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ゲストが異世界にログインされました。  作者: 「葵流星」
君と訪れた村
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部屋に主人公(男)を連れ込むな!

第16話「借り物と貰い物」

第17話「部屋に主人公(男)を連れ込むな!」

エルフなのだろうか?

本物のというか、見るのは言うまでもなく初めてだ。

しかし、これが本当によく描かれるそれなのかはよくわからない。

なんせ、変色しているしどう見たって黒髪のようにも混じり毛のようにも見えるというか、焼けているせいでその判断はどうだろうか。

リンの燃えた匂い、いや、香りはまだいい方かな。

燻製みたいな匂いが辺りには漂っていた。


「…あのそれは。」

「うん、そうだよね。イリスさん?」

「はい、何でしょうか?」

「ここがさっき言ってたエルフの村…でいいんだっけ?」

「…そうです。いえ、実を言うとそんな大層なものではないんですよ。」

「…どういうこと?」

「ええ、少し長くなりますがお話しいたします。」


そう言うと、イリスは息を吸い心を落ち着かせるように息を吐いた。

何拍かあと、彼女の目は遠くを見据えるような色を浮かべ、それから俺の耳に彼女の音が聞こえ始めた。


「今から、少し前エルフ、いえ、ほとんどの人類の亜種は敵対していました。

その中でも、エルフは私たち人類に比べ遥かに進んだ医学、医術を持ちそれを保持するための優れた知能さえも持っていました。

エルフと人類では、人類の勝機は薄いと言われていましたが人類は勝利を納めることができた、いえ、違います。

壁を作ることで、エルフという種を外部と孤立させるという手段を取り他の亜人達を先に処分するという方針に戦術を変化させました。

そして、他の亜種人類の培った技術を用いてエルフを断種させてきました。

けど、まだそれも終わらないまま正教会と革命教会の戦争が始まってしまい結果としてまだ各地にエルフがいるということです。」


「…そうなんだ、でもそれじゃあ彼ら、正教会がここにいるエルフを殺す理由は特にないわけで。」


「いえ、そういうわけでは。」


「それじゃあ!一体何のために彼は殺したりなんか!」


「だから、…その…おそらくは…。」


「………?」


「エルフは彼らにとって敵でもありますから、正教会は私達を探すついでにエルフを殺した…そう考えることができますよね?」


(…そんな。)


イリスの口からその言葉が零れ出した。


(ついでに、…ついでに!俺とイリスを探していただけなのに!

そのためでも何でもないのに!彼らは殺されたのか?)


信じたくない、信じられない、きっと他に理由が!

けど、それが何になる。現に死体は転がっているわけで…。


いや、考えろ。少なからず、俺とイリスは味方の方へは向かっているはず。

だから、向こう側からしたらここに来て騒ぎを起こすことに何もメリットは無い。


「………。」


薄気味悪い、そんな視線を感じた。

誰かいるのだろうか?

いや、それは現実逃避だろうな。


彼らは今、ここにいる。


「直人さん、急ぎましょう。また、戻ってきます。どちらにせよ、ここに居ると面倒が起こります。ここで、騒ぎが起きたとなれば別のエルフ達がこの場所にやってくるでしょう。そこで、私たちが発見されれば正教会とエルフは結束し結果として私たちの前に立ち塞がります。それこそ、正教会側の目論見通りです。

そして、エルフ達は利用された後、処分されます。」


「…処分…どういうことだよ、それ!

結局、ここにいるエルフは殺されたし、まだ殺されるのか?」


「落ち着いてください、少なくともここにいるエルフには人権が存在しません。

そのため、例え生き残ったとしても今の社会では救えません。

ですが、可能性はあります。」


「…可能性?」


「はい、共存できる…いえ、人類との混血。そういった、可能性もあるんです。」


「…つまり、人類になる。ってこと?」


「はい、そうです。ここにいるのは人類との共存を拒んで独立しているエルフなんですよ。そのため、こんな国境沿いにいるんですよ!だから、彼らには国も無いですし国籍もありません、それどころか麻薬の販売や、子供を強奪したり売りさばいたり、娼館の労働力にしたりしているんですよ!」


