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彼女に愛を伝える方法8選  作者: 宵 ヤイバ
6/10

5 喧嘩

非常に前回の話と間が空いてしまい申し訳ありません。次ははやく書けるように頑張ります。

愛を伝える方法、と言われて何が思い浮かぶだろう。

誕生日を祝う、積極的に会話するという小さなものから、ラブレター、告白などの大きなものまであるだろう。

だが、どれも俺にはh


ピンポーン


空気読まないインターホン君は廊下で立っていてほしい。


今日は土曜日。そんな日にわざわざ家に駆けつけてインターホンを押す人間は滅べばいい。今の俺の心情を察して今すぐ帰りなさい。まぁ俺はこの程度では怒りませんけどね?


ピンポーンピンポーンピンポーン


まだ朝だぞゴラァ!

これは一言ぶつけてやらないと、壊されたシリアスムードが暴れて俺の体を引き裂いてくるぞ。


重い体を持ち上げ、文句を言いに行こうと玄関に向かう。



ドンドンドドン!!


いや人の家のドアぶん殴んな。拳で語り合う系バトル漫画かよ。


バンバンババン!!ガッシャーン!!


いや人の家の窓ぶっ叩くな。手形が残ってる系ホラー漫画かよ。てか最後割ったろざけんな。


「……まぁこんなことすんのはお前しかいないよな。清明。」


窓から侵入してきた不審者に対して不満をぶつける。


「お前が素直にドア開ければ、こんな斬新な入室しねぇわ。」


「斬新な入室じゃねぇよ。手荒な侵入の間違いだろ。後で直せよお前。」


こいつは昔からそうだ。暇な時に俺の家に来ては、俺が遊ぶ気になるまで絶対帰らない。本当に何故こいつがモテるのか。クソ迷惑だ。

腐っても周囲評価は、孤高の天才だもんなこいつ。まぁ蓋を開ければ、ぼっちの変わり者なんだけど。そんな蓋開けんな。


「んで。何しに来た。」


勝手に部屋の椅子で座っている清明に質問する。


「わかりきってんだろ。」


溜息を1つ。



「どうだったんだ。墓参り。」



あぁ。こいつは昔からそうだ。いきなり本題について話し出す交渉下手。告った女子はだいたい初手フラれて泣く。本当に何故こいつがモテるのか。


「どうもこうもただの墓参りだった。線香置いて手を合わせて終了だった。」


「そうじゃなくてだな…。」


実際それしかしなかった。手を合わせて少し目を閉じて終了。


「はぁー…ったく。じゃあ質問を変えるが」




「なんで今まで行かなかったのに行く気になったんだ。」



真剣な声で…というより少し怒気を孕んだ声色で問う清明。



「なんでって言われてもなぁ…。普通に前は春楠が死んだショックで落ち込んでた。少し落ち着いてきたからいい加減墓参りくらい行っとくかって感じだが。」


「嘘だな。

春楠のことを最優先に考えてたお前のことだ。どれだけでかいショックだろうが、そんなの潰して墓参りに行ってたはずだろうが。親友舐めんな。昔のお前なら誰より知ってる。

…今のお前はよくわからねーがな。」


「……っ。」


ほんと厄介なやつと昔馴染みになっちまったな俺は。こいつは俺のことを昔から知っているだけではない。一番理解しようとしてくれている人間だ。

知ったつもりで偉そうに語る奴より、知るために理解しようとする奴ほど厄介な存在はいない。特に落ち込んでる時とかなんかは。


「そのままわからねーやつ認定で終わりってことで…」

「終わるな終わるな。割るぞ窓。」


こわ。なんでこいつがモテるのか、ほんとに謎。


清明ははぁーーっとでっかい溜息を吐き出す。そして、もしかしてだが、と話し始め、



「春楠は俺のせいで死んだとか思ってねーよな。」



となんでもないように言い、だが確信を持っているような目で俺を見る。


「……はっ。確信持ってんならもしかしてだがとか言うんじゃねーよ性悪。」


「おきまりの文だからな。正解だろ?」


「…さぁな。」


「相変わらず嘘上手いな。普通の人じゃ本当か嘘かわからねーよ。

で?どうなんだよ。」


「そう思った根拠を話してくれなきゃ答える気にはならないな。」


当てずっぽうで言っているはずがないと分かっていながら、つい失言を漏らしてしまった。こいつのことだから


「証拠を言えば答えるんだな分かった。」


やっぱ失言拾ってくるじゃねーか。


「まずさっきも言ったが、お前の中の優先順位は春楠がぶっちぎってた。最優先でまず春楠だったってのは憶測だがほぼ確定。

んで春楠が交通事故で死んだ。で、葬式を最後に春楠に会いに行ってない。」


かっる。はっや。話軽くね?展開早くね?


