再配布までの憂鬱
第24話 いつかあなたと
再び世界は動き始める。
「もういいよ。」
「そうですか?何をしていたんですか?」
「いや、何でもないよ。」
目の前の彼女は、直人が何をしていたのかを知らない。
「さて、それであとどのくらいですか?」
「日付が変わるくらいかな?」
「…なんですか、それ?」
「いや~、まあえっと…その…お告げかな?」
「…もう、わかりましたよ!」
(ごまかすのはもう、やめた方がいいかもしれないな。)
目の前の彼女は拗ねてしまった。
「あの?」
「えっ、はい。」
しばらくしてイリスに話しかけられた。
俺は、ここまで持ってきた火炎瓶が割れていたり、燃えたりしていないか確認をしている最中だった。
「その…作戦ぐらい教えてもらわないと…。」
「ああ、そうだったね。作戦というよりはほとんど賭けなんだ。」
「…はあ…そんなことだと思いましたよ。」
「…すまない。だけど、いいとは思うんだよ。」
「まあ、その作戦に頼ったのは私ですからね。聞かせてください。」
「ああ、まずは手前の壁を壊してあの船に乗り込む。」
「なっ、そんなことしたら…。」
「問題はそこじゃないんだよ。船の煙突と砲にあるものを投げ入れなくてはいけないんだよ。そこで、なにかミスをすれば敵にじゃなくて自分たちに殺される。」
「…一体何をするつもりですか?」
「あとは、役割なんだけど…。1人は船で暴れる、もう一人は川を渡るための小舟をあの船から奪ってもう一人を回収して川を渡る。」
「…難しいですね。」
「ああ、ようは壁をここのと向こうの二つ壊してついでに船も破壊する。問題は時間がどれだけあるかなんだけど…それと、あの船が何で動いているのかとか、甲板は何製なのかなんだけど…わかる?」
「はい、ちょっとお待ちを「「いつかのあなた(アーシブヴィリオネス)」」…わかりました、ダヴィードさんの記憶によるとあの船は甲鉄艦ティダン型かと思われます。甲板はどうやら木製ですが…魔法によって強化されているみたいです。」
「そうか、なら良かった…ところで、その魔法は?」
「はい、人の記憶を司る魔法の一つで私の国にある書庫に記載されている人に関する情報を得る魔法です。」
「…なんか、怖いな。」
「はい、この魔法を使うためにはその人の人生を記録した魔導書を全て読み、そしてその記憶を追体験する必要があります。」
「そうなんだ、でも助かったよ。これであとは、待つだけだ。」
それから何時間経ったのだろうか。
定期的にストレージを開いてはただ待つというもの繰り返しだった。
俺がまた、イリスに隠れてストレージを開くと彼からの支援物資があった。
中を確認してみるとそこには頼んでいたものがちゃんと入っていた。
導火線と爆薬…わずかではあるが充分だった。
「イリス、イリスさん!」
「う~ん、なんですか直人さん?」
「準備ができました。」
「…本当ですか?」
「はい。」
「わかりました、行きましょう。」




