運営との邂逅
あーー、やっと森から出れたな!
それにしても村は見つかんなかった。
あのプレイヤー達の近くにあっただろうがまあ、見つけたところでなんだって話だけどね。
…………あれ?…………なんか…………意識が………
『主様、大丈夫ですか?』
あ……………子狐………から……………感情…………
テッテレ~
『レンは、気絶耐性を手に入れた!』
………………………
………………
……
う、ううん…………………最近気絶する事多いな。
耐性も手に入れたからか、記憶はとんでない!
で、ここはどこだ?
沢山の人がいるけど…………って俺も元の人の姿じゃん!
そう考えている間に次々目を覚まして自分達の異変に気づいていった!
「おい、ここはどこだーー!」
怒鳴り散らす者も居れば、静かに考え込む者も居る。
それにしてもここはどこだ?
子狐もいないし…………。
「皆さん静粛に!」
そう頭上に黒髪の男性が現れ言った。
なんだ?
「皆さんが驚く気持ちは分かりますが、今から説明させて頂きます」
そう聞いて皆が黙った。
「では、まず自己紹介をさせて頂きましょう」
「私がこのゲームにあなた方を閉じ込めた、このゲームの総責任者です」
「ふざけんな!」「此処から出せ!」
「警察に訴えるぞ!」……………
あーあー、大暴動じゃん。
怒鳴り散らした所でどうにもなんないってのに。
「このままだと話が進まないので、失礼します」
その瞬間…………あれだけ煩かった声がピタリと止んだ。
「今、皆様のアバターの声帯をなくしました。これで話に集中出来ます」
うわー、責任者さん怖いなぁー。
「今回私達が貴方方を呼んだのは、このゲームのバージョンアップと貴方方プレイヤーの人間側と、魔物側でこれからどうするかを話合って貰います」
「丁度始まりの森を抜けたプレイヤーが現れた為、今のタイミングで呼ばせて貰いました。」
あ、これ多分俺の事だな。
「さて、質問はありますか?」
えー、喋れないのにどうやって質問すれば良いのさ?
「では、手を上げている貴方」
「あー、あー。よし、喋れる」
「どうやったらログアウト出来るんですか?」
なるほど、手を上げるのか。
それにこれは誰しもが気になる事だね。
俺も気になってる。
「今の所貴方方をログアウトさせる気はありません」
あー、やっぱりログアウト不可だったか。
「ですが、この先定期的にイベントを出すつもりなのでそのご褒美として、でしたらあるかもしれません」
上手いな、「あるかもしれない」で、希望を持たせ、実際無くても「あるとは言ってない」で、確実に有利な立場をゲットできるって事だね。
だが、それを分かってもここから出たい人は思い通りに動くしかないって事だ。
恐らく何も為さないでいるのは運営は望んでないから、僅かな希望を持たせてやる気を出す。
策士だねぇ。
え、俺?俺はこの世界を楽しみたいし、別にわざわざ出ようとは思ってないよ。
「他に質問はありますか?」
「では、手を上げている貴方」
「はい、クエストとはなんですか?」
え、クエストとかあるの?
「はい、クエストとは重要な事を神からの依頼としてプレイヤー方にクリアして貰います」
「クリア出来た場合は?」
「クリア出来た場合、プレイヤー方だけではなし得ない褒美が貰えます」
「クリア出来なくても何の支障もありません」
「クリア出来た場合の褒美の例としては、国造りが成功したら特定の場所でプレイヤー方がリスポーンする等です」
うわー、それって絶対本当の事だよね。
国造りが成功したらってことは、国造りがクエストってことか。
俺も自分の国とか欲しいなぁ。
「他に質問ありますか?」
「では、手を上げている貴方」
「このゲームのバージョンアップとは具体的に何をするんですか?」
「はい、このゲームに体力と睡眠のシステムがありませんでした」
「なので、休憩無しで動いたり、開始から3日程経っているのに睡眠をしていない者が少数ですがいます」
あー、絶対俺だ。
休憩なんて倦怠感で気持ち悪くなって以来してないし、睡眠なんて眠気なかったから寝ようとすら思ってなかったわ。
よくよく考えたらあの猪と戦った時ヤバい位動き回ったのに息切れ一つすらしなかったのはおかしいな。
「このままだとゲームバランスがおかしくなるため、修正させて頂きます」
「他に質問はありますか?…………ありませんね」
「では、これから魔物プレイヤーと人間プレイヤーで分けます。30分程あるので、これからの方針を決めて貰います」
どうやって分け……………うわ、瞬間移動した!
