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廃れた世界のプレイヤー  作者: 春夏 冬
10章 入れ替わり
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泥棒

夜中0時、普通のプレイヤー達なら寝静まる時。


しかし、俺が行く場所の前には二人の影があった。


警備員だ。


「あー、給料良いとはいえやっぱり夜勤はキツいなぁ」


「そりゃそうだろ。まあでも他の仕事よりかは断然楽だろ?」


「いやー、そうなんだけどさぁ」


二人共気を抜いている。


行けるな。


入り口はそこだけ。


となると必ずそこを通らなくてはならない。


それじゃあ気付かれずに入るのは無理?


そんな訳無い。


彼らの気を引けば良いのだ。


ふー……えいや!


パン! パン!


「ん?何だこの音?」


「さあな?」


「…ちょっと見に行ってみようぜ!」


パン! パン!


「おいおい、警備の仕事はどうすんだよ」


「どうせ誰も来ないだろ」


パン! パン!


「それもそうだな、行くか」


そして警備員達は去って行った。


…はぁはぁはぁ。


空気を殴って音出すのヤバかった。


殴ったりとか殆どした事ないからかめちゃくちゃ体力使ったし。


とはいえこれで入れる……ちょっと休みたいな。


まあでもいつ戻って来るか分からないしさっさと潜入するか。


そうして中に入ろうとする俺の後ろには、二人の影が……

……………

………


中に入れた。


うん、至ってシンプルだな。


中には丁寧に管理されている大樹がある。


とはいえ特に防犯装置は無さそうだ。


フォスから聞いた所、かなり愛されていたみたいだが、警備は本当にこの程度なのか?


そう疑問に思った次の瞬間、予感が働き、死角からの攻撃を察知した。


それをすぐさまかわしたのだが、二人のプレイヤーに見つかってしまった。


「ここはあんまり死者の願いが無いから戦い辛いぞ」


「大丈夫、沢山外から連れて来たわ」


確か…ナイトとミルだったな。


「ここまでよ、泥棒さん」


これは…かなりヤバそうだ。

………………

………


「行きなさい、冥獣(めいじゅう)達」


そう彼女が言うと、不可視の魔物達が一斉に彼を襲って来た。


気配も無い魔物の攻撃を防ぐなど、力系の感知能力が無ければ不可能だろう。


しかし、彼は、それ無しで防いだ。


研ぎ澄まされた予感を使って。


しかし彼は、


あれ?フォスが言ってたのと違くない?


そう疑問に思っていたのだ。


フォス確かナイトとミルの力は同じで、死後の願いを利用した術だったよね?


なのになんで死んだ魔物がそのまま攻撃してるの?


こんなの力系が使えないのに勝てる筈がないじゃん!


もう少し近くなら妨害の効果が効いたんだろうがこの距離は無理だよ!


そして同時にかなり焦っていた。


そう、彼女は死後の願いを自分の我儘に使うというやり方に嫌悪していた。


その為、必死に別系統の進化を目指していたのだ。


そして彼女の力は、死んだ亡獣の欲望を操る力となった。


死しんでも達成出来なかった欲望、その自分の欲望を自分で果たそうとする。


それに満足した彼らは喜んで成仏してくれる。


ギブアンドテイクの能力。


その時丁度レンはあそこに居た為、知る事が出来なかったのだが、彼女の能力はそのように進化したのだった。


進化しても周りの死を操る能力に縛られる。


それに多少の罪悪感を覚えながら。



そして今、その能力にレンは悩まされている。


不可視というのはそれだけで厄介なのである。


「全部防がれちゃった」


「それじゃあ次は俺が」


そして彼は周りを見渡しながら、赤黒い何かを集め始めた。


「行け!」


レンは予感に従い、ひたすらに避けた。


正解だ。


その何かとは、殺害の欲望の具現化したもの。


当たれば最後であったのは確かであろう。


しかし、レンも紙一重。


不可視の攻撃を永遠と続けられれば終わりだ。


だが、ナイトは力系の能力は無意味だと勘違いし、剣を持って戦い出した。


!よし、近距離戦ならこっちに分がある。


そう勝利を確信したレンだったが、彼が想像する以上にナイトは強かった。


そして所々で挟まるミルからの亡獣の攻撃。


分が良くとも、相手が強ければそれは不利となる。


レンは義手の形を変え、ナイトの剣を折った。


よし、これで少しは楽になる。


そう思った次の瞬間、ナイトは術を使い、新たに剣を生成した。


え、嘘でしょ?


