ケイサイド26
アップデートが入り、この先どうするかという事が決まった。
「確実に運営はこの状況を把握し、干渉して来た」
「となるとこの海は確実に鍵となる」
「明日、海へと行く事にしよう」
「……了解だ」
そしてその時、一人の女性が中へと入って来た。
「失礼します」
ん?なんだ?
そう疑問に思い、
「どうしたんだ?」
そう聞いた。
すると、
「……レイヤが帰って来ました」
……そう彼女は言った。
「レイヤが……帰って来た?」
数十年ぶりの友達の帰り。
しかし、それはこの状況で来ては欲しくなかった。
疑心暗鬼になっているこんな時に……
「現実世界でレイヤに関わりがある人はいるか?」
そう俺が聞くと、
「ああ、恐らく俺は関わりがある」
そうライが返した。
「だが………言えないな」
しかし、ライはその情報を黙秘した。
「……ああ、あの子ですか」
そしてその様子を見て、ライの執事は納得する。
結局情報は無しか。
「………会いに行くか」
今まで音信不通となっていたレイヤ。
元よりレイヤは色々と不審ではあったが、このタイミングで帰ってきたという事が更に違和感を急増させている。
吉と出るか凶と出るか。
そう大きな不安を抱え、俺は会議室を後にした。
………………
…………
…
「今までどこに行っていたのかな?レイヤ」
昔と変わらない友達の姿を見ながら、俺は若干声を荒立てながら聞いた。
まあ実際怒っているのはそうなんだが、それよりまずこのレイヤが本物かの確認をしないとだ。
レイヤと名乗るプレイヤーはレイヤが失踪してから少なからず現れた。
勿論普通に見て分かるような偽物も居たが、中には完全にレイヤへとなりきっている人も居た。
ムシュと呼ばれる彼を買収するまでした人も居たな。
流石にこんな年月が経ったからかそういった人は少なくなって来たが、万が一がある。
さあ、どう返答する?
そう様々な思惑を絡めた疑問を投げかけ、そして彼は、
「内緒」
そうたった一言で返した。
「……はぁ、これは本物だ」
必要最低限の事以外は話さない。
彼はそんな奴だ。
「ですから本物だとおっしゃったでしょう」
「いやムシュとグルで騙している可能性も十分あると思ってね」
過去に同じような事もあったし。
……さてと、
「……だが、本物と分かったからには容赦しないぞ」
今まで、約20年も心配かけさせやがって!
「居なくなるなら連絡位寄越してから行け!」
「どれだけ心配したと思ってるんだ!」
これだけで俺の怒りは収まらんぞ!
まったく。
「ごめんなさい」
……まあ許してあげるけど
「で、結局話す気は無いの?」
「うん」
………無いのかぁ。
「はぁ…まあでも無事で良かったよ」
「本当に死んだのかとも考えちゃったし」
……プレイヤーは死なない。
とはいえそれは運営が言った事だ。
そう簡単に間に受ける事なんて出来ない。
実際、このゲーム開始時に比べてかなりプレイヤーの数は減ったと思う。
恐らく……実際に死んだ人も居るのだろう。
……と、これ以上考えるのは野暮だな。
「丁度海に行こうとしていた所だけど、一緒に行くか?」
「行く」
即答かよ。
それじゃあ、
「明日の9時にお城の前で…じゃあね」
これだけ言ったけば良いでしょ。
そして俺はその場から去って行った。
さてと、色々と準備を済ませとかないとだな。
…………………
…………
…
徹夜だ……
色々準備に手こずって朝になっちゃった。
……なんか最近こんなんばっかじゃない?
なんで毎回徹夜してるんだ……睡眠耐性がめちゃくちゃ上がってるし、称号で社畜ってのゲットしちゃったし。
まあ良い、それじゃあ行こうか。
アップデートで追加された海へ。
午前9時…
集合場所には俺とライ、そして彼の執事しか居なかった。
………殆ど皆が遅刻って…
そう絶句していると、少し遅れてレイヤとムシュがやって来た。
「どうしたんだ?」
そう聞くと、
「準備に手間取った」
そう返された。
…うん、その内容を聞きたかったんだけど…まあ良いか。
そう若干呆れながらも、レイヤ達の遅刻は分かった。
……そして三十分後…
「ご、ごめん……遅れた……」
そう息切れながら、イースが登場した。
まあイースはチャットで連絡したから遅れるのは考えてたけど……なんかそれだけじゃなさそう。
「どうしたの?」
そう聞くと…
「海に行く用の水着買おうと言ったら…なんか色んな人に追いかけ回されて…疲れた…」
………イースかなり強いけどそれを追い回せるって……凄いな。
「早く行こう、じゃないとまた…」
え?
そう呆気に取られてると…
「「見つけたー!!」」
「ヤバっ、見つかった!」
そして再びイースは走り去って行った。
……ご愁傷様。
それにしても水着……もしかして…
そして更に……2 時 間 後!
「お待たせー」
「ごめん、遅れた」
サキとシズクが来た。
「水着選んでたら遅れちゃって…」
やっぱりか。
いや、それにしても2時間半遅れはおかしいけど。
「はぁ、はぁ…」
イースは出発前に虫の息。
「時間厳守!」
「はーい…ねぇねぇライ!」
「ごめんなさい…」
サキはまるで聞いてない。
はぁ、まあでもこの世界で初めての海、興奮するのも仕方ないかな。
「それにしてもケイ君、その荷物は何?」
そうシズクの指差す先には大量の荷物があった。
「これは海に行くのに必要な持ち物だよ」
海に行くっていうか海が使われる時にね。
「さてと、それじゃあ行こうか、海に」
………………
…………
…
「海だー!」
そして数日掛けて、海へと辿り着いた。
「それにしても結構人居るね」
まあアップデートで初めて追加された地だからね。
そう自分で納得しながら、今までの道を振り返る。
全ての木を切り、道を作り、ここまで来た。
領地とかかなりあやふやだからこれが良いのか分からないけど、暫くしたら沢山の人が来るだろうと思ってね。
うん、めちゃくちゃ大変だった。
次にする事は……この地獄絵面を消す事かな。
目の前に映るのは足を痛めるプレイヤー、そして海に入り、襲われているプレイヤー……うん、予想通りだ。
今現代で遊ばれてる海は砂浜の整備や海の環境を管理されている海だ。
アップデートで追加されたって言われてたからこんな事になるだろうってある程度予想はしてた。
まあ正直追加するなら遊べる状態で追加して欲しかったけど、あの運営だしね。
それを解決する為の道具を準備してたんだ。
さてと、頑張るか。




