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殺戮ボーイと悟り系ガール  作者: Dora=ドラ=どーら
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8月15日 夜



――――走る。走る。走る。




"武士道とは、死ぬことと見つけたり"という言葉を、誰しも1度は聞いたことがあるはずだ。




――――逃げる。逃げる。ためらわず、暗い脇道に入る。




私はその言葉を聞いた時、何か頭の中にひらめくものがあった。

今まで抱えてきた悩みを、思いを、考察を、すべてきれいさっぱり解決してくれる。

そんな、あいまいなものであったけれど。




――――次の道を曲がる。相手の足音が聞こえる。確かに、確かに、私を追いかけている。




それでも、私にとっては、一種の"救い"であったのだ。

なのに、




――――走りながらも、ふと、後ろを少しだけ振り返る。




実際の意味は全然違った。

"そんな"意味ではなく、『切迫した場面において死ぬ確率が高い方を選べ』という、なんとも言えない意味であった。

言いたいことは、勿論わかる。

でも、当時の私は、納得がいかなかった。

これを書いた人は故人であって、そんな怒りは理不尽だとわかっていても、

まるで、私の"これ"が、否定されたように感じた。



―――異様に見開いた目、禍々しく歪んでいる口、体に付着している血。そして手に持つ刃物。




私の悩みは、間違っているのだろうか?

私の思いは、間違っているのだろうか?

私の考察は、間違っているのだろうか?

否、間違っているわけがない。

例え万人が間違っていると言っても、私は間違っていない。

間違っていてたまるものか。




―――まさしく、それは殺人鬼の形相。




考えれば考えるほど、世界は灰色になった。

それは、おいしかったご飯が美味しくなくなったほどに。

それは、たのしかった学校が、重荷になるほどに。

それは、自らの体から出たはずの血でさえ、赤く見えないほどに。





―――嗚呼、私は、もしあれに追いつかれれば、殺されるんだ。




そこからはもう、階段を転げ落ちるように、良くも悪くも簡単だった。

私の価値感は大きく変わった。口調も変わった。態度も変わった。




―――息が切れる。手足が震える。頭が空っぽになってゆく。全身の力が抜けていくような、そんな感覚。




そして、今の私がいる。


暗い路地裏のような場所。


じめじめしていて、明るければコケや雑草が道角から生えていそう。


目の前には、だらりと伸ばした腕の先に、血の付いた包丁を持つ男。


私は今、その男に馬乗りにされている。

死の恐怖。

震える

手はもはやでくの坊のように役に立たない。

震える

男の体重は重く、私では押しのけることができない。

震える

男の呼吸の音が、静かな路地裏に響く。

震える

男が、血走った眼を見開き、向ける。

震える

次に、歪んだ口をさらに大きく、禍々しく歪める。

震える

そして、その手を

震える

血の付いたそれを

震える

頭の高さまで

震える

ゆっくりと、

震える

ただゆっくりと、

震える

まるで大事な儀式かのように

震える

持ち上げて

震える

私に―――――――

震え.....






何に震えるの?

私は私に問いかける。



答えは簡単だ。

歓喜に。



































――――――――――――――――――――金属音。


それは、静かに、路地裏に響いた。


数瞬後、その静寂を、苦しみもがく声が破る。






そして、しばらくて、その声は聞こえなくなり、

路地裏の、血だまりの上に、一人の男と一人の女が生きていた。

毎日更新を目指します。

序盤はくっそシリアスですが後でちゃんと学校ものに戻るのでご安心ください。

もしよければポイント評価や感想お願いします。

(期待してます!!等でも筆者の励みになります)

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