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ゴキブリになった僕  作者: 秋和翔
6/13

友情は芽生えない

 彼女に最後に姿を見せてから3週間ほど経った。そろそろ姿を見せないと本当に僕はもう人間に戻れなくなってしまう。どうやって姿を見せたら僕と分かってもらえるかなんて考えている暇もなくなってきた。とりあえず死なないように気を付けながら姿を見せなきゃ。

 そうしてこれからのことを考えている僕に声をかけるものが1匹。この前のゴキブリ君だ。僕は面倒くさいと思いながらも答える。どうやら良い食事場所を見つけたのだとか。僕には全く関係のないことなので適当に流す。そんな僕に気付いたのかゴキブリ君は話すのを止めた。

 何とも言えない沈黙が生まれる。僕はやっとゴキブリ君のほうに顔を向ける。特に怒っている様子でