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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
12章 神薬の錬金術師
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秘密基地

ギイィィィイ


そう音を立てながら扉を開く。


「これは…」


その中は外側のファンタジーな姿とはうって変わり、まるで現代に戻ったような研究所だった。


様々な植物が保管されており、中央には色々なメーターが完備された操縦機のようなものがある。


「海底の研究所…」


そう呟いたケイに釣られ、一同の頭にそれが思い浮かぶ。


カールさんがこの研究所を作ったのか?


カールさんはどこに…?


カールさんがあの海底の研究所を……?


様々な疑問が飛び交う中、俺はあるものを見つけた。


「レイン調査書」


事細かに書かれた書類を仕舞ってあるタンスの中にあったその書類。


その中には私生活のありとあらゆる場面が記録されていた。


「待って、こっちにはこんなものも…」


「洗脳薬」


そう書かれた薬瓶が置かれている。


これらのものを見てしまえば、俺達の頭には一つの仮説が思い浮かぶ。


「カールさんはレインさんの…ストーカー?」


カールさんが大犯罪者である事は知っていた。


そしてそのカールさんが既婚者ではなかった事も。


その事実とこれらの断片的な情報を組み合わせると、そんな仮説になってしまう。


「…訳が分からない…レインさんとカールさんは…」


「ケイ?」


そう咄嗟にイースが呼びかけるが、ケイは気付かない様子で呟き続ける。


バタンっ


そして、


「…倒れた」


「倒れたね」


倒れた。


恐らく極度のストレスで精神が限界だったんだろう。


カールさんの失踪に病気による死への危険。


まあでも、


「カールさんがストーカーっていうのは多分ない」


「うん、それは僕も思った」


確かにこの事細かに書かれた書類は気になるけど、それにしたっておかしい。


カールさんとレインさん、最近一緒に居ないし。


カールさんはずっと自室に篭ってたらしいからね。


ストーカーならそんな事する必要無いし。


俺がそれ以上に気になるのは、


「カールさんは滅ぼすつもりなのか?」


あ、先に言われた。


そう、俺が気になるのはそれだ。


超強力な幻、そして病気をアップデートと撒き散らし、それから姿を眩ました。


もうこれ病気で滅びるのを待ってるようにしか思えないよ。


そしてそれと同時に姿を眩ましたレインさん。


……訳が分からないな。


「レイヤ、ちょっと」


そうさっきから端の方を探っていたイースに呼ばれる。


「ここ、地下に繋がってる」


そう言って指を指す方向には先程まで薬草の入った壺が置かれていた場所だ。


その部分を剥がすと穴があり、梯子が繋がっている。


「行こう」


その言葉に釣られ、俺達は下に降りて行った。

………………

…………


地下にあるのは上とは比べ物にならない位のおびただしい数の薬瓶ときちんと保管された薬草、そして綺麗に揃えられた資料の数々。


薬草を育てる為の場所なんかも完備されている。


何年所ではない、何十年と積み重ねてきたものだ。


地下という事もあって少し暑いが、正直熱でよく分からない。


「凄いね…」


ああ、本当に凄い。


それにしても…これだけの薬を何の為に使おうとしているのかが分からない。


「あ、カールさんの日記だ」


日記?


そんなものつけてたんだ。



○月◯日

今日から息抜きとして日記をつける事にした。

これから毎日研究の日々だと思うとそれだけで気が滅入る。


○月◯日

結果は乏しい。

いくら実験を重ねようが、成功が見えない。

これは本当に無理なのだろうか。

いや、私は諦めない。

諦める訳にはいかないのだ。


○月◯日

そうだ、なんで今までこの事実に気付かなかったのだろう。

ここは仮想現実、ならば現実の物差しで考える必要は無いじゃないか。

はは、この事実に気付ければ進むぞ。


○月◯日

気分転換に外に出ると、現代の研究所みたいな施設を見つけた。

恐らくこのゲームのシナリオに関する何かなのだろう。

私はこのゲームから()()()()()()()()からあまり関係のない話だがな。

ありがたく使わせて貰おう。


○月◯日

この研究所のシステムは素晴らしい。

そして同時に()()を作る目処も立って来た。

火山という特殊なバイオームのお陰だな。

だが、()()に必要なもう一つが……

己の才の無さに憤慨する。



この先からの記述がない。


勿論細かな日記という日記の所もあったが、正直そこは必要無いと思って飛ばした。


それにしても()()ってなんだ?


はぁ、日記なんだから普通に書いてよ。


まあ多分他人に見られる事を危惧してそうしたんだろうけど。


……息抜きになってないじゃん。


さてと、そんな事より本題。


結局カールさんはどこに?


うーん…、


「この日記から分かる事といったらあれに火山が必要って事位かな」


後は火山が幻じゃなかった事位。


他に分かる事…


そう頭を回転させながら周りを見渡す。


…………!!


そうか!そういう事なのか!


「カールさんは、火山の頂上に居る」


俺はそう結論付けた。


「え?なんで…」


そう言葉を溢すイースに説明をしていく。


「ここにあるのは薬瓶と薬草と資料」


一見普通と思えるこのもの達。


だが、よくよく考えると不自然だ。


「違和感を感じないかい?」


「違和感……!」


「なんで薬草が…地下に植えられているんだ?」


日光も何もない地下に薬草が植えられている。


わざわざそんな事をする必要、普通はない。


勿論日光が逆に要らない植物があるとかなら可能性はあるが、そんな植物がこんな量ある筈がない。


だとしたら何故?


そこで上にあったメタリックな操作板が浮かぶ。


そこでここの気温、湿度を調節出来るとすれば、納得がいく。


ただ、ここで注目すべき点は気温、湿度を調節出来るという所。


育てるだけだったら外でも出来る。


確かにここは沼地という特殊環境ではあるが、正直それはあまり関係ない。


日光が入るようにして、土をある程度調節すれば簡単に育つようになる。


湿度だって同じ事だし、そっちの方が人口的に気温、湿度を調節するよりも断然簡単だ。


だとすれば何故地下で育てていたのか。


「火山か」


そう、火山だ。


特殊なバイオームとして火山を利用していた事は日記を見れば一目瞭然。


そして地下が暑かった事からこの地下で実験を行っていた事が伺える。


ここまで考えればおのずと答えが出てくる。


「カールさんは火山に居る」


火山で育つ()()に使われる植物。


そんな植物を簡単に持ち去る事が出来るのならばここで痕跡を残す必要は無い。


痕跡を残して考えさせたのは多分時間稼ぎだ。


痕跡がなかったらまあ近場の沼地、そして火山を探す事になってただろうからな。


恐らく気付く事位カールさんは予測してたのだろう。


「でも、噴火はどう説明付けるの?」


あ、噴火がそういえばあったな。


まあでも、


「どうせ運営の悪戯だよ」


火山の噴火なんて自然現象を魔術無しで操れたらそれこそ、天才所の話じゃないよ。


もしそんな事が出来ればそいつは…化物だ。

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