「こんな話を聞いたことがある。

不慮の死亡事故の加害者は、たとえ無罪だろうが被害者の墓参りには行けない。罪悪感に縛られ続ける。そして縛りに耐えられず、切れてしまう。

って言う話だ。」



「ちなみに加害者は今のお前だ。」



なるほど。非常にわかりやすい例えありがとう。突っかかられるから口にはしないが。


「あんだけ春楠第一だったお前のことだから、多分、俺が付き添ってれば死ななかったとか思い詰めてるんだろ。」



「 だからその罪悪感を忘れようと、あえて今まで以上に馬鹿を演じた。」



お前は昔から大事な局面でふざけるからな、と言い付け加える。


嘘だろ。まさかそこまで読まれているとは思ってなかった。たしかに昔から説教中とかにふざけちゃうタイプなのは自覚してたけど。


「結果、第三者から見れば春楠を生きていると思い込んでいる不謹慎馬鹿野郎が誕生ってわけだ。

当然周囲の人は気味悪がって離れる。」


そんなこと俺が一番分かってるわ。


清明のこの説明は一切間が入らない。確信しすぎだろもっと自分を疑ってくれよ。


「で、距離感が離れなかった雨水と話しているうちに、恐らく、かいたたまれなくなり、墓参りへ。

完。」

「終わるな終わるな。」


口挟んじまったじゃねぇか。


「っていうわけで、今のが俺の証拠だ。」


「証拠としては0点に近いな。論文だとほぼ0点。主観的視点、憶測、恐らく多分が入りすぎていて、客観的な意見に欠けるって教師に言われるぞ。再提出だな。」


経験者は語る。論文を書いた枚数で俺に並ぶものはいない。もちろん再提出を命じられた回数も並ぶものはいない。


呆れた顔で清明は言う。


「昔からお前を見てきた親友っていう点を加えれば全部事実に近くなるが?」


「近くなるが?じゃねぇよどんだけ自己評価高いんだよ。なんで当たり前のこと聞くんだみたいな呆れた顔で見てくんだよ。」


続けて俺は返答をする。


「…お前が見みてきたっていう親友と俺が思ってる俺は違う。

…ていうか俺はどうすればいいんだよ。認めればい…」


「じゃあどこが違ったか教えてくれ。」


間髪入れず口を挟む清明。


「はぁ。まず最初からだが… 「おいおい。」


口調を強めた清明が口を挟む。挟みすぎ。


「いい加減俺相手に嘘つくのはやめとけ。

普通の人は騙せるっつったが俺には通用しない。」


その言葉を聞き、何も言い返せなくなってしまう。

お前に嘘が通用しないことも俺が一番分かってるからだ。


そしてさらっと


「いいんじゃねーの?俺からすれば予想的中。お前からすれば事実確認で済むんだし。

そんなにムキになってると死んだ春楠も報われねーよ。

今のお前は春楠の死によって自分を見失ってる馬鹿そのものだ。認めとけ。

いい加減自分の心に正直になれ。」


こういうこと言うよなお前は。なにかを悟ったような言い草で。


「仕方ねぇだろ!!」


ついカッとなって怒鳴ってしまう。


「黙って聞いてりゃ全部俺に刺さる言葉しか出てこねぇな!!お前からは!!

…あぁ、あぁそうだよ!!見失うだろ普通は!

お前だって春楠のこと好きだったんだろ!?もしお前の目の前で春楠が死んだらどうすりゃいいんだよ!!」


目の前で、どうしようもないうちに死なれるよりも、少し離れた位置で、近くにいれば助けられる死に方の方が傷は深いがな…。


「好きだったよたしかに。

だが春楠に似合うのは俺じゃなくてお前だと思ってた。

思ってたからこそ今のお前に嫌気がさしてんだよ。春楠が死んでからなにもかも止まったままのお前がな!!」


お互いの怒気を強めた口撃がぶつかり合う。


「止まるのも無理ねぇだろ!!俺だって前を向いて進みたいって気持ちはあるに決まってんだろ!!

でもなぁ!!思い出しちまうんだよ!

…俺がいたら絶対助けられた状況だった!!交通事故なんて俺が側で注意を払ってれば避けられるもんだった!!」


「だがもう事故は起こった!!春楠はいないんだよ!正面からとは言わないから事実を受け入れろ!

仮にも春楠の彼氏だって言うんならなぁ!?」


「何だとテメェ!!?」


「ほら春楠の死について言い返せてねぇじゃねぇか!!分かってるんだろ!?あとは受け入れるだけだろ!!ーーーーーー



もうそこからはお互いの意見をぶつけ合いまくって、いや、煽りまくり、後半からは、胸ぐらを掴んで手が出る直前くらい…というより手が出た。俺の手が。今。


「あっ……。」


  バタッと後ろへ倒れ込む清明。

 

