ケイサイド30
そして俺達はこの世界から…出る事は出来なかった。
俺が居るのはこのイベントが始まる前に座っていた玉座の上。
何故?
そう疑問を抱く前に、俺は、猛烈な吐き気に見舞われた。
「……やばい、超気持ち悪い」
とりあえず俺は走ってトイレへと向かう事にした。
……………
………
…
「はぁ」
吐き気も収まり、ある程度症状も軽くなった。
まあ体調が悪い事には変わりないんだけどね。
そう思いながら、俺は本題へと戻る。
「……どうして俺達はこの世界から出れてないんだ?」
本来ならカールさんがそれを望み……いや、そうだな。
俺は結論付ける。
カールさんはそれを望まなかった。
それだけだ。
だとしたらカールさんは何を望んだ?
もしかしてこの惨状……!
俺はとんでもない事に気付き、窓の外から城下町を見渡す。
「くそっ、なんでこんな簡単な事に気付かなかったんだ!」
俺だけにこの症状が出てる筈がない。
あるとしたら、このプレイヤー全員。
いや、この世界の人間全員、だな。
となるとこの国の防衛システムが機能する筈もない。
そして同時に俺は運営から発信されたお知らせを読み、事態の更なる深刻さに気付く。
「急いで避難させないと…」
そう結論をつけて、俺はこの城を後にした。
………………
………
…
この病気?には、感染して重症化する人と、しない人の2種類が居る。
皆の話を聞く限り、恐らくその条件は力の量だ。
量が多ければ多い程、この症状は重くなる。
また逆も然りだ。
しかし……これは本当にまずい。
もしもの時の為に一応作っておいたシェルターが役に立ったけど……正直使わないと思っていたからかなり環境が悪い。
広さはある。
ただ壁や床はただの一枚の鉄で、病人にとってはかなり苦しい環境となっている。
何よりきついのは……この環境を打開する策が一切無い事だ。
カールさんとレインさん、二人はあのイベントが終わってから行方不明に…
カールさん達の弟子が頑張って薬作りをしているが、開発までには何年もかかるらしい。
そうなったらまずNPC達は死ぬ。
彼らは確かにプレイヤーよりも力の量が少なく、症状も軽いのだが、生き返る術が無い。
……ただ、良い…のか?
情報がある。
魔物にはその病気がかからない。
え?何が良いのか?
……これは、プレイヤーにも通用する。
すなわち魔物プレイヤーは魔物の姿へと変われば、何の問題もなくなるのだ。
まあ姿を変えるのにも力を使うから一回死んで、満タンの状態から急いで変えるっていう面倒臭いやり方なんだけどね。
そして同時に、魔物プレイヤーから…否、イース交渉を持ちかけられた。
「ケイ、ある条件を認めてくれたら、僕達が君達を守ってあげるよ」
と。
このある条件とは……始まりの森…いや、NPC達には世界樹の森と呼ばれる場所を彼らの領土として認める事。
そして働く者には最低限の賃金を支払う事だ。
……これは、正直まあまあきつい。
あの森はこの国から一番近い狩場であり、あそこの領土を認めると、俺達はそこで狩りをしない、またはその領土に入る時に入国の為のお金を支払わないといけないのだ。
そして、この条件だとダンジョンに入る事も出来ない。
ダンジョン入れないのは…かなりきついんだよなぁ。
と、まあそういう事で、とりあえずイースと話し合いをする事になった。
……なんかレンも入って来たけどそれは無視で。
「イースが求めるのは世界樹の森を君達の国として認める事、そして働く人の最低賃金の保証、で良いよね?」
「うん、僕が求めるのはその二つ」
……さてと、ここからいかに条件を緩く出来るか…。
「ダンジョンについてはどうするつもりなんだ?」
「え?あー、そっか、ダンジョンはこの森の中にあるんだったなぁ」
そう、ダンジョンについてはあっちも入場者がいないと稼げない。
……ここでそれを認めてくれればかなり楽になるからな…。
「……それじゃあ、ダンジョンの入り口、この国の中に作るよ」
「………え?」
「だから、ダンジョンの入り口を移動するって!」
……ええー!?そんな事出来たの!?
いや、まあでもここで嘘をついてもしょうがないからな。
……とはいえ、これはまずい。
確かにダンジョンが手軽に使えるようになったのはかなり大きい。
だが、やはり狩場の問題…だよな。
ダンジョンだけでも確かに肉とかは手に入れられるが、外での狩りを忘れるのはかなりきついんだよなぁ。
「……そうか…」
やばい、ダンジョン頼りだったから他に攻める手立てがねぇ!
いやー…レインさん凄いなぁ。
…あ、そういえば…
「どうしてこの領土が欲しいの?」
別にプレイヤーがそっちを邪魔した覚えはないし……。
「………今度は、殺されない為かな…」
殺されない為……か。
正直事情は分からないけど、まあ良いか。
「分かった、認めよう」
「え!」
まあでも、
「クライムがあるから、あくまで二国間の間だけの取り決めだ」
「うん、分かってる」
……大丈夫そうかな。
「……はぁー、でもこの後どうしよう…」
結局の所、この先の解決策がないんだよなぁ。
それにこれを皆に言って怒られるっていう大きな仕事も残っている訳だし。
多分この解決の鍵となるのはカールさん。
でもどこに行ったかすら分からない。
……完全な手詰まりだよなぁ。
そう嘆いていると、
「カールさんが行った方向なら分かる」
そう確信した様子でレンが断言した。
そろそろ試験近いので休みます!
………前話で一緒に言った方がよかったな。




