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真なる英雄  作者: 敦
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第08話 魔道少女再び

 兄さんの仇をとったところなぜか、俺がこの地の新しい領主になった。

 その翌日、領地運営に必要な人材として、故郷であるハクミコ村で幼いころかわいがってくれた隣人、イレーネ姉さんを勧誘するためにグノブが俺の書いた手紙をもって部下4人とともにヘグレスへと旅立った。

 そして、それから俺たちは屋敷の会議室を使って朝から会議をしていた。

 議題は、当然今後のことだ。

「まずは、この屋敷だが、どうする、俺としては壊すべきだと考えるが……」

 そういったのはギウスだ。

「壊すのか」

「そう聞いたのは俺」

「ああ、この屋敷にはいい思いを持っている奴がいないからな」

「そうね、私もそれがいいと思う」

 そういったのはミルファだ、確かにミルファにとってはお姉さんがつらい目に会った場所でもある。

 まぁ、確かに俺にとっても兄さんを殺した奴がいた場所だ。俺にとってもいい場所とは言えない。

 しかし、そうなると問題がある。

「壊すのはいいとして、また屋敷を建てるのか」

「そうだ、今度は、ポルクの屋敷をな」

「そんな金あるのか」

 問題はそこだ、屋敷を壊すのも作るのも膨大な金がかかる、果たしてここにそんな金があるのだろうか。

「それについては問題ない、ダルモアの野郎、領民に膨大な税金をかけていたからな、その分倉には大量の金が蓄えられていた」

 ちなみにダルモアというのは、俺とミルファが殺した前領主の名前だ。

「それは、領民に返さなくていいのか」

 当然の疑問だった。不当に取り立てられた税金は領民に返すべきだろうと思ったからだ。

「確かに返すのが一番かもしれないが、それより今後の税金を軽くする方が喜ぶだろう。まぁ、それも含めてお前の知り合いが来るのを待つしかないだろう、ほんとに来てくれればの話だが」

