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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
10章 入れ替わり
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しがらみ

さてと、それじゃあ早速海へ行こう。


そう考え、イースの家から出て、国の中を歩いていると、


「おーい、フォスちゃーん」


そう呼ぶ声が聞こえた。


嫌な予感がしながらも後ろを振り返ると、そこにはイースと一緒にいる女性、ミーンの姿が見えた。


「もう、時間通りに来ないから焦っちゃったじゃん」


ミーン……時間通り?


何か予定があったのか?


…………まずい、この流れ……


そして予感が的中した。


「それじゃあ孤児院の管理、よろしくね」


………やっぱりかー!!


予定があるなら言って欲しかったなぁ。


このまま強行突破……は流石に無理か。


仕方ない、まあ多少遅れても追いつけるだろうし大丈夫だろう。


そう俺はたかを括ってその話を受けた。


コクリ


声出したらバレちゃうから頷いて、


「了解、それじゃあよろしくね」


そして俺は道を聞きながら、孤児院へと向かった。

………………

…………


さてと、着いたな。


ガチャ


俺は中に入ろうと、ドアを開けた。


するとその隙間から一瞬だけ中が見え、俺は再び閉じた。


…………あれ?ここで孤児院あってるよな?


もう一度それを確認し、再度中を見る。


中は角が生えた子供、尻尾が生えた子供、獣みたいな子供。


ありとあらゆる魔物が人間に化けたような子供が自由に動き回り、そしてそれを必死になって保育士?が宥めている。


…………まあ魔物の国だしね。


そう無理矢理自分を納得させ、俺は中へと入った。


「あ、フォスさん漸く来た!」


「もうー、大分遅刻ですよ」


「それじゃあ、後は()()()()()()()()()()


そして入れ違いになり、他三人は外へと出て行った。


……!?!?


え?この後俺一人で面倒見るの?


俺が力が使えないって分かってなかった?


いやまあ言葉にはしてないけど……えー…


「うわぁぁぁぁーーーーん!!!」


あー、泣いちゃった!


ヤバいヤバいヤバい、どうしよう。


えーっとおむつ?お腹空いた?え、そういえばご飯どこ?


いやマジでピンチなんだけど。


えーっとえーっと……


そして俺はシフトが交代になるまでひたすらに頑張った。


うん、頑張った。

…………………

…………


あー、終わったー!!


さてと、それじゃあ今度こそ!


そう思って俺が再び歩いてると、


「おーい、フォスさーん!」


後ろから声が掛かって来た。


……もしかしてまた?


そう嫌な既視感を感じながら後ろを振り返ると、そこには一人の少年が居た。


「準備は万端です!早速山籠りしましょう!」


そしてその少年はそう言い放った。


山籠り……だと……。


確実に数日は暮らせそうな荷物量、これは時間が掛かりそうだ……。


逃げるか?いやでも逃げたら確実に怪しまれる。


それにフォスがここで築いた関係に傷を付けるのもなぁ。


準備、移動時間、そして探索中の時間……目的の場所までは中々時間が掛かる筈だ。


それならこの山籠りはまだ大丈夫か?


うーん……どうだろう。


まあでもこれも入れ替わりによるペナルティだと思って受けるか。


そう思い、俺はその山籠りに付き合う事にした。


あれ?この付近に山なんてあったっけ。


そう少しの疑問を残して………

………………

………


あー、受けなければ良かったー、もう終わりだー…。


そう思いながら、俺は森の中を進む。


山籠り、どうせ子供の事だし、山じゃなく付近の森の中でするものだと思っていた。


だが、実際は歩いて数日掛かる小さな山で山籠りをする事となっている。


規模や危険度は恐らくあの山に比べれば小さなものだろうが、俺はそれ以上にどれくらい時間が掛かるかの計算を間違えた後悔がとても大きかった。


勿論それだけでなく、そこに行くまで一言も話さないっていう事も大きな負担となっていた。


声を出したら正体がバレる。


でも声を出さずに指導とかほぼほぼ無理だ。


いや、まあそれでもこれまで声無しでやったけど。


どうする、どうすれば……


そうひたすらに考えていた。


すると、俺は一つ、閃いた。


この義手、声帯にしたり出来ないか?


……見本無しで作る事になるな。


妖力がいかに便利だったか……まあでも出来ない事はない。


時間は掛かるけど……あ、声帯なら記録してたわ。


それじゃあ大丈夫だな。


となると問題は……どうやってそれを導入するか。


既に無言で指導はしている。


なのにいきなり声を出しても………よし、こうするか。


となると……

………………

………


数日後…


「フォスさん、なんで一言も話してくれないんですか?」


来た!


「ん?今までもずっと話してたよ?」


「ええ!?」


自然に会話に入り、ごり押しだー!


相手は子供だし違和感は感じても納得するだろう。


「え?いや、でも、え?」


よし、かなり自然に会話に入ったから混乱してるな。


「そんな事気にしてないで稽古に集中!」


「あ、はい」


よし、かなり無理矢理だけど納得させれたな。


それにしてもこの疑問来るの長かったなぁ。


とはいえ自然な流れにする為にはこれが一番だったし。


さっさと終わらせて行くぞ!


そう意気込み、急ぎ足で山へと向かった。

………………

………


そして例の山に着いた。


見た感じかなりの小山で、半日程でも頂上に着きそうな高さだ。


「それにしても良くこんな山知ってたね」


「あー、それがこの山危ないから近付くなって言われてて……」


………!?ナチュラルに凄い事言ってない!?


危ないから近付くなって言われてるならなんでここで山籠りなんてしようと思ったんだよ。


っていうかこの森そんなに危ないか?


魔物のレベルは確かに少し上がったような感じはするけどそこまででも……


そう疑問に思い、周りを探索してると……見つけてしまった。


いかにもな雰囲気が漂う洞窟を…


時間が掛かる予感しかしない。


「ねぇ、入ってみよ」


いやもうただでさえ時間使ってるのにこんな所入りたくないよ。


そう思い、戻ろうと思ったその瞬間、


『特殊クエスト、【真実への鍵 ???の洞窟】が開始しました』


『このクエストは強制です』


そうアナウンスが流れた。


………終わった。


いやもうなんだよ強制って、クエストなんだから自由にさせてよ。


もう時間使いたくないよ。


だが、俺の足は凍り付いたかのように後ろへ動く事はなかった。


「うん、それじゃあ入ってみようか」


そう言って俺は嫌々ながら中へと入って行った。

…………………

…………


洞窟の中は特にこれといった特徴はなく、中に居るのは普通の魔物ばかりだった。


……最奥以外は。


この洞窟の最奥には数多の魔回路があり、それがこの洞窟がただの洞窟ではない事を表しているかのようだった。


「怖い…」


「大丈夫大丈夫!」


……ヤバい雰囲気しかしないな。


そして俺はその魔回路に触れた。


すると、


『………取得を許可します』


そうどこかから機械音が聞こえ、壁だったそこが開いた。


中には……明らかにヤバそうな硬貨が。


そこにはあくまで感覚だが、尋常じゃない量、そして非常に精密な魔回路が書き込まれている。


そう手に取って感じた。


…………結局何だったんだ?


そう疑問に思いながらも、時間がヤバい事を思い出して急いで出口へと走った。

………………

………


山籠りが終わり、無事に国へと戻って来た。


少年を親元へと返し、急いで向かおうとしたその時!


「あ、フォスー!」


そう再び後ろから聞こえて来た。


………もう流石に嫌だ。


内心ではそう思いながらも、後ろを振り返った。


そして俺は…かなり長時間、この国に縛られる事となった。

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