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しあわせの手紙 「この世界の片隅に」

作者: コタロー

これは、「この世界の片隅に」という漫画の最終回の「しあわせの手紙」というものです。

自分はとても好きなので見てもらえると嬉しいです。

突然失礼致します


此れは不幸の手紙ではありません


だってほら

真冬と云ふのに

なまあたたかい

風が吹いている


時をり海の匂ひも

運んで来る


道では何かの破片が

きらきら笑ふ


貴方の背を撫づる

太陽のてのひら


貴方を抱く

海苔の宵闇


留まっては

飛び去る正義


どこにでも宿る愛


そして


いつでも

用意さるる

貴方の居場所


ごめんなさい


いま此れを読んだ

貴方は死にます


すずめのおしゃべりを

聞きそびれ


たんぽぽの

綿毛を

浴びそびれ


雲間のつくる

日だまりに

入りそびれ


隣りに眠る人の夢の

中すら知りそびれ


家の前の道すらすべては

踏みそびれながら


ものすごい速さで


次々に記憶となって

ゆくきらめく日々を


貴方は

どうする事も出来ないで


少しずつ


少しずつ小さくなり


だんだんに動かなくなり


歯は欠け


目はうすく


耳は遠く


なのに其れを

しあはせだと

微笑まれながら


皆が云ふのだから

さうなのかも知れない


或いは単にヒト事だから

かも知れないな


貴方などこの世界の

ほんの切れっ端に

すぎないのだから


しかもその貴方すら


懐かしい切れ切れの誰かや何かの

寄せ集めにすぎないのだから


どこにでも宿る愛


変はりゆくこの世界の


あちこちに宿る

切れ切れの

わたしの愛


ほらご覧


いま其れも

貴方の

一部になる


例へばこんな風に


今わたしに

出来るのは

このくらいだ


もう

こんな時

爪を立てて


誰の背中も掻いてやれないが


時々はかうして

思ひ出してお呉れ


草々


「この世界の片隅に」

最終回 「しあわせの手紙」

21年1月

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