「大丈夫だろ、イレーネ姉さんなら、間違いなく来てくれる」

 俺には確信があった。

「それでも、金はあまり使わないほうがいいだろうな、もしほとんどを使い切ったところにイレーネ姉さんが来たら、確実に怒られるからな」

 俺はそのことを思って少し身震いした。

 昔、イレーネ姉さんに怒られた時のことを思い出したからだ。

 あの時はほんとに怖かった。

 幼かったからというわけではなくなんというか本能的に怖かったのだ。

「ポルクがそんなに怖がるってことは相当よね。まぁ、あまり無駄遣いはしないという点では私も賛成だから、イレーネさんが来るまでは私が気を付けておくわ」

 などと、ミルファが少し怖いことを言いだした。

「そ、そうだな、それがいいだろうな」

 ギウスの若干ミルファを恐れているようだった。

 この会議室をミルファが制圧した瞬間だった。

「まぁ、屋敷のことは少し保留にして、街と領地の名前を変えようと思う、何か案はあるか」

「名前、勝手に変えていいのか」

「ああ、領主が変われば名前が変わることはよくある、もちろん国に申請する必要があるが、たいてい通る」

「なんていうかめちゃくちゃだな」

「うん」

「まぁ、気にしても仕方ない、それで、名前はどうする」

「そうね、ポルクとか」

「いや、それは俺の名前だろ」

 街の名前が自分の名前ってかなり恥ずかしいからやめてほしい。

「そう、いいと思うけどな」

「だったら、エリック様の名前をとったらどう、新領主であるポルク君のお兄さんだし、そもそも私たちってエリック様の死をきっかけに集まってわけだし」

 なんとそこで、ポルクの代案として兄さんの名前が挙がった。

「なるほど、エリックか、いいんじゃないか」

 なんとギウスも乗り気となった。

「兄さんの名前か、確かに、言われてみればこの街には兄さんを思ってくれている人も多いしな」

 俺は昨日広場でギウスが俺のことを紹介した時のことを思い出していた。

 街の人たちは、俺が兄さんの弟だと知ったときの喜びようはすごかった。

 改めて兄さんのすごさを知ったわけだが……

「それじゃ、決まりだな」

「ねぇ、ちょっといい」

 そこでミルファが聞いてきた。

「なんだミルファ……」

 俺がミルファに尋ねようとしたとき会議室の扉がノックされた。

「どうした」

 ギウスが代表して扉の外に声をかけた。

「失礼します、火急な知らせがあります」

「火急?」

「はっ、現在街の外に、1万をこえる軍勢が迫ってきております」

「い、1万、いったいどこから」

 俺たちは驚愕した、昨日の今日でいきなり国が軍でも送ってきたのかと思った。

 しかし、それは早計だった。

「どんな連中だ」

「はい、どうやら魔道一族のようです。街に入ってきたのは3人、御館様に話があるそうです」

「えっ、俺に、それに魔道一族ってまさか」

 俺には思い当たることが1つあった。

「そっか、もしかしたら、あの子、ねぇ、そのうちの1人って女の子だった」

 ミルファも俺と同じ答えにたどり着いたのかやってきた兵士にそう尋ねた。

「はい、確かに」

「知り合いか」

「多分、ほら屋敷の地下牢にとらわれていた子だと思う」

「ああ、お前らに頼んだあれか、そういえば報告でも魔道一族だったって話だったな」

「ああ、あの後、家に帰るって転移魔法で帰ったはずなんだけどな」

 俺としてはそのことが引っかかった。

 だがまあ、とりあえず会ってみることにする。


 俺たちが合う場所は、屋敷にある謁見の間だった。

「お連れしました」

 そういって俺たちが待つ謁見の間に兵士が連れてきたのは、予想通りメリナと髭を蓄えた中年でありながら引き締まった体をした男とメリナとよく似た顔をしていたがスタイルのいい女性だった。

 その姿からたぶんメリナの両親ではないかと思う。

「やはり、新しい領主はあなただったのですね。ポルクさん」

「えっと、メリナ、昨日の今日でどうしたんだ」

 俺はまず気なっていたことを尋ねた。

「はい、転移魔法で故郷に帰ったのですが、もぬけの殻で、探知魔法で探したら、この近くにいたので、また街の近くに転移して合流したです」

 えっと、どういうことだ。

 俺が首をかしげているとメリナの隣にいる父親らしい男が話し始めた。

「私は魔道一族の族長ウェブルこちらは妻でサリムという、娘が誘拐され一族総出で娘の救出をするためにこの地にやってきていたのだが」

「そこで、メリナが私どものもとに帰ってきたのです」

 なんと、メリナは魔道一族、族長の娘だった。

 しかもその娘を助けるためにめったに動かないという魔道一族総出で攻めてきたというのだ。もし、俺たちの領主殺害が1日でも遅ければこの街は魔道一族によって攻め滅ぼされていたという恐ろしい話だった。

「そ、それはまた、危機一髪だったわけだな」

「ああ、まったくだ」

 ギウスも額に脂汗をにじませている。

 それほど魔道一族の戦力はやばいようだ。

「うむ、そこで、メリナに尋ねたところ、領主はすでに殺され、救出されたのだというじゃないか」

その時のウェブルは嬉しそうにしながらも少し悔しそうだった。

たぶん自分の手でダルモアを倒したかったのかもしれない。

「これはぜひにもお礼を言わなければならないと思いまして、やってきたのですが、まさか、メリナを助けてくれた少年が新しい領主様とは思いませんでしたわ」

 そういってガハハと笑うウェブルとうふふと笑うサリムだった。

「そういうことです。改めてお礼を言うです」

 そんな両親をしり目にメリナがそういって頭を下げてきた。

 そして、それを見たウェブルとサリムも笑うのをやめて頭を下げてきた。

「いや、俺たちもついでみたいなものだったから」

「うん、そうよ、そんなに頭を下げなくてもいいですよ」

 ミルファもそういった。

「はい、でも、私は助かりました」

「そっか、まぁ、よかったよ」

「そこでだ、ポルクといったか」

「えっ、あっ、はい」

「領主を殺したということだが、何か理由が?」

「お父様!」

「あなた!」

 ウェブルが少し聞きづらいようなことを言ったとして、メリナとサリムが少し非難するような目でウェブルを見ていた。

「兄さんの仇です」

「ほう、兄上殿の」

「ええ、まぁ……」

 俺は少し迷ったがとくに話してはならないようなことではないと思い、兄さんのことや村のことを話した。

「……なるほど、つまり、最終的には国軍も敵に回すつもりか」

 確かに村のみんなを殺したのは国軍言われてみればその通りだった。

「それについてはまだ、考えている最中です」

「そうか、それもそうだな、……よし、いいだろう」

 何がいいんだろう、俺がそう思っているとウェブルはとんでもないことを言い出した。

「最終がなんにせよ、この地は今後周囲の領主から狙われることになろう」

 そう、実は会議でもそれを議題とする予定だった。

「間違いなくそうだろうな、ダルモアが死んだことで、周囲の領主からすればここを今せめてもダルモアの仇をとるという言い分もたつし何より物にできれば領土が増えるからな」

 そう、その分税収も増えるという仕組みだ。

「そうなると戦力も必要となろう、娘を助けてくれた礼だ、今後われらはポルク、おぬしに忠誠を誓おう」

 などと言い出したのだ。

「「「えっ!」」」

 俺とミルファ、ギウスがハモりながら驚愕した。

「それは、本当なのか」

 ギウスは声をひっくり返しそうな勢いで聞き返した。

 俺にとってもそれはありがたい、聞けば魔道一族の戦力は1人いるだけでも戦況が変わるといわれているそうだ、それが1万となれば一体どれだけの戦力かしれないからな。

 実はこれは俺たちの課題だった。俺とミルファはこの領地での最強戦力、しかし、俺たちが堂々と戦場に立つわけにもいかない、一応戦争となれば司令官となるからだ。

だからこそ、ギウスをはじめみんなが大喜びをしている。

「うむ、だが、条件もある」

「条件?」

「我が娘、メリナと婚姻を結ぶことだ。さすれば、おぬしはわれらの親類、誰もが認めよう」

 などと言い出した。

「「「えっ!」」」

 ここで俺とミルファとメリナが驚愕した。

 ていうか、メリナも初耳かよ。

「お父様?!」

「あなた、いきなり何を、メリナも驚いているでしょう」

 さすがにサリナも突然のことで驚いている。

 こっちも初耳かよ。

「どうだ、メリナ、まぁ、私としては、お前が嫌なら別の手を考えるが……」

 ウェブルは言ってからメリナを嫁に出すことをためらったのかそんなことを言い出した。

「……いえ、いやではありませんです」

「「「「えっ!」」」」

 さっきから驚いてばかりだった。

「えっと、その、俺にはミルファがいて」

 俺はミルファの様子をうかがいながらそう答えた。

「なに、そうか、それなら」

 ウェブルはなんだかほっとしていた。

 自分で言いだしてほっとするなら言うなよと突っ込みたい。

「あなた」

 サリムはかなり非難した目をウェブルに向けていた。

「ミルファさんが良ければ、私は2番目でも構いませんです」

「「「「「えっ!!!」」」」」

 今日一番の驚きだった。

「お、おい、メリナ?!」

 ウェブルは一番うろたえていた。

「メリナ、いいのそれで」

 サリナも少しうろたえながらそう娘に尋ねていた。

「はいです」

「えっと」

 俺は戸惑いながらミルファを横目で見た。

「メリナちゃんがそれでいいのなら、私もそれでいいわよ」

 今度はミルファまでそんなことを言い出した。

「ミルファ?」

「本当なら、よくはないけど、ポルクは領主だし、そうなると奥さんがいっぱいいてもおかしくないでしょ。ポルクの奥さんになるって決めたときにその覚悟はできているわよ。それに、メリナちゃんとなら、うまくやれそうな気がするしね」

「はい、私もそう思うです」

「そ、そうか」

 俺にはそれ以上何も言えなかった。

 こうして、兄さんの仇を取りに来た俺はなぜか領主となり、2人の嫁ができたのだった。

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