ケイサイド23
「さて、それじゃあこれから数ヶ月後に起こる、戦争についての作戦会議を始める」
ここは会議室。
様々な人が集まってこの場で話し合いをする為の部屋だ。
とはいえ今回話し合う内容は今までの比ではない。
戦争だ。
数ヶ月程前、あるクエストが始まった。
ワールドクエスト、犯勇大戦。
内容としてはまんま、この国とあの国での戦争についてのクエストだ。
クエストっていうのはどうやらワールドクエスト、シークレットクエスト、ノーマルクエストと三種類あって、このクエストはノーマルを除き、他二つは運営が望んだクエストらしい。
詳しい事は知らないけどそういうのを考えるのが趣味の人達の会議に参加してそれを知った。
まあすなわちこの戦争は運営の望んでいる戦争という事だ。
つまりは回避不可能。
まあこっちもあの国と戦う事は考えていたからそれほど影響はないんだけどね。
ただ被害を最小限にするには奇襲が一番良かったんだけど今ではそれは無理になったっていう事が痛手かな。
で、その戦争には日時まで指定がされていて、その日時が数ヶ月後の12月31日。
それまでの間になんとか作戦を練ろうって考えて今日会議をする事になったんだ。
その日は冬のど真ん中。
とはいえこの冬という環境、これを上手く使えば有利に戦える……と、まあそういう戦術的なものも話すつもりだけど他にも住民の避難とかも話さないとだよな。
さて、何から話すか……
そう話す内容を考えていた瞬間、一人の大臣が話し出した。
「あの、戦争って……それは決定した事なのですか?」
国の資産管理を任しているサラさんだ。
「何を言ってる!あの国の人達は我らの狩人達を脅し、追い剥ぎをしょっちゅう行っているのだぞ!」
そして彼は冒険者ギルド副総長兼狩猟の首領のタグさん。
……つまんないとか言わないでね?
因みに総長は熊の亜人のケント。
ケントは強いんだけど…ちょっと……まあ、ね。
「いえ、その点は心配してないのですが……戦争での経費が……」
あー……、
「財産少なくて、ごめんね」
「いえいえ、私が力不足なだけですから!」
そうかな?十分働いてると思うけど。
「あ、そういえばまだ来てないフナさんは?」
フナさん、彼は農業関連の仮代表。
実際はカールさんが代表だってなってるんだけどカールさん拒否しちゃって。
で、フナさんが代わりの代表になったんだけど、一応フナさんは仮って事にしてる。
「今日は何か収穫があったみたいで休み。まあでも詳しい事は聞いてあるから心配いらないよ」
「そうですか」
「おーい、そろそろ本題に入ろうぜー」
そう口を挟むのはライさん。
犯罪関連の仕事をしてたらしく、そういった事の取り締まりを希望してたからこの仕事について貰った。
「そうだね、それじゃあまず戦争に参加するプレイヤー等の資料を、ネズさん、配布を」
「はーい」
そう返事をする彼は情報管理の代表、ネズさんだ。
「ほー、プレイヤーの参加数約9万人か。で、NPCは0」
「はい、ケイさんがNPCを強制的に不参加にさせたので」
「なるほどね。確かにNPCは生き返らないから不参加に……王様らしいわね」
そう言ったのは商会の会長兼商業管理代表のレインさん。
「レインさん、一つ質問なんですが、本当にこの資料の量の品物を卸せる事が出来るのですか?」
「ん?ええ、今回はちょっとイレギュラーが起きそうでね」
「イレギュラー?」
そう若干話が逸れてきたので、とりあえず本題に戻す。
「っと、そこまで!そろそろ本題に入らないと」
「ああ、そうね」
「ええ」
「さて、それじゃあこの戦争でのそれぞれの対応について聞いていこうと思う」
「それじゃあまずタグさん」
「お、俺か。俺はケントが率いる狩人達の後ろから戦場の把握、そしてそれからその報告をするつもりだ」
「俺自身の戦闘能力はあんまりないから今回は補助に徹する」
うーん、そんなにタグさん弱いとは思わないんだけど……まあ熱くなりやすいから良いのかな。
「それじゃあその報告を参照に僕は参謀として活動しようかな」
そう口を挟むネズさん。
「了解、二人はそんな感じか」
「それじゃあライさんは?」
「俺か……俺はケントと一緒に皆を率いて戦う役回りが良いな」
「お、それじゃあ俺はお前の所も見なきゃだな」
「ああ、よろしく頼む」
なるほど……戦場での役割はこの三人に任せて良いかな。
「私は補給を担当するわ」
レインさんが補給、まあその補給品もレインさんのもよだし妥当かな。
「わ、私はNPC達の避難を」
「あ、それはフナさんもするから二人で」
「分かりました」
サラさんとフナさんが住民の避難。
良い感じにバランスは取れてるな。
多分負傷した人が帰って来る事は少ないだろうから回復は要らない。
「となると念の為サラさんとフナさんで戦争開始の一日前、12月30日には避難を済ませておいてくれ」
「小さな子供とかは逃げやすそうだし気を付けてね」
「分かりました!公務員全員でしっかりガードします!」
さて、となると後問題なのは……
「戦術か」
「ええ……一つ、気になる事があるんだけど、いいかしら」
ん?何だ?
「まず、ケイ……あなたは今回の戦争、敵軍を殺す気はないわね」
ッ!!
「……バレてたか」
「「「え?」」」
「今回の戦争、大元の目的は非行に走るプレイヤーに虐げられた者達の救出だ」
「だが、そんな者が戦争に無理矢理参加させられたらどうする」
「もし、それがNPCだった瞬間、相手が生き返る事はない」
「……そうね」
「確かに……」
「……………」
「その為、今回の戦争、ただ勝つだけではダメだ」
ただ勝つだけでは……
「全員の戦意を損失させなければダメなんだ!」
「「「ッ!!」」」
「そんな無茶な」
「ああ、だがそうしないと……彼らは解放されないんだ!」
だから絶対に……
「なるほど、だから俺達に目的を知らせなかったんだな」
ああ、
「絶対誰かしらは無理だと考え、この戦争を辞退する者が現れると……」
「見くびんなよ!」
タグ?
「確かに俺達はお前程の意思、強さは持ち合わせてはいない!」
「だが、ここで働いているのは様々な目的を持ち合わせて働いてるんだ!」
「金、名誉、それらが例えお前の考えているような立派なものじゃなくても、真剣な目的なんだ」
「それをただビビって辞退だ?そんな輩はここに居る筈がねぇだろうが!」
………はは、そう言ってくれると思ってたよ。
「一芝居打って良かったでしょ?」
「ああ、上手いこと乗せれた」
「なっ!!嵌めやがったな!」
うん、でも、
「大分空気がほぐれたんじゃないかな」
「確かに……」
「そうだな」
「さて、それじゃあ今回のこの戦争での、作戦を話す!」
この作戦が吉と出るか凶と出るかは分からない。
だけど、ここで勝負に出なければ成し遂げられない!
「作戦は……」
…………………
…………
…
会議が終了した。
俺は一つの部屋へ入った。
「どう?大丈夫そう?」
「ええ、大丈夫よ」
彼女の名はシズク。
絶対記憶能力を持つ女性だ。
「それじゃあ当日、頼んだよ」
「任せて!しっかりと見つけてやるわ!」
そして俺は部屋を退出した。




