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真なる英雄  作者: 敦
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第03話 最悪な真実

 新たな決意を胸に俺とミルファが旅立って4日、ようやくムガリーグの門が見えてきた。

 道中は山賊に襲わたり魔物に襲われたりとしたが、どちらも俺とミルファの敵ではないためにまったく問題なく進んだ。

 そして、ムガリーグは周囲をぐるりと壁に囲まれた街だ。その理由はひとえに魔物や山賊などはもちろんほかの領主からの攻撃から街を守るためだ。

 というのは建前で実際には領主の屋敷を守るための物だったりする。

 まぁ、それで街の住人が守られているんだからどっちでもいいだろう。

「やっぱり、街は大きいわね」

「ああ、俺の故郷がどれだけ入るかわからないな」

「あははっ、私の故郷だったら畑を入れればたぶんここと同じくらいかも」

「すごいな、それ」

 ミルファの故郷の大きさに素直に感心した。

「まぁ、農村ならそのくらいだと思うわよ」

「確かにな、俺の故郷は狩猟だったからな」

 そんなのんきな会話をしていた。

 しかし、俺たちの目的はそんなのんきなものではなかった。

 場合によっては領主を殺害するという物騒なものだからだ。


 門の前までやってくると兵が2人立っていた。

 兵の1人が俺たちを一瞥してから言った。

「男は銅貨5枚、女は銅貨6枚だ」

 街へ入るには通行税がいる、これは兄さんからも聞いていたから用意していた。

 といっても途中で出会った山賊たちから巻き上げたものだけど……

「これで」

 俺たちは問題なく通行税を払った。


 門を潜り抜けた先は小さな村しか知らない俺たちには圧巻だった。

 大きな通りが街のど真ん中を突き抜けその左右に石でできた建物がずらりと並んでいる。

 俺たちはその通りを歩きながら田舎者みたいにあちこちをきょろきょろしてしまっていた。

「すごいね」

「ああ、兄さんから聞いていた以上だ」

 それからしばらく圧倒されていた。

「ねぇ、これからどうするの」

 ミルファがそう尋ねてきた。

「ああ、昔兄さんの同僚で親友だった人がたぶん、まだこの街にいると思うから探す」

「多分なの」

「あれから5年たっているからな、まぁ、この街が故郷だって言っていたしなぁ」

「大丈夫なの、っていうかあったこととかあるの」

「ああ、前に兄さんが一度村に連れてきたことがあったから、その時に会っているよ」

「一度だけなんだ」

「まぁな、でも、兄さんの名前を出せばすぐにわかるだろ、親友だったんだから」

「それもそうか」

 俺たちはまだのんびりとそんな会話をしていた。

「それで、その人どこにいるの」

「さぁ、わからない、でも、相当な酒好きだって話だったから、酒場に行けばいるかもしれない」

「あてにならないなぁ」

 それでも、ミルファは俺についてきた。

 ミルファにとってもそれしか手掛かりがないからでもあった。


 そして、人に聞きながらなんとか酒場にたどり着いた。

「いらっしゃいって、なんだガキか、ガキに出すもんはないぞ」

 酒場に入ると店主からいきなりそんなことを言われた。

「いや、ちょっと聞きたいことがあって」

「ああん、聞きたいことだと、だったらなんか注文しな」

 さっきは出すものはないといっておきながら今度は何かを注文しろって、なんだか矛盾なことを言ってきた。

「だったら、この金であんたにおごるよ」

 俺はそう言って懐から酒一杯分の金を出した。

「フンッ、まぁ、いいだろう、それで、何が聞きたい」

「ギウスって男を探している。酒好きだからここにきているんじゃないかと思ってね」

「ギウス? ああ、あいつか、奴ならそこで飲んだくれているぞ」

 そういって店主が指さしたところにはいくつもの酒瓶に囲まれた1人の酔っぱらいの男がいた。

「ねぇ、あれが、そうなの」

 さすがのミルファも少し顔をしかめた。

「……たぶん、なんか面影ある気がする」

 俺もさすがに自信がなかった。

