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真なる英雄  作者: 敦
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第01話 旅立ち

「よっ、はぁあ、とりゃぁ」

 ズザァァ

 目の前の大木が一筋の剣によって倒れた。

 バラバラバラッ

 そして、今度は突然その大木がバラバラと分解して薪の大きさになる。

 命名『薪割り剣』俺が編み出した技だが、ネーミングセンスが俺にはないのでそこは勘弁してほしい。

 それで、この技は、一見するとただ剣を横なぎに1回振っただけのように見えるが、実際にその通りだ。それではなぜ、薪の形状になったのかというと、それは剣に風魔法をまとわせインパクトの瞬間、上方に向かって網目状に鋭い風を発生させ、切断しているというわけだ。

 ちなみにこれは名前のごとく薪を割るためだけのものだ。ていうか、この技人間とか魔物とか相手にするとかなりひどいことになる。

 一度試してみて、あれはきつかった。

 そんなことを思い出して顔を青ざめている俺の名はポルク、今いる場所から大体1ミルバ(約1.2㎞)離れた場所にあった小さな村に住んでいた。

 あったという過去形なのは簡単で今はその村はないからだ。

 今から5年前、悲劇が起きた。


 俺には年の離れた兄がいた。

 兄は剣の腕に優れ、何よりイケメンでやさしい。俺の自慢の兄で憧れであり、少し嫉妬していた存在だった。

 何せ、モテていたからな。

 兄は、その腕を買われ領主の私兵として雇われていた。

 しかし、5年前その兄が突然領主に反乱を企て、処刑されたと村に知らせが入ってきた。

 俺たちはそんなことを信じなかった。何せ、兄は超絶な平和主義者で反乱を起こそうとするなんてありえないないからだ。

 そして、その知らせから翌日に悲劇が起きた。

 それは、俺たちの村も兄の仲間として、俺たち家族がいるから問ことで反乱の罪で討伐というものだった。

 そう、俺の村は領主によって反乱の罪を着せられ滅ぼされた。

 両親はもちろん、村長も年寄りたちも、子供も、俺と仲の良かった幼馴染もすべて、領主が向けた討伐隊によって惨殺された。

 俺はその時、少し離れたところにある川に水を汲みに行き、昼寝をしていたことで助かったというわけだ。

 だから俺が村に戻った時は襲撃の後、村の中心に札がたてられていた。

 そこには、反乱を起こそうとした村を滅ぼしたというものが書かれていた。

 俺は絶望した、すぐに両親のもとに向かったが無残な姿となっており、ほかの村人たちもみんな、無残に殺されていたのだ。

 それは、本当に年寄りも、子供も、男も、女も、関係がなかった。

 今思い出しても、吐き気がするほどの光景だった。

 その後、みんなをその場に1人1人丁寧に埋葬した。だから、今の村は村人たちの墓場というわけだ。

 それから、村を後にして、現在いるこの洞穴に住みついた。


 住み着いてからしばらくは絶望から何もしたくなく、ただただ時間だけが過ぎていた。

 空腹などから俺はもうすぐ死ぬんだろうなと思うところまで行った。

 でも、その時ふと、これじゃ死ねないと思った。

 あの超絶平和主義の兄が反乱、そのせいで村を滅ぼされた。

 そんなありえないこと、もしかしたら何か陰謀めいたものがあるのではないかと、少し冷静になったことで考え始めていた。

 それを探るためにももし陰謀があってそいつに復讐をしなければいけなくなった時のために、強くなっておく必要がある。

 だから、あれから5年ひたすらに剣を磨き続けたというわけだ。

 そして、その結果、今ではかつての兄よりも数段強くなっていた。

「そろそろ、いいかもな」

 俺は薪を集めながらそうつぶやいた。

 俺の目的はあくまで兄の死、および村が討伐された真相を知ること、そして、もし俺の考え通り、陰謀によるものだったらそいつに復讐を果たす。

 俺のかでは領主が一番の容疑者だが、その周辺の人間の可能性も捨てきれない。

 何せ、ここの領主は悪い噂しかない、でも、兄は剣の腕は確かだけど領主などが陰謀にかける必要とメリットがある人物だとは思えない、だから、俺の中では容疑者というわけだ。

 とにかく、そろそろその調査に兄が私兵として働いていた領主の街、ムガリーグに行こうと思う。


 あれから2週間、街へ行くための食糧などの準備をしていた。

 そして、ついに旅発つときがやってきた。

「確か街まで10日はかかるっていっていたからな。まぁ、一応それなりの準備はしたけど、後は、いったん村によってから行くか」

 こうして、俺は故郷の村に立ち寄り街まで行くことにした。


 故郷の村についてまずやることはしばらく放っていたみんなの墓の掃除などだ。

「母さん、父さん、行ってくる」

 俺は最後に両親の墓を掃除してからそういった。

 そして、実家の納屋の床下を掘り起こして、ひと振りの剣を取り出した。

 これは、昔剣士として名をはせた兄の師匠であり(兄から学んだ俺にとっては師匠の師匠に当たる)事件から3年前に亡くなっていたブリックが、現役時代に愛用し弟子の中で一番優秀だった兄に受け継がれた剣。しかし、超絶平和主義の兄は大切なものだとここに埋めてしまっていた。

「兄さん、これ、俺がもらっていくよ」

 俺がそうつぶやくとなんだか兄が少し悲しそうな顔をしているような気がした。

「大丈夫だよ、あれから5年、俺も冷静になった街に行ったら真実をまず探す。それでも復讐が必要ならするけどね。それじゃ、行ってくる」

 俺はそう言って剣を腰に差して、今まで使っていた剣を埋めてから出かけることにした。


 俺が旅立って5日、道中ではいくらかの魔物や山賊に襲われたが、問題なく進むことができている。俺もかなり強くなったと思う。

 そんなことを考えていると、遠くから剣戟が聞こえてきた。

「剣戟? 数は……多いな、1対多数ってとこか。それにしてもこの1のほう、かなりの使い手だな」

 俺は剣戟の音だけでそのレベルを推し量ることができた。

 それによると多数はひどい、たぶん山賊レベル、しかし、1の方はというと、俺には劣るけど十分名人レベルと見た。

「とりあえず道中だし見に行ってみるか」

 そう思い俺は荷物を抱えて素早く移動した。


 そして、現場に着いた俺は驚愕した。

 多数は山賊で間違いない、しかし、1のほうが問題だ。なぜならそれは俺と同じくらいの少女だった。しかも、絶世としか言いようがない美少女だったのだ。

 女かよ、すげぇな。

 俺はついつい女に見とれていた。

 俺にそんな余裕があるのも、その少女の剣技はすさまじいものだった。

 いくら山賊が多いといってもどうあってもかなう相手ではない。

 多分放っておいても数分後には少女の勝利という形で片が付くだろう。

 でも、だからといって放置はできないと思った。

 あれだけの剣技でも疲れはある、あの人数を相手にしてはかなり疲弊する。そんなときに新たな敵でも出た日には最悪だ。

 だから、助太刀することにした。


 俺は腰の剣を抜き放ちつつ走り近くにいた山賊を斬りつけた。

「うぎゃぁ」

 短い悲鳴とともにその山賊は絶命した。

 その声に気が付いたほかの山賊たちは俺にも剣を向けてきた。

「数も多いし手伝うよ」

 そういって少女の元まで悠然と歩いて行った。

「誰か知らないけど、助かるわ。いい加減しつこかったから」

 それからは早かった今までは周囲を囲まれてあちこちを警戒しなければいけなかったのを、2人となったことで見える範囲に気を付けていればいいのだから当然だろう。

 そして、あっという間に山賊を1人残らず倒したのだった。

「ふぅ、やっと終わった……ありがとう、助かったわ」

 そういって少女は素直に礼を言ってきた。

 余計なお世話だと文句を言われるかと思っていたのに……

「ああ、いいよ、それに、俺が手伝わなくて自分で片付けられただろう」

「へぇ、わかるんだ。それに珍しいね」

「何がだ?」

「普通、女が剣を持っていても後ろに下がっていろとかいうのに」

「確かに珍しいからね。でも、腕は間違いないだろう」

「まぁね」

 少女はなんだかうれしそうにそういった。

「ああ、俺はポルク」

「私は、ミルファよ」

 こうして俺とミルファは出会った。

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