そして再び降着状態。


互いに攻め切れない。


うーん、もう最初の見つからないで行くって作戦ガン無視だな。


そう思っていると、ナイトが話し掛けて来た。


「このままだと埒があかない」


「一回、なんでここに入って来たか話し合わないか?」


そう問いかけて来た。


勿論これは単なる時間稼ぎ。


恩人である世界樹さんの遺体に手を出そうとしたレンを許そうとは微塵も考えていない。


しかしそれはレンにとってもチャンスとなり得るのだ。


無論、今念話を使う事はレンには出来ない。


だが、彼が念話を使わずとも連絡を取る方法はある。


その希望があるからこそ、レンはその話に乗った。


相手が同じ事をしても妨害されると考えて。


「ああ、良いぞ」


「それじゃあまず…君の名前を聞かせてくれ」


名前…まあ良いか。


「レンだ」


「レン…ってまさか!?」


「ああ、想像通りだと思う」


名前を明かしても別になんともないよな。


偽名かもしれないし、この距離なら妨害も効くから鑑定されない。


「へー、トッププレイヤーのレンが来てたんだ」


しかし、念話かどうかは分からないが、イースは来た。


妨害が無効化されたという事だろう。


「お、イース、来たか」


間に合わなかったか。


「うん、世界樹さんの遺体を荒らすプレイヤーが来たって聞いて飛んできたよ」


『主様!』


遅いわ!


午前2時、一週間に一回、近くに居ない時にはフォスとムシュに念話をするように言っていた。


丁度今日、この日だったんだが……遅い!


『今すぐ魔物の国に来い』


『え?あ、はい、分かりました』


さてと、とりあえずフォス達を呼べた。


うーん、にしても……凄いピンチだ。


いやだってさ、さっきでもギリギリだったのに三人だよ?


無理でしょ。


せめてフォス達が来るまではなんとか気を引かないとだな。


「こんにちは、魔物の国の王様であり、人間の国のスパイ、イースさん」


「な、なぜそれを…」


まああんなバレバレなスパイじゃ誰だって気付くよ。


しかも俺はフォスから情報を貰ってたし。


でもこれは、分かって乗ってるって感じかな。


「世界樹さんが殺された理由、知りたくない?」


「……!」


よし、食い付いた!


「イース、相手の目的は時間稼ぎだ!乗っかるな!」


それはイースも多分分かってる。


でも、


「殺されたくなければ教えろ!」


あんなに親しかった世界樹さんの死に、感情が揺らいでる。


そもそもフォスから聞いた情報には不可解な点が多すぎる。


沢山のプレイヤーの軍勢?


そんなのどこで集めたんだよ。


そしてどうやら皆洗脳されていた。


そんな術、それほど時間が経っていないプレイヤーが使える訳も無い。


そして対世界樹さん用の戦術。


どこからどうみても、ただのプレイヤーの所業ではない。


そんな渦中で世界樹さんは死んだ。


それは真相が気になっても仕方ない。


俺もまだ全てが分かった訳ではないが、多少は予想出来る。


でも、それを伝えるのは今ではない。


ダダッ


「来たか」


『フォス、あの世界樹の中心にあるそれを、世界樹を傷付けずに取ってくれ』


『わ、分かりました』


そしてフォスが世界樹の中から光り輝く石のようなものを取り出した。


そして俺はその石を数秒見て、俺はイースに石を渡した。


「ありがとな、()()()()()()()()()


「これは返すよ」


「おい、世界樹さんの死の真相は?」


「自分で調べるんだな」


そして俺はフォス、ムシュと共に去って行った。


イース達に少しの興味を植え付けて。

………………

………

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