第11話 異世界の力
突如異世界からやってきたユイアがやってきてから3日、最初は元の世界に帰れないと知り、落ち込んでいたが、性格なのかすぐに立ち直りミルファやメリナとかなり仲が良くなっている。
それから、あの後ギウスにも紹介すると、さっそく怪我人がいるということでユイアに試しに回復魔法をかけてもらった。
すると、たいしたケガではなかったとはいえそのけがが一瞬にして治ったのは驚いた。
回復魔法は魔法が扱えるなら大体の人が使える。俺も使えるしミルファも使える。
しかし、普通は体力が少し回復するか、少し時間をかけてようやくけがも治るという弱いものだ。
魔道一族は1万もいるだけあって回復魔法を得意としているものが複数いるようで、彼らの魔法でもすぐに治るが、それでもユイアの方が早くに治ると、メリナがそういっていたことにはみんな驚いていた。
また、そんなユイアの治療を聞いた魔道一族の回復魔法師の提案で、とんでもない実験が行われた。
それは、以前魔物との戦闘で手首から先を食われた兵士がおり、その治療をしてみてはというものだった。
俺たちもいくら何でもなくなった体の一部を戻すなどできるわけがないと思っていた。
しかし、ユイアが魔法を唱えると、なんと、失われた手が生えてきたのだ。
その場にいた誰もが驚愕した。中には、神の奇跡だと、ユイアに跪いたものまでいた始末だった。
それを見たギウスの提案でユイアの魔法のことは隠匿することとなった。
あまりにも強すぎる魔法はある意味で危険だからだった。
とまぁ、そんなこともあったが、ユイアはすっかりここに馴染んできている。
そんなユイアだが、昨日からマーガレットに頼み俺たちと一緒に勉強をしている。
といっても、俺たちと違い、基本読み書きとなる。
ここで1つ驚いたことがあるのだが、俺たちはマーガレットから計算も学んでいるんだけど、この計算に関しては、マーガレットよりユイアの方がすさまじかった。
何せ、俺たちが時間をかけて行う計算を、ユイアはあっという間に計算してしまうからだ。
なんで、そんなに計算ができるのかと聞いたら、何でもユイアのいた世界ではすべての子供が幼いころから学校というところに通い、学ぶそうだ。
それを聞いたマーガレットは素晴らしいといって、この領地でもその学校を開くべきだと進言してきた。
まぁ、確かに、いいアイデアだと思うけど、現実的には難しい、俺も子供頃はそうだったように子供にも仕事がある。
それをしないと生活ができないからだが、それに教師もいないという事実があった。
でも、いずれ余裕ができたら考えてみようと思う。
そして、屋敷についてだけど、いまだ建設中ではあるがつい昨日俺の執務室ができた。
これまで、簡易の執務室でしてきた仕事をちゃんとした部屋でできるようになったのはうれしい限りだ。
といっても、俺の仕事は、ギウスたちから上がってくる書類(薄い木の皮)を読むことだ。
あとは、マーガレットから出された宿題をするという感じだ。
というわけで、今俺はそれをやっているというわけだ。
実に退屈な時間だ。
そんなことを考えていると、突然執務室の扉がノックされ開いた。
「ポルクいる」
入ってきたのは俺がさっきまで考えていたユイアだった。
「ユイアか、どうしたんだ」
「えっとね、ちょっと、ポルクにお願いがあるんだけど、いいかな」
なんだか、少し顔を赤らめながら、もじもじしながらそういってきた。
「お、おう、なんだ」
俺は何だが少しドキッとした。
「あたしね、その、もう、限界なの!」
急に顔を赤くしながらそんなことを言ってきた。
「えっ、な、なにが?」
かなりドキッとした。
「お風呂を作って!」
「はっ、オフロ、なんだ、それ」
俺はこれまでのどきどきを返せと言わんばかりに尋ねた。
「えっとね、お風呂っていうのは浴槽にお湯を張ってそこに入るの、すごく気持ちがいいんだから、この世界って、体をふくとか、香水でごまかしたり、せいぜい水浴びじゃない。そうじゃなくてお湯なの、それに毎日入って、リラックスできるし、ねぇ、いいでしょ」
なんだか、よくはわからないが、どうやら、浴槽というものに毎日、湯を張ってそこに入りたいようだ。
まぁ、この領地は近くに大きな川が流れているから水は豊富だし、森も多いから薪となる気も豊富だ、それぐらい問題ないだろう。
「わかった、よくわからんけど、メリナたちと相談してできそうならいいぞ」
屋敷を建てるのはメリナたち魔道一族だからな、後の細かい部分は彼らに任せるしかない。
「ほんと、やった、実はもうメリナちゃん達には相談していたんだ。あとはポルクの許可さえあれば作れるの」
どうやらすでに根回しは住んでいるようだ。
「早いな、それじゃ、許可を出すって伝えてくれ」
「うん、ありがと」
こうして、ユイアは満面の笑みで部屋から出て行った。
よくわからんけど、ユイアが俺の思っていた以上に馴染んでいるようでよかったようだ。
そんな、やり取りをしてから数日が立った。
あれからユイアとメリナ、ミルファまでも一丸となってあーでもないこーでもないと言い合っていた。
そして、俺は相変わらず執務室で仕事をしていた。
「ポルク、入るわよ」
そういってミルファが入ってきた。
「なんだ」
「ちょっと来てくれる」
「なんだよ、一体」
ミルファに連れられて部屋を出るとそこには、ミルファだけじゃなくメリナとユイアもいた。