 何せ俺が知るギウスは、兄さんほどではないにしろ結構かっこいい男で、身なりも整っていた。

 しかし、今俺たちの目の前にいるこの男は無精ひげを生やし、髪はぼさぼさで身なりもひどいものだった。

 でも、まぁ、ミルファに言った通り面影はあるので間違いはないと思う。

「ギウス」

 俺は男の前に行き声をかけた。

「あん、……エリック?」

 どれだけ酔っ払っているのか俺と兄さんを間違えるなんて……

 俺はあきれつつ訂正した。

「俺は兄さんじゃないよ」

 俺がそういうとギウスは目を見開いて俺をまじまじと見た。

「……まさか、お前、ポルク、か?」

「そうだよ、久しぶり、ギウス、ずいぶんと……」

 俺が様子が変わったけどどうしたんだと、聞こうとしたら突然ギウスが立ち上がり、いきなり俺に抱き着いてきた。

 男に抱き着かれる趣味はないんだけど……。

「ポルク、お前、生きて、生きてやがったか」

 ギウスは歓喜を上げた。

「まぁね。何とか」

「そうか、そうか」

 ギウスは今にも泣きだしそうだった。

「よし、こんなところで飲んだくれてる場合じゃねぇ、行くぞ、ついてこい」

 そういって酒場を出ようとしたが、出鼻をくじかれた。

「おい、ギウス、今日はつけを払っていけよ」

「おいおい、マスターこんなめでてぇ日になんてこと言いやがる」

「知るか、いいから払え」

「くそっ、なぁ、お前、金持っているか」

「……いくらかはあるけど」

 俺はあきれながらそういった。

「よし、貸してくれ」

 堂々と言い放った。

「どのくらい」

「銅貨300枚だから、大銅貨だと30枚ってところだな」

「はぁ!」

 お酒一杯で大体銅貨6枚、それが300枚っていったいどれだけ飲んでんだよ。

 でもまぁ、俺の懐は山賊から奪ったものだから特に傷まない、それに店主の様子からすると払うまで返してくれそうにもなかった。

「わかったよ、はい」

 俺は大銅貨で20枚と銅貨100枚を取り出しギウスに渡した。

「恩に着る」

 それからギウスは店主に俺から受け取った金額を渡してから店を出た。


「ポルク、聞くがお前、今まで何をしていたんだ」

 道を歩いているとふとギウスがそんなことを聞いてきた。

「何って、村の近くの洞くつで、ほら、村に来た時兄さんとも行っただろ、あそこ」

「……ああ、あそこか」

 ギウスは俺がここ5年生活していた洞くつを思い出していた。

「そう、あそこで剣を振っていた」

「ずっとか?」

「まぁ、大体は」

 俺がそう答えるとギウスは少しニヤッとしていた。

「そうか、ならいい」

「??」

 それ以降ギウスは何も言わなくなった。


 それからしばらく歩くとギウスが張ったのは今までとは明らかに違う、かなりぼろい街並みになった。

 これがうわさに聞くスラム街という奴だろう。

「ここだ」

 すると一軒の家の前までやってきた。

「どこなの、ここ」

 ミルファが尋ねた。

「俺の家だ」

「えっ、ギウスって、街の方に住んでいるんじゃ」

 俺の記憶にはそうある、兄さんの話にも何度か訪ねたと聞いていたからだ。

「ああ、確かにあの時までは、街に住んでいたけどな、俺も今では兵をやめたし、いろいろあってな、こっちに来たんだ。まぁ、入ってくれ」

 そういってギウスは扉を開けて中に入っていった。

「今帰ったぞ」

「あら、あなた、今日はずいぶんと早かったのね、あれ、お客さん?」

 中から出てきたのはなかなかにきれいな人だ、って確かこの人はギウスの奥さんで、名前は、シュリハさんだったような気がする。

「シュリハ、ポルクだ。覚えているだろ」

 俺の記憶はあっていたようだった。

「えっ、ポルクって、まさか、うそっ……」

 それを聞いたシュリハさんは手を口に当てて、目を見開きながら俺の顔をまじまじと見てきた。

 そんなにみられると照れるんだけど……

「ほ、本当に、ポルク君」

「久しぶりです」

 俺がそういうと今度はシュリハさんが抱き着いてきた。

「えっ」

 俺は驚いた、ギウスの時みたいにいやではないけど、人妻にされるという背徳感と、何より、抱きつかれたとき顔が思いっきりシュリハさんの胸に押し付けられた形となったわけで、今現在、息ができなくなっていた。

