コント:ラスボスを倒す寸前に、上から「引き伸ばして!」と言われた漫画の主人公
勇者:とうとう追い詰めたぞ魔王! 観念しろ!
魔王:くッ……まさかここまでとはッ!?
勇者:流星に誓って、僕らの……いや、この惑星に住む全ての生き物たちの想いを込めて……喰らえっ!! 最終奥義・アルティメット=オメガスター……えっ!?
魔王:……? どうした??
勇者:いや、あの……え? あっ、え??
魔王:……撃たないのか? 最終奥義とやらを。何を迷っておる!?
勇者:いや、そうか……。そっか……いやでも、うーん。そうだよなぁ……。
魔王:今更慈悲などいらぬッ! さぁ一思いにやれ、勇者よ!!
勇者:魔王……。最後に一つ聞いておきたい。
魔王:何だ!?
勇者:……趣味は?
魔王:は!?
勇者:だから、お前の趣味は何だと聞いているんだっ!!
魔王:趣味だと? この状況で、その質問に一体何の意味が……?
勇者:い、良いから答えろっ!
魔王:趣味……そうだな。趣味と言えるものは、ほとんどない。強いて言うのなら、人類を困らせる武器を開発するとかだな……ククク。
勇者:なんて悪いやつだ! もう少し話を聞こう!
魔王:えっ!?
勇者:何がおかしい!?
魔王:いやだって……そこは勇者として、『今すぐ退治してやる!』とかではないのか?
勇者:僕は、もう少しお前の話を聞きたいと思った! 悪いか!?
魔王:い、いや悪くはないが……。
勇者:そういえば先週、僕に話してくれただろう魔王。何故お前が、人間を憎むようになったかを。どこぞの悪ガキのいたずらで、バナナの皮で足を滑らせたとか何とか……。
魔王:あぁ。それがどうした?
勇者:続きは?
魔王:続き!?
勇者:お前にも、悲しい過去があっただろう。思わず涙を誘うような回想が。もっともっと、続きを聞かせてくれ。
魔王:何をバカな……続きなど無い! 俺の昔話はあれで終わりだ。
勇者:他にないのか? もっと同情を引くようなエピソードは?
魔王:あるはずなどない! 勇者よ、良い加減にトドメを刺したらどうだ!? ええい、お前がやらないのならいっそのこと自分で……!
勇者:待て! 待て待て待て早まるな! 大丈夫、大丈夫だ……仕方ない。お前の話がもう無いなら……僕の過去を話そう。
魔王:お前の!? それこそ、今まで散々話してきたんじゃないのか!?
勇者:改めて、話そう。僕の祖父が生まれたのは良く晴れた冬の朝で……。
魔王:どこまで遡るつもりだ!? この場面で!?
勇者:(……今、魔王が僕の前にいる。みんなで散々痛めつけたから、もう虫の息だ。あとひと押しできっと勝てるだろう。僕は魔王から目をそらさず、ゆっくりと右手をあげた。握られているのは、もちろん伝説の流星剣・アルティメット=オメガソードだ。この剣があれば、どんな敵でも……)
魔王:貴様ッ! 心の声で長々と状況を説明するなッ!! 早くしろッ!
勇者:分かった、分かったよ……。え〜……流星に誓って、僕らの……いや、この惑星に住む全
魔王:それはもう聞いた!
勇者:ア、アルティメット〜、オメガ……どうした魔王!? しっかりしろ、立ちくらみか!?
魔王:し、心配するな。ちょっと目眩がしただけだ。全く……お前が早く最終奥義を撃たないから、俺ももう、技を食らう前に死んでしまいそうだ……。
勇者:おい待て! まだ死ぬな! 魔王、死んじゃダメだ!
魔王:お前が今まさに、トドメを刺しに来てたんじゃないのか!?
勇者:まだダメだ。来週……いやせめて、再来週までは死んじゃダメだ!
魔王:再来週!?
勇者:ホラ、バナナあげるから。食べるんだ、元気が出るぞ……。
魔王:オイやめッ、無理やり口の中に押し込むな……も、もごもごモゴォッ!?
来週へ続く!!!!