本来ないはずの自分
第八話 きみは何者。
第九話 隔世と人
…すまない、君は何を言っているんだ?
えっ、ちょっと待てって、やっと話してくれたと思ったら今度は何をすればいいって…。
うん、だめだ。わかんないや。
「あの、イリスさん?今、なんと?」
「共に戦いましょう!っと、何か違いましたか?」
ああ、なんと言うことだろうか。
これ、間違いなく真っ直ぐだ。
イリスは眼をもうそれはそれはまばゆいばかりにキラキラっと、輝かせていた。
確信に満ちた、そういう目をしていた。
「いや、あの俺はその…あの何でしたっけ?
「「神待告人」」?ですか?」
「はい、そうですね。コンタクフェッションでおけです!」
「それが、俺に関係あるの?」
「大有り、ですよ!何を言っているのですか?」
「いや、あはは。」
なんか照れ臭くなってきたので笑ってしまった。
ダメだ、全然わからない。
「まあ、混乱するのも無理はないですよね。わかりました、教えてあげます。つまり、あなたは私たちにとって重要な人物かもしれません。
だから、私はあなたと共に戦わなければいけません!困っている人がいる。飢えている人がいる。殺すべき人がいる。そして、人を助けたいと願う人がいる。それを助けるのがあなたの運命なのです!って、トール様に言わなかったですか?」
「へっ、いや…そんなこと一言も。」
「なっ、それじゃあ?我が雷に導かれし者よ、汝力を欲するか?ならば、我が力を授け世界を討ち滅ぼすとせず!なんて、言われなかったですか?」
「いやいやいや…。」
そんな、カッコいいこと何一つ言わなかったぞ。
アイテムくれたけど…。
「っと、とりあえず今日はこの辺にして休まないか?もう暗くなってきたというか真っ暗だし、それに、その…疲れたし、ね?」
「はい、そうですね。でも、野宿ですか。気が進みませんね。」
っと、イリスは年相応の女の子と同じ感想を述べた。
まあ、焼かれそうになる前に何かあったとは思うけどとりあえずそこは触らない方が良さそうだと思う。
「ちょっと、待ってて…。」
そうして、俺は右人差し指で左手を撫でた。
瞬間、世界は止まった。
俺を残して。
ストレージから使えそうな道具と彼女の為に何かしら服か布でもいいから肌を覆うことができものがないかを探した。
しかし、そう簡単には見つかりそうもない。
なんせ、俺は何を貰ったのかを完全に把握していないからだ。
「そういえば、このメニューみたいな横棒は…あれ?あっ、なんだこういうところも気を配ってくれてのか。」
そう言いながら、直人はボタンを押した。
すると、彼の一つだけのストレージがいくつかのボックスにジャンルごとに別れた。
武器の種類はもちろん、男性用、女性用、飲料、食料に至るまで細分化されていた。
そして、どうやらお気に入りも登録できるようだ。
また、サーチ機能までついている。
「はは、これはいいや。」っと、作業を終えてイリスに、声をかけようとしたが…。
「…止まってる。」
彼女はまるで生きたまま凍っているようだった。
というよりも、俺が止めているのだろう。
このままにしておくのも楽しそうではあるが、戻した方がいい気もする。
あいにく、テントも張り終えたのであとは寝るだけだ。
「それじゃあ、よっと!」
右人差し指で左手を撫でた。
そして、時は俺と同調し動き出した。
「…あれ?直人さん、何でそこに?というか、その手に持っているものというか何でテントがあるんですか?」
「いやー、まああれだよ。転生者特典!」
うん、まあ変に誤魔化すよりは真実を語って信頼を得た方がいいよね。
「やっぱり、あなたじゃないですかー!本当に、良かったです!」
「ああ、そうなのかも。とりあえずその格好はその俺の目に良くないといか青少年というか健全なというかとりあえず目のやり場に困るからこれでも着てくれ!」
そう俺はひたすらあわてふためきながら彼女に白銀の鎧を渡した。
渡す前にステータスを確認したが結構良さげだったが、女性用の為というか装備すること一生無いだろうって、感じでとりあえず取り出した。
「これは…いい鎧ですね。それに、軽い。私が着ていた男性用の甲冑よりも軽いですよ、これ!本当にいいんですね!返しませんよ!…これは。」
「あの、どうかされました?」
イリスは顔を真っ赤にしてこちらを訝しげに覗いてきた。
そして、手には白いのやわらかそうな布切れが握られていて…。
「…?」
なにそれ、知らない。
「こっ、これは…何ですか?そういうことなんですよね?はあっ、まったく男性いえ殿方としてこのようなお召し物を持っているということは。あなた、もしかして私を助けに来る前に娼館に行ってましたね!知ってますよ!お金を払えばなんとかなるんですよね?」
「いや、違います!そんなことは、決してしていません!」
「ムーッ。」
…娼館ですか。確かに行ってみたいと思いはするけど…いや、ここは行くべきだろ!
待て待てそうじゃない!
落ち着けよ、これも多分トールがやったんじゃないのか?
第一、これはトールから貰った物だ。
となると、他の物にも何かしらあるだろう。
今回が、まだかわいい物なのかもしれないな。
「聞いてますかー!」
「ああ、今日はもう遅いから一緒にテントで休もう。」
「なっ、馬鹿なことはおっしゃらないでください。」
っと、言いながらも臆すことなく彼女はテントの中に消えた。
そして、俺は身体をなぞり、アイテムを確認することにした。