行方
お久しぶりです!
まあ私はしょっちゅうテストでこうなるのでそんな珍しくはないんですけどね。
いやー、終わった…
「カールさんの行った方向なら分かる」
そう俺は断言した。
予想ではあるが、ほぼほぼ間違いないと思う。
「カールさんは…南に居る」
「南…」
南…
「どっちが北なの?」
……そこからか。
「クライムがある方向を北と見て、南だね」
この世界を地図で表すと、上がクライム、左下がここ、深陽国で、右下が魔物の国となる。
まあ全部の国を行ったり来たりしてる俺だからこそ把握してるって所はあるけど。
普通人間なら一国だけに居るもんな。
因みに海は深陽国の左に、前の山籠りで行ったのは魔物の国の右側って感じかな。
「……なんでそんな事が?」
そうケイは不信感を露わにしながら聞いてきた。
あー、やっぱ疑われたか。
俺が拉致したとまではいかなくても大分怪しんでるみたいだ。
まあそりゃあそうだよな。
俺がこの結論に辿り着くまでに本来知り得る筈の無い情報を使っているんだから。
勘が鋭いっていうか直感のスキルが高いのかな?
まあいいか。
俺がこの結論に辿り着いた方法、それは消去法だ。
まず俺は魔物の国から来た。
その時点ですれ違ってない事からそっちに行っていない事が分かる。
それなら反対、海はどうなのか。
でも海も多分あり得ない。
俺があの時海について行った時、その時彼ら、彼女らは来ていなかった。
行った事もない場所に天才とも呼ばれた彼が行くか?
いや、行かない。
この騒動にはなんらかの彼の意図がある。
となるとあの時居なかった彼が行く事は無い。
さてと、となると後は北と南だ。
でも北だった場合クライムで確保される可能性が高い。
と、まあ北に関しては完全なストロマ任せなんだけどね。
多分プレイヤーから情報が回ってる筈だから、行ったら捕まえられる。
その時は念話か何かで来るだろうし、それでも別に良い。
まあただ透明化ーとかすれ違ったとかがあるとこの予想は外れる。
まあでも予感もそう反応してるし、多分大丈夫だと思う。
……さて、で結局どうやって誤魔化そうか。
魔物の国から来たっていうのはそっちの方からって言えば誤魔化せるけど、北と海、この二つは本来俺が知り得ない情報で成り立ってる。
うーん……どうするか。
「まあでも別に良いんじゃない?」
「え?」
「どっちにしろ手掛かりなしで急いで捕まえないといけない訳だし」
…確かに。
手掛かりなしでこの状況、藁にも縋らないと、か。
なんにせよ話さなくて済みそうだ。
「それもそうだな、それじゃあ南に行こうか」
そう結論が付き、俺達は南へと進む事にした。
……………
……
…
「そういえばこの三人で出掛けるのって初めてじゃない?」
「確かにな」
そう話しながら走る。
特に問題がなさそうに走る。
いや、俺は問題だらけなんだけど。
……マジでやばい、ぶっ倒れそうだ。
もうこれ熱四十度位出てるんじゃないかな。
完全に悪化してるよ。
いやー…こんな状況下で重労働なんてマジでえぐいわ。
まあその分か、
テッテレ〜
『レンのレベルが4になった!』
『レンの病気耐性が6になった!』
『レンの倦怠感耐性が5になった!』
『レンの幻耐性が6になった!』
『レンの狂乱耐性が6になった!』
どんどん色んなスキルが上がって行くんだけどな。
うーん…それにしても暑い。
汗がダラダラ出てくるよ。
そう俺が暑さと葛藤している中、イースがケイに質問した。
「ケイ、南側の情報とか知ってる?」
するとケイはこう答えた。
「え?うーん……聞いた話によると…」
「確か火山帯で、溶岩が溢れてるって…」
そうケイが答え、この先を見る。
「本当だ、火山がある」
そうイースは言った。
怪しげな植物が生い茂っていた今までの道とはかけ離れた、炭の道が広がる。
暑さの原因これか!
そう俺が思ったのも束の間、大問題が発生した。
ゴゴゴゴゴー
轟音がどこからか聞こえ、俺達は立ち止まった。
「ん?なんだこの音…」
「まさか…」
そう嫌な予感がし、俺は再び走り出す。
「一気に抜けるぞ」
そう言うと、イースも理解した様子でケイの手を引いて走る。
一方、ケイは未だに気付いてない。
ドゴォォォオオン
「噴火だ」
「え?え?」
俺達は今、この火山を横断しようと思っている。
しかし噴火してしまえば、当然その道は閉ざされる。
勿論溶岩なんて数日?数週間?経てばすぐに熱を失うのだが、正直そんなに待つ時間はない。
となれば選択肢は突っ切るのみ。
それにしても…
俺は一つ、疑問を抱く。
このタイミングで噴火なんて…タイミング良すぎないか?
まさかカールさんの妨害……。
そう思うが、それはあまりにも現実味はない。
カールさんの能力は樹力、空気に触れれば霧散してしまう厄介な力。
そんな力で俺達の動向を予想し、そして魔術を使ったとも思える噴火を起こした。
……現実味がなさすぎるよな。
いくら仮想現実とはいえそんな事が出来る筈がない。
それだったら運営が茶々を入れたって考えた方がまだ現実味がある。
カール……神薬の薬師、何をしようとしてるんだ?
そんな疑問を抱えながら、俺達は走り続けた。
………………
…………
…
数時間ぶっ続けで走り続け、俺達は境界線にまで来てしまった。
「結局、見つからなかったな」
そう残念そうにケイは呟くが…
「そうでもないと思うよ」
俺は一つの事実を確信した。
ゆっくりとその境界の外へ出る。
そして俺は…死ななかった。
その境界の外は中から見た景色とは一変し、泥々とした沼地が広がっていた。
やっぱりそうか…
「来てみて」
そう言って俺はイースとケイにこの光景を見せる。
「これは……」
「え?……」
思い付きではあったけど、そうみたいだな。
今まで、俺達は幻覚を見せられていた。
幻耐性が上がったのはその影響だ。
勿論最初はこの病気により、幻を見たりする人も居るのかと思った。
しかしあの国の様子を見ると、そんな人間は居なかった。
勿論俺が見てないかった可能性だってあるが、それにしたっておかしい。
何故そんなに幻が薄いのに、幻耐性が上がるのか。
だってそうでしょ?
幻覚、幻聴を見てる人が居ないっていう事は幻を見にくいという事。
なのに幻耐性が上がる。
となると答えは一つ。
俺達はこのアップデートが来てからずっと、幻を見ていた。
それが一番濃厚だと思う。
「幻を見せられていたのか」
お、イースも気付いたみたいだな。
「???」
ケイは相変わらずだけど。
さてと、でもこれで手掛かりゼロだ。
だって南に行くっていう仮説が成り立たないもん。
だけど、新たな手掛かりを見つけた。
目の前に見えるのは沼地…だけではなく、中央にキノコをモチーフにした家が建っている。
これが恐らくカールさんの研究所か何かなのだろう。
いやー、楽しくなって来たね。
「???」
…………まあ入る前にケイに説明しないといけなそうだけど。
やはり来たか。
仕方がない、ここを捨てるしかないな。
しかしまさかあそこを超えられるとはな。
あの場所を捨てるのは惜しいが、我は見つかる訳にはいかないのだ。
見つかったら……決断しないとだな。