「シュリハ、そのぐらいにしておけ、ポルクが窒息するぞ」

 ここでギウスの助け舟が来た。

「えっ、あっ、ごめんなさい」

「い、いえ」

 ようやく話してくれ俺は深呼吸をした。

「しかし、ポルクお前よく無事だったな」

 ここでようやくギウスが尋ねてきた。

「ああ、まぁね……」

 俺はあの日のことを話した。

「なるほど、昼寝か、お前らしいな、だが、おかげで助かったか」

「ほんとに、よかった、ポルク君が無事で、でも、村の人たちは、みんな……」

「ああ」

 シュリハさんもギウスもミルファもみんな暗い顔をしていた。

「それより、ギウス、俺がここに来たのは、兄さんのことを聞きたいからなんだ」

 俺がそういうとギウスはすべてをわかっているという感じで言った。

「ああ、わかってる、エリックの真実を知りたいんだろ」

「うん、知っているのか」

「もちろんだ、だから俺は兵をやめたんだからな、あの野郎のもとでなんか働いていられない」

「一体、どんな」

 俺がそういうとギウスがちらりとミルファを見た。

 そういえばまだミルファを紹介していなかった。

「彼女はミルファ、ここに来る途中で知り合ったんだけど、ミルファは身内がつらい目に会ったそうだ」

 この説明だけで2人にはわかったようだ。

「なら、話してもいいのか」

「ああ、ミルファには兄さんのことも話してある」

「そうか、ならいいだろう、いいかポルク、俺が今から話すことは、覚悟がいる。いいな」

 ギウスがそんな風に言ってきた。

「わかった」

「よし、結論からいう、エリックは反乱なんざ企てていない。あれは領主のでっち上げだ」

 俺はそれを聞いて思考が停止した。

「エリックのやつは腕は立つし、顔はありえないほどの美形、性格もやさしいと来ていやがったからな、異常なほどモテていた。領主にはそれが気に食わなかったらしい、だから、エリックが反乱を起こそうとしているってでっち上げて、やつを捕らえ処刑、その後、お前ら村道ずれに、国に通報して討伐隊を送らせた。これが真実だ」

 えっと、なんだこれ、俺は体の内から何かどす黒いものがこみあげてくるような錯覚に襲われた。

「……ポルク、ポルク、落ち着いて、魔力」

 その時ミルファが俺の手を握り、声をかけてくれた。

 すると不思議とそのどす黒い何かが引っ込んでいくような感じがして、落ち着いてきた。

「わ、悪い、取り乱した」

 あたりを見ると俺の魔力が暴走しかけて部屋のあちこちに風が吹き荒れていた。

「気にするな、俺も最初知ったときは暴走しかけた」

「そうね、だから気にしなくてもいいわよ」

「あ、ああ」

 それにしてもまさか、兄さんの死にそんなくだらない理由があったなんて、領主への怒りが収まらない。

「ギウス、本当のことなのか」

 俺は何とか絞り出して聞いた。

「ああ、間違いない、俺が5年かけて入念に裏付けもとっている」

 俺は血が出るぐらいにこぶしを握り締めていた。

「それでポルク、これを聞いてお前はどうする。聞くまでもないが」

「仇をとる」

 俺は短くそう答えた。

「そうか、それで、そっちの嬢ちゃん、えっと、ミルファだったけ、どうする」

「私は、お姉ちゃんがひどい目にあって、その復讐をするために来たの、最初から領主を殺すつもりよ」

 ミルファはよどみなくそう答えた。

「ふふふっ、そうか、なら、俺たちも協力するぜ」

 ギウスがそういって俺たちに笑いかけた。

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