そして、連れていかれた場所は、2つ並んだ入り口、扉のないその入り口にはなぜか上部に縦に切れ目の入った布がかかっていた。
俺が立っている入り口には赤色の布、右隣には青色の布がかかっていた。
「なんだ、これ」
「これは暖簾」
こういった場所の必需品だそうだ。
「ほら、入って」
そういって、俺は赤色の布を潜り抜けるようにと促され、中に入った。
入り口から入るとすぐに壁があり、左に曲がるような作りとなっている。
なので左に曲がり少し進むと、開けた場所に出た。
そこには、いくつもの棚が並んでいた。
俺はよくわからずあたりを見渡していた。
「ポルク、はいこれ」
そういってミルファに渡されたのは麻のわら細工でできた籠だった。
「なんだ、これ」
「これに、脱いだものを入れるの」
今度はユイアがそういってきたので、ユイアを見た瞬間驚愕した。
なんと、ユイアは突然服を脱ぎ始めたのだった。
え、な、なんだ、そういえばさっき、ユイアは脱いだものを入れるっていってな、えっ、どういうことだ。
俺は、パニックだ。
そんな俺をしり目になんとメリナとミルファまでも服を脱ぎ始めていた。
そして、ついに、裸となったのだ。
「お、おい、これは一体」
「ほら、ポルクも早く脱いで」
俺がパニックになっていると、ミルファがそういって俺の服を脱がしにかかってきたのだ。
「わ、わかった、自分で脱ぐって」
さすがに脱がされるのはどうかと思うので観念して自分で脱ぐことにした。
「そう、それじゃ、早くしてよね」
「ポルクさん、早くです」
「先行ってるね」
そういって3人とも早々に奥の扉に入っていった。
ちなみに3人は俺に裸を見られるのが恥ずかしくないのか、それとも俺が男だと忘れているのか、まったく体を隠していなかった。
「はぁ、なんなんだ、一体……ああ、もしかして」
俺はふとここであることを思い出した、数日前、ユイアが言っていたオフロという奴なのかもしれない、湯に入るから裸になったんだろう。
それから俺も観念して服を脱ぎ、なるべく前を隠しながら3人が入っていった扉を開けて中に入った。
中に入るとお湯を張っているからだろう湯気が立ち込めていた。
「ポルク、こっち、こっち」
俺が入るとミルファたちが手招きして呼んできた。
「ここに座って」
そういって指さしたのはミルファとメリナの間のスペースだった。
「あ、ああ」
俺も観念してそこに座った。
「お風呂のルールとして、まず浴槽に入る前に体を洗うっていうのがあるの」
そういって、ユイアが何やら白い塊を差し出してきた。
「なんだこれ」
「これは、石鹸っていうの、こうやって布とかにこすれば泡が出るでしょ、これで、汚れとかを浮かして落としてくれるの」
そういった説明をしてきた。
それにしても、この3人は全く体を隠していないがいいのだろうか、まぁ、ミルファとメリナは百歩譲っても俺の嫁なわけだからいいのかもしれないけど、ユイアは違うはずなんだけどな。
「どうしたの、ああ、もしかして、私たちと一緒に入っているのが不思議?」
俺が考えていると顔に出たんだろうかミルファが尋ねてきた。
「あ、ああ、いいのかと思って」
「まぁ、私たちだって恥ずかしいけど、でも、ポルクには、すでに裸見せてるし」
「はい、みられているです」
「そうだよね、今更? それに、私の国では混浴っていう文化もあるんだよね。こうやって男の子と女の子が同じお湯につかるの。そうすることで垣根を越えて仲良くもなれるしね」
ユイアはそんなことを言ってきた。
もしかしてユイアの国では当たり前のことなんだろうか。
「でも、私は誰でもいいってわけじゃないけど、さすがに知らない人とか嫌な人とはいっしょに入れないわよ。家族とかだったらいいけどね」
「そうなのか」
「そりゃぁ、そうでしょ」
「そうか」
これで何となくその話はそこで終わった。
それより、木なったことができたのも理由の1つだ。
「それにしても、これいい匂いだな……あれ、もしかして」
俺はふと気が付いた、そういえば最近ミルファたちからこれと同じ匂いがしたような気がする。
俺はてっきり、3人が同じ香水を使っているのかと思っていた。
「これいいでしょ、ユイアの国ではこのせっけんっていうので体を洗うんだって、これで洗うと、肌も潤うしすべすべになってすごくいい感じなんだ」
そういってミルファは自慢げに手を俺に差し出してきた。
「なるほどな、こんなものがあるのか」
「これもこの世界にはなかったから、ちょうど作り方も知っていたし、材料もあったからついでに作ったの」
そんな感じで体を洗い、俺は3人に促されるままに湯につかった。
確かに、その湯につかると気持ちよかった。なんだか、落ち着くような気がした。
「確かに、これはいいな」
「でしょ」
「うん、うん、ほんとに気持ちいい」
「リラックスできるです」
「ねぇ、これ、街の人たちにも広めようよ、どうかな」
とここでミルファからの提案だ。
「いいんじゃないか」
「いいですね」
「そうしようよ」
そんな感じで、まとまったことだが、その後、この街エリックで最もにぎわう場所となるのだった。
また、オフロを出てから聞いたのだが、通常は男湯と女湯で別れており、暖簾の赤が女湯で青が男湯だったようだ。
つまり、俺は女湯に連れていかれたということになる。
今日は、俺にオフロを教えるために女湯に入れたが、今後は男湯の方に行くようにと3人に言われたのだった。
それでも、たまにはいいということだったので、そのたまにを楽しみにするとしよう。




