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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
12章 神薬の錬金術師
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とある薬剤師の一生

目が覚めると俺は、教会の中に居た。


恐らく俺はリスポーンしたのだろう。


カールさんはどうなったんだ?


二人は……


そう色々な事に混乱しながら、俺はこの教会を出た。


「……え?」


外に出ると、そこはこの前のような地獄絵図ではなく、皆が協力し、復興作業をしているのが見えた。


「お、ケイさんが帰って来たぞ!」


そう大声を出して呼ぶ住民達の姿を見て、俺は安心した。


病気は……無くなったんだ。


しかし同時に一つの疑問と不安が込み上げてくる。


カールさんはどこへ?


カールさんは俺が殺し、そしてリスポーンした筈だ。


なのに何故居ない…。


そう不安が駆け巡る中、一人の女性が俺を呼ぶ。


「ケイ、ちょっと来てくれる?」


そう聞いたのは、ここには居なかった筈の存在。


「レインさん」


「久しぶり、ケイ」


そう落ち着いた様子で俺を呼ぶ彼女を見て、俺は更に混乱し、同時に気付く。


俺が居なかった間に…何かあったんだ。


何が、どうして、どうなったのか。


全てが分からない。


とりあえずレインさんから話を…


そう思い、俺はレインさんに着いて行った。

………………

…………


「…………」


「…………」


静寂が走るここは、レインさんの持つ商会の一室。


何がなんだか分からない俺は、何を質問して良いのかも分からず、黙り込んで居た。


そしてその様子を見ながら、レインさんも黙り込む。


その静けさに耐えきれなくなった俺は、彼女に質問した。


「レインさん……俺が居ない間、何があったんですか?」


そう聞くと、レインさんは少し間を開けて答えた。


「……カールが死んだ」


「え?」


その言葉に、俺は疑問を浮かべる。


カールさんが死んだ?


俺が殺したのは間違いないが、リスポーン……


俺は、認めたくない仮説が浮かぶ。


いや、この世界は仮想世界、()なんてある筈が……


そう思うが、自然とそれが事実のように感じてしまう。


そして止めの言葉を、彼女に刺された。


()()()()()()()のよ」


「…………」


「…………」


俺が……殺した。


俺は……人殺し。


そう考えていく程、心が泥沼に沈んでいく。


だが、同時に俺は酷く冷静だった。


この世界は精神にフィルターがかけられており、罪悪感は感じない。


この世界の最初期に気付いた情報だ。


だが、それはこの世界では生き返るから必要だったのではないか。


本当の死に……その機能は必要なのか。


自己嫌悪の嵐に呑まれ、俺は俺の全てを否定する。


しかし、それを止めたのもまた、レインさんだった。


「……でも、私はカールを止めてくれて、感謝してるのよ」


「え?」


「……少し、昔話をしましょうか」


そうレインさんが切り出すと、俺はそれに聞き入った。




私とカールは、日本の辺境に生まれた。


村とかがある田舎の方にね。


そこで私達は幼馴染として育った。


元気に育つ彼、洋平君と比べ、私はずっと寝たきりだった。


統合失調症の一種に生まれた時からかかっていたの。


すなわち私は生まれつきの障害者だったって事よ。


「あー、牛さんが兎になったー」


「いや、悪魔になった、怖い、助けてママ!」


「落ち着いて、そこには何も居ないわよ」


幻覚や妄想に毎日のように悲鳴を上げ、休まる日が無かった。


精神がどんどん病んでいく私を毎日看病に来てくれたのがカール、古里洋平君よ。


「大丈夫?」


「あ、洋平君!」


「ほら、今日収穫出来たじゃがいも」


「ありがとう!」


そう毎日…看病してくれたわ。


それからじゃないかしら…洋平君が薬剤師を目指し始めたのは。


毎日のように勉強をし、そして難解中学校、高校へと進んでいき、同時に色々な薬を作り始めた。


元々備わっていた才能もあったけど、それ以上にその努力量が彼をここまで成長させたと思ってるわ。


でも、私の病気を治す薬は、そう簡単には作れなかった。


日に日に私は精神が混濁していき、私はその幻覚に混沌さんっと名前までつけた。


私の精神状態によって容易く変わる存在。


それが混沌さん。


暫く日が経ち、彼は私の病気を治せる可能性のある一つの薬を作った。


でも、その薬は全然違う効能だった。


精神の確立。


私と混沌さんの存在を完全に分け隔てる事になったの。


本来私から混沌さんを無くす筈の薬の筈が、私と混沌さんの存在をよりいっそう深める薬となった。


その薬のお陰で私はある程度精神を保てるようになったけど、四六時中混沌さんが存在するようになった。


私はそれでも良かったんだけど、彼は納得しなかった。


そして彼は……一つの光明をある草に見出した。


麻薬と呼ばれるそれに。


麻薬は人体に与える危険性が分かっておらず、すなわち中々研究が進まない分野だった。


その為、今まで研究をしてきた薬草よりかは断然可能性があった。


でも、日本…いや、正規の研究所でそれを詳しく研究するなんて事はほぼほぼ出来ない。


だから彼は…私を連れ、研究所から姿を消した。


後に様々な偽名を使い、麻薬を売り捌いている麻薬売人として指名手配される事となった。


彼の作る麻薬の客は、彼の被験体とされ、その中には命を落とした者も居たのだろう。


私はその実験を見る事はおろか、してる事すら明かしてくれなかった。


ただの旅行としか…聞かされてなかった。


知っていれば止められたかもしれない。


でも、今更後悔しても仕方ない。


私はその間少しでも彼の手助けをする為に色々な知識を頭に詰め込んでいた。


でも、それも無駄になってしまった。


……と、話を戻す。


そうして色々な場所を動き回り、私の身体は限界だった。


いくら精神の病気とはいえ、身体に全く影響がない訳ではない。


だから私は覚悟を決めて死のうと思った。


これ以上彼に辛い思いをさせたくなかったから。


そんな時、私達は会った。


運営に。


全身真っ黒の服を身に包むいかにも怪しい誘い。


しかし、私達は既に限界であり、それにこのVRMMO。


彼が少しでも楽しめる空間である事を願い、私は洋平を半ば強制的にその誘いに乗せた。


でも、彼はこの世界でも私を治す為に奮闘してくれた。


命をかけて……治してくれた。




「これが、私達の人生よ」


「……………」


どこまでも悲しい物語(人生)


(フィクション)と思ってしまう程の。


でも、これは事実なんだろう。


途中から涙を流しながら、淡々と語ってくれた。


「彼を止めてくれて……ありがとう」


そう涙を流して言う彼女を見て、俺は何も言えない。


慰めの言葉をかけようとしても…言葉が出ない。


……俺は、どうすれば良いのだろう。


カールさんを殺した事を謝るのか、慰めるのか……分からない。


何も分からない。


頭が真っ白になる。


「………」


「………」


結局俺は…何も言えなかった。


……そんな自分に腹が立つ。


大切な人を亡くした彼女に、慰めの言葉一つかけつあげられない自分が!


………これからどうすれば良いんだ?


人を殺めた俺は…どうすれば良いんだろう。


今まで通りに動ける気がしない。


俺は……どうすれば良いんだ。

これにてこの章は終了!


次章は…どうしましょうか。


まあ決まってるんですけどね。


では!

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