 やっちまったとは思ったが、謝る雰囲気でも無いため、沈黙に身を委ねる。


 幸い、清明はすぐに起き上がった。


「……あっじゃねぇよ。ったく…。

少しは落ち着いたみたいな?お前も。俺も。」


顔に手を触れながら清明は確認する。怪我はなさそうに見えるが。

あまり強く拳が入らなかったのか分からないが、深くなくて安心する。


「…どうだった?久々に自分の素を出せた気分は?」


立ち上がりながら言ってくる。


「………素?」


「だから、お前が自分に貼り付けてたおふざけキャラを忘れるくらい本音でぶつかったから拳が出たんだろ。」


ぐうの音もでねぇ。殴った側だから何も言えねぇ。


「つまりお前がさっき俺と言い合ったことは、お前の本音だ。」


 自分の心に亀裂が入ったような気がした。あくまでも気がしただけ。

 そう。

 何かに気づきそうなこの感覚はあくまで気のせいだ。


 だが、清明は続ける。

 

 「 …自分でも気づいてないことまで口に出てたんじゃねぇのか?」


清明の言葉を聞いて俺はハッとした、と気付くまでズレがあった。はは、随分と古くなってるな心。壊れてくれてればどれだけ苦しまなかったか。


「いいか?お前はさっきの言い合いで

俺だって前を向いて進みたいって気持ちはある

と言ってた。それがお前の本音だ。

つまり今のお前は


現実から目を背けて自分を偽りたいって思ってるお前と、現実を受け入れて進みたいって思ってるお前がいるんだ。」


「…っ!」


本当か?本当に俺は現実の受け入れをしたいと思ってるのか?心に聞いたところで当然返事は返ってこない。


そんな俺の困惑した様子を見て清明は


「別に現実を受け入れろとも、お前の心にそういう現実を肯定する部分もあるってのも今すぐ理解しろって言ってるんじゃない。


どれだけ時間がかかってもいいからまずは受け入れろ。

自暴自棄になって本来の自分を偽るお前を、春楠は見たくないと思うはすだ。」


そしてそろそろ帰ると言い出す。いや空気読め。


そんな優しい言葉を自分すら見失ってる今の俺に掛けないで欲しい。そしてそんな俺を今は一人で取り残さないでほしい。


「……は…はは…そこで春楠を引き合いに出すのは卑怯じゃねぇですか…

しかも帰るタイミングよ…」


「だが事実だということはわかってるだろ。お前が1番。

春楠は真っ直ぐな人が好きだったからお前を好きになったんだ。

だがすぐに真っ直ぐに戻れってのはキツイだろ。わかるよ。俺も好きだったから。


だからお前が自分をしっかりと定めて、現実から目を背けなくなるまでは、俺が付き合ってやる。相談でも喧嘩でも。」


割れている窓に向かいながらイケメンムーブをかます。


あぁ、本当に。

何故こいつがモテるんだ。そんな風に人が欲しがってる言葉を次々出してると、いつか心の地雷を引き出して嫌われちまうぞ。


あぁ…ほんとに…


  何故こいつが春楠からモテなかったんだ……


 なんで俺だったんだよ…もし春楠の相手が清明だったなら春楠はあのとき…


「だから!」


俺の思考を断ち切るように強めて話す清明。だが表情は非常に穏やかで、子供を諭す親のような顔に見える。


「悩み相談までならやる。偽りのお前が死ぬまでな。

だから本当のお前を見つけて戻って来い。

偽りじゃない、春楠と付き合ってた頃くらい真っ直ぐ正直なお前が。」


もうあいつは窓の目の前。

対して俺は口論の後から動けていない。


「…かっこわり。よくそんな言葉吐けるな…くそ。


いつのまにか泣いていた俺はもっとかっこ悪いけど。


「だが今の俺じゃ…」

「できる!!」


去り際にまた口を挟んでくる。




「なんせお前は




春楠が惚れた男なんだから。」





フラッシュバックするように記憶が流れ出す。


初デートでこれじゃただの幼馴染と変わんないねって笑ったり、じゃあ恋人っぽく手をつなごうって顔を赤く染めたり。

2回目のデートも3回目のデートも鮮明に覚えてる。

既に顔馴染みの春さん達に正式に挨拶もどきみたいなのをしたときの緊張とか、許してもらえた時の嬉しさとか、喜んでた春楠の笑顔とかまで。



私。

今めっちゃ幸せかも。世界で一番幸せ。

なんでって?それ聞く〜?普通。

だってさー。雫みたいな冷静で全体見れる友達がいてー、清明みたいになんでもできるけど苦労が多い友達がいてー、それから〜




あんたみたいな幼馴染兼恋人がいる。





それだけで私は結構幸せよ?


ほんとにいつ死んでも後悔は無いくらいにね!!!


そのくらい私は幸せ!





今回の話で察すると思いますが、そろそろ最終話が近いんじゃ無いかと思います。作者自身もいつ終わるのかわかっていません。もしかしたらこの後、魔王に転生した春楠と勇者に転生した寒太の物語なんてものがあるかもしれませんし!

さて、あとがき冒頭でも書いたようにそろそろこの話は終わります。この話は何がなんでも最後まで書き上げるので長い目で待っていただけると嬉しいです。


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