「…でも、そうだとしても。」


助けたい…そんな気持ちが俺にはあった。


「直人さん、早くしないと…。」


少なくともここにいるエルフは犯罪者で間違えない、ここで焼かれて死んでいるのはそういう連中だ。


「…イリス、少し待ってくれ。残っている部屋から何か使えそうな物がないか探してここから逃げよう。」


「直人さん…はい!急ぎましょう!」


そうして、俺はエルフの住んでいた一軒家に侵入した。

もう迷うことはなかった。

そう、楔の一つが取れたからだ。


だって、罪人から物を奪っても罪にはならないから。


そう、自分に言い聞かせて俺は部屋を漁っていくのだった。


異世界と言えども家のつくりは俺が前居た世界とは何も変わらない…そんな気がした。


少し雑ではあるが木造の家には木々特有の匂いがうっすらと香っていた。


それこそ、まるで家族を迎え入れるように。


そして、俺を嫌悪するように匂いを放っていた。


俺はその家に入るや否やすぐさま使えそうな物を探した。


今、俺が必要な物は服とタオルだ。


食料と水はどうでもいいというか持っているから大丈夫だ。


まあ、あったのは水筒くらいだったのが。


家の中には暖炉もなければ水道設備も見当たらない。


そして、井戸もまだ見つけてないことから考えるにこの村?はかなり規模が大きかったことがわかる。


ようするに、村人の行動範囲が大きいということだ。


おそらく、雨水を貯める樽が家の横にあるとは思う。


しかし、その水をエルフがどう利用していたかは定かではない。


エルフが水に含まれる細菌やバクテリア、寄生虫に対してどの程度の知識があり、抵抗力があるのかわからないからだ。




家は、外からの光によって照らされていて明るくはあるが少し薄暗い。


だが、何かを探すのに困ることはない。


そのくらいの些細な問題だった。


リビングルームに入ると、そこには投げ捨てられた編み棒と糸と、踏みつけられたシャツが落ちていた。


生活感のあるその光景はどこかおぞましさを感じさせるものだった。


机の上には、畳まれた服と下着とタオルが何枚か置いてあった。




俺は、着ていた黒色のコートを捨てて、机の上にある服に着替えることにした。


服は意外にも丁度いいサイズで小さくて苦しいと言う事は無かった。


そんな風にして、タオル以外ほとんど見つけていなかった俺の所にイリスが探索を終えて戻ってこちらにやって来た。




「直人さん、何か見つかり…ましたか?…何で着替えているんですか?」




ガチャという音と共にイリスが何かを持ってやって来た。


そして、俺の姿を見るなりげんなりとした顔を浮かべた。




「あの…ですねえ、私が頑張って使えそうな物は無いか探している間あなたは着替えをしているって、どういうことですか?


明らかに、それ女性が真っ先にやりそうなことですよねえ?


何であなたがやっているんですか?」




イリスは、俺を非難するような視線を向けてきた。


まあ、俺が悪いだけなんだけどね。




「はあ…まったく、おこですよ!おこ!」


「いや、すまない少し魔が差して…。」


「本当に信じられません!私だって、こんな服装嫌なんですよ!


早くシャワー浴びたり、温かい湯水に使ったりしたいんですから!」


「それは、わかるけど…あっ、でも一つだけいいことがあるよ。」


「本当ですか?」


「ああ。」


「…ジー。本当ですかあ?」


「本当だって、その証拠がここにはあるじゃないか!」




そして、俺はおもむろに衣類の山を指さした。


それは、俺が着替える際に下着を見つけた所だ。




「ただ、服の山ですよね?」っと、イリスはつまらなさそうに言った。




「だから、ほら…ここ!」


「なんですか?」


「ここだって!」


「…何も変わりはないように思えますが…。」


「いや、だからさあ…。」


「だから、なんですか!」




(うぅ…思春期特有のこの何とも言えない恥かしい気持ちが…。


頼む、気づいてくれよ!この山の中に女性用の下着、つまり、パンツがあるんだよ!


しかも、これ女児用と女性用の物の二つがある。


さらに言えば、女性用はサイズが違う物があるから…その…そういうことなの!)




「ああ、もう…言うよ。だけどその…引かないでよね?」


俺は、もう諦めることにした。物凄く恥ずかしくつらい。


そして、おそらく蔑まれられる。


…なんで転生したらこんなことになるのやら。


もしイリスが小学校三年生くらいの女の子だったら、下着をタオルに包んで渡して向こうで着替えて着なさいって、言えば万事解決のなのだが…。


あっ、そうだ!包んで渡せば…いや、服の山に手を突っ込んで下着を鷲掴みタオルにくるむ時点でやべー奴だろ!


落ち着けよ、たかが布切れだ!


女性用下着って、言えば恥ずかしくない!




「あのさ、イリス…。」


「どうしたのよ、さっきから情緒不安定?大丈夫、何か嫌な物見た?」


「いや、そうじゃなくてさ…。」


「それじゃあ、どうしたの?」


「そのな、女性用の下着を見つけてたんだ。それで…何かというとサイズが三つくらいあるからもしかしたらこの家に香水とか、化粧品があるんじゃないかなぁ~っと。」




その瞬間、俺の頬が思いっきり叩かれたのは言うまでもない。




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