瞬間移動出来るんだったら気を失わせる必要ないじゃん!
「これから貴方方魔物プレイヤー達には、方針を決めて貰います。上にあるタイマーを見てください」
「このタイマーがゼロになったら話し合いは終了です」
なるほどね。
まあ、俺は話し合いには参加しないから関係ないか。
「では、話し合いスタートです」
「皆さん聞いてください!」
「今僕達魔物プレイヤーは、人間プレイヤー達と同じように国造りをしています!」
「そして、人間プレイヤー達とは対立関係でいたいと思います」
「なので、それに異議がある方はいますか?」
「あのー、良いですか?」
「どうぞ」
「人間プレイヤー達と協力は出来ないんですか?」
「恐らく魔物プレイヤー達は悪役的な立ち位置でプレーをしようと魔物側になったと考えられるため、同じように考える人は少ないと思います」
「そうですか……………分かりました」
「良いですか?」
「はい、どうぞ」
「ログアウト不可についてはどうしますか?」
あー、ログアウト不可か。
俺は別に出れても出れなくてもどっちでも良いかな。
まあ、出れない方が面白そうだけどね。
「そうですね、今の所こちらで何かが出来る訳ではないのでログアウトの目処が立ったらその時に話し合えば良いと思います」
「分かりました。ありがとうございます」
「あのー、国造りをしているってどこでやっているんですか?」
「それは、メニューにある掲示板で知らせましたよ?」
「そもそもメニューってなんですか?」
「え、メニュー知らないの?」
「はい、知りません」
「俺も知らねー」 「僕も」 「私も」……………
あー、確かに触覚に違和感を感じないと俺も気付かなかったかもな。
「そんなに知らない人がいたなんて…………ではメニューの説明をします」
「メニューには、フレンド登録、フレンドリスト、痛覚設定、現在時刻、掲示板閲覧の5つの機能があり、掲示板閲覧で魔物専用スレがあるので、そこから僕達は情報を共有してました」
「へー」「知らなかった」「そんな機能が」………
結構知らない人多いな。
「もう質問は無さそうなので、最後にこの魔物プレイヤー側のリーダーを決めたいと思います」
「やはりリーダーがいた方が良いかと思いますので…………」
「お前で良いじゃん!」「そうだ!そうだ!」
「こっちは何度も魔物に殺されて心折れちまったんだよ!」………………
お、思ったより早く決まりそうだね。
けど、魔物に殺されてってことは村がある人間側は揉めそうだな。
「え、良いんですか?僕にはそんなに自信がありませんけど…………」
「こんだけの人の前で喋れれば十分だ!」
「そうだ!そうだ!」…………………
「皆さんありがとうございます。では、僕が魔物プレイヤー側のリーダーを努めさせてもらいます」
「そういえばリーダーの名前は何ていうんですか?」
「はい!僕の名前はイースです」
「分かった宜しくな!イースリーダー!」
「宜しくな」「宜しくお願いします」
……………………………
………………
……
「さて、30分経ったので、貴方方を元の広場に戻します」
また瞬間移動か。
「貴方方も十分話し合いが出来たみたいですのでそれぞれの魔物プレイヤー、人間プレイヤーの代表、前に出て来て下さい」
そして魔物側と人間側から1人ずつ前に出て来た。
「では、始めに魔物側、どうぞ」
「僕達は、人間達と対立関係でいようと考えています」
その瞬間、人間プレイヤー達は息を飲んだ。
「こちら側の言う事は以上です」
確かに話していた内容的にもあんまり相手側に話すことはないよねぇ。
しかも、話す相手が敵対関係だとしたら尚更ね。
「では次に、人間側、どうぞ」
「俺達は、魔物側と協力しようと話し合いで決まったんだけど、まさか魔物側が敵対しようと考えていたなんて…………………」
「俺達が戦う理由はない!だから、一緒に協力しようじゃないか」
「すまないが、こちら側の総意が対立関係なんだ!」
「どうして?どうしてそこまでして争うんだ!」
逆に何で協力出来ると考えたんだろうねぇ。
魔物プレイヤーになった理由を考えれば敵対すると考えられるのに………………。
甘く考え過ぎじゃないか?人間側。
「以上を持ちまして話し合いを終了させて頂きます」
「ちょっと待って!話は終わって…………」
あー……………意識が……………消えて………………。




