ライサイド1
さてと、ケイは爺に止めて貰ってるし、準備は整った。
ケイが何かよく分からん状態になってるし、これはおれの使命だ。
ケイの事は信頼しているが、任せる訳にはいかない。
問題はこいつをどうやって抑え……!!
そう考えていると、突然咲が襲いかかって来た。
「…くっ!」
一応斧はあるが、俺そんなに強くねぇんだよな。
今も避けるのが精一杯。
となると鍵になるのは仙力の使い方。
単純な身体強化して勝とうとしても、正気に戻せなければ意味がない。
話し合いにでも持ち込もうと思っていた当初の計画が台無しじゃねぇか。
いや、待てよ。
仙力をああ使えば話し合いに……いや、下手したら正気に戻す事も可能じゃないか?
精神が弱っている状態に付け込むようで悪いが、こ、るしか方法が無い。
仙力は簡単に言えばありとあらゆる所の身体強化。
でも、言っちゃえばそれしか出来ない。
だが、その狭い範囲だからこその応用も効く。
仙力は、他人に使う事も出来るんだ。
すなわち、いきなり相手の足を強化し、バランスを崩したりと色々な事が出来る。
まあケイにはそんな発想はなかったみたいだが。
だから、俺はそれを使い、俺はサキの魂を強化、そして俺の魂も強化する。
そしてその時、一部変異を使い、そこへの道を作って俺自身を移動させる。
そんな事が出来るのかって?
出来る筈が無い。
だから奴にも協力して貰うのさ。
「見てるんだろ、運営」
この運営はあらゆる場面でプレイヤーに干渉して来てる。
小さな事でも、大きな事でも。
『あらら、バレちゃった』
そんな運営がこの大イベントを見てない筈が無い。
「今からする事を最大限手伝え」
『………ふーん、まあ良いよ』
さて、準備は整った。
始めよう。
双方の魂の強化!
そして、それを操作しながら一部変異によって道を作る。
『うわー、めちゃくちゃ無茶するじゃん』
そりゃあな、これが……俺の使命だから。
『行ってらっしゃい』
そう運営が言うと、俺は真っ白い部屋に居た。
「これが俗に言う魂の部屋的なものなのか?」
そして、その中で一人、泣いている少女が居た。
彼女、西条咲である。
「どうした?」
そうライが、否、朝霧雷蔵が問いかけると彼女は答える。
「私、ママとパパを殺しちゃった」
「もう、これ以上自分を騙して殺し続けるのは嫌なの」
その少女はそう自分の心を打ち明けた。
俺は、彼女にこう言った。
「大丈夫だよ、もう、騙し続ける必要はない」
「え?」
困惑する咲。
俺が言えるのはただ一つ。
「好きなだけ後悔して良いんだよ」
罪悪感で例え、押し潰されそうになっても、
「俺が、生涯君に寄り添うから」
俺の使命は彼女を洗脳する事。
でも、俺はそんな事で彼女の未来を消したくないから。
悲しい過去のあった彼女に、辛い道を選ばせたくないから。
だから俺はその使命を全うしない代わりに彼女を、彼女達を幸せにしよう。
それが俺の、俺だけの使命だ。
「……ありがとう!」
段々と意識が戻って行く。
…………………
………
…
そして現世へと戻った先には……爺とシズク、そしてクライムの王様の側近以外……誰も居なかった。
まさか十話も行かずに次の章になるとは思いませんでした。
しかも最後の方一話の半分位しかないし。




