけど……うん、やっぱりカールさんはヤバい。
「さて、次はあのリーダーについて」
「彼女は最初にここに辿り着いた人であり、今の環境を整えたプレイヤーらしいです」
……ケイみたいな感じか。
「そして側に居る彼も、その最初期に居た人の一人で、かなりの腕前らしいです」
なるほど。
かなりの腕前……は!そうだ、もう俺鑑定出来るんだ!
もうかなりの間使えなかったから忘れてた。
……明日会う時使うか。
「最後に、鍵について」
「この世界には、色々な場所に隠しクエストとして鍵を集めるクエストがあり、その鍵を全て集めればこの場所から解放される」
………鍵ってあれだよな?
俺は前に半強制的に行かせられたあの場所を思い出す。
あれ……外じゃん。
どうやって行けば良いんだよ。
えー…集めるの無理じゃない?
「基本的にそれらの鍵は外にある為、集めるのは不可能だ」
だよな。
「………終わり?」
「終わり」
ええ!?それ出るのは諦めろで終了じゃん。
嘘でしょ?
「……明日聞くか」
「そうだな」
「そうね」
そうして、詳しい事は明日聞く事となった。
それぞれが自分の部屋へと向かう中、俺はこっそりと移動し、念話を使う。
『フォス、ムシュ、大丈夫か』
『『はい』』
よし、それじゃあ、
『イースと合流し、鍵を探せ』
『鍵……ですか?』
まあ、物が分からなければ探しようがないか。
『クライムにある俺の家の引き出しの中にそれがある』
『後はイースに聞いてくれ』
そう俺は言い、念話を切った。
後は……ここか。
俺は先程、穴を掘り終わった時、ついでに情報を聞こうとした。
その時に先に聞いていた執事さんの相手を見たんだ。
とても親切に答えているようには見えなかった。
先程から思っていたが、ここの人達は俺達を歓迎しているようには思えない。
明日、リーダーである彼女達が何を言ってくるのか。
それが重要だ。
そう考え、彼らの目的が何なのかを思いながら俺は眠りに落ちた。
………………
………
…
次の日
俺達はリーダーの彼女の付き人と思われる人達に呼ばれた。
そして俺達はその人達に連れられ、彼女の家へと来た。
外装は特に変わらない。
ただ、色々な装置がそこに並べられていた。
「これは…」
そう驚きを露わにする俺達を見ながら、彼女は言う。
「おめらには今がらそどに行ってもらう」
「…外?」
「この世界の境界線の、外側の事だ」
……俺が行った所か。
いや、でもあそこは…
「出たら死にますよね?」
「……!!」
「おべであったのが」
おべ?
「あの…おべって…」
「ここからは私が説明しよう」
うん、そうしてくれると助かる。
もう面倒だ。
「ここにある機械を使い、その悪影響を無効化させる」
「そしてその後、君達には、そこにいる闇人と我々が呼んでいるそれを、倒していって欲しい」
「それを毎日行うのが君達のここでの義務だ」
……義務。
クライムと同じような事をしてるって訳か。
「今日から毎日、頑張ってそれをしてもらう」
「それじゃあ早速、行って貰おうか」
…………鍵の説明は?
一応昨日するって事で離れたんだけど。
昨日一応執事さんから聞いてたから、皆もあんまり気にしてないみたいだけど、なんでこいつらは説明しないんだ?
……まあ、盗聴だな。
忘れている可能性もあるけど、それにしたっておかしいしね。
何人も居るこの場で誰も説明を忘れてるのは。
カチャッ
怪しげな装置の中に入れられ、鍵を閉められる。
なんだ?
そう疑問に思っても、押さえつけられ、動けない。
そして暫くすると、再びそこは開けられた。
そこには先程居た部屋の景色はなく、俺が……外へ出た時に入った研究所のような場所に辿り着いた。




