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屍が蠢くこの世界で俺は生き抜く  作者: セロ
知性ゾンビ
13/39

崩された日常

 彼女はいつもより少し早く目が覚めた。

 理由はわからない。ただこんな事は度々あるからそんなに気にならない、そう思っていた。

 だが、彼女が朝早く起きる日は決まって何かが起こる日だ。

 事実、部屋の窓から見えた景色は異常だった。


「えっ……」


 思わず声が出てしまうほどだった。窓からの景色は弱々しく光るサイレンがある消防車や、

 横転した何台もの車。

 そして何より、不気味な動きをする人々だった。


 その人々はいつもの様に動く人を見つけては噛みつき、捕食するかの様な

 有様だった。

 挙げ句の果てには捕食された人の中にも起き上がり動き出す者もいた。


 彼女は直感で感じた。あの人々は生きてはいないが生きているかのような……

 そんな気がしたのだ。


 ふと下の階から音が聞こえた。だが、その音は普段の日常からは想像もできないような音だった。

 ぐちゃぐちゃとその音は鳴る。できれば聞いていたくはない。

 だが、その音の正体は確かめに行かなくてはならない。

 彼女は着替え、恐る恐る下に降りていった。


 音がだんだんと大きくなってくる。彼女は息を飲んだ。

 視界に映ったのは母の姿だ。彼女は声をかける。


「お、お母様?どうしたんですか?」


 彼女の声に反応したのか、母は振り返り私をみる。

 人間のものとは思えない声を出しながら。


「ううううああああうう……」


「お、お母様!?」


 彼女は思った。母は既に人間ではないと。

 その証拠に母の後ろには無惨な姿の父がいたからだ。


「うううああああ!!!!」


「きゃあ!何か、なにかないの!?」


 咄嗟に何か物を探す。運良く近くの机に包丁が置いてあった。

 彼女はそれを手に取り、構える。手は震えていた。


「ううあうああああ!!!!」


「ご、ごめんなさいお母様!私はあなたを今から……切ります!」


 彼女は母にそう言う。もっとも、聞こえてはいないとは思うのだが。

 母はゆっくりと近づいてくる。恐らくは彼女を捕食したいのだろう。


 彼女は勇気を振り絞り、母に向かっていった。母の手が彼女に伸びていく。

 私はそれを回避し、後ろに回り込んんだ。


「うりゃああああ!!」


 ドスッ


 鈍い音と共に母の頭に包丁が刺さった。

 母はその場で崩れ去った。彼女は思った。自分は母を殺してしまったのではないか?と。


 だがすぐに彼女はそうは思わなくなった。私はこうする事で母を救ったのではないか?と。

 そう思うことで自分を正当化した。


 さて、外は依然として死した人々が徘徊している。

 彼女は考える。これからどうするべきか?


 だが、その思考に一つの疑問が浮かぶ。何故ドアが開いているのか?

 今気づいたのだが、家のドアが開いているのだ。

 いつ開いたのかはわからないが、ドアが開いているということは……


「ここも安全では……」


 気づいた時は既に遅かった。瞬間、彼女の肩に激痛が走る。


「うおああああ!!!!」


「っああ!!やっぱりまだ……」


 彼女はすかさず母の頭から包丁を抜き、後ろにいたやつの頭をめがけて突きさす。


「はあああっ!!」


 そいつもまた、崩れ去った。

 まさか既に家に入られているとは思わなかった。彼女は自分の不注意を責めた。


 だが、彼女は直後に眩暈を感じた。そしてすぐにその場に倒れた。

 恐らくは……さっきの肩への傷が原因だろう。


 彼女はもう自分は助からないと思った。

 薄れゆく意識の中で走馬灯が頭の中を駆け巡る。


 今思えば色々な事をしてきた……そう思った。短い人生だったが、楽しかった……そうも思った。

 そして、風月清花は静かに目を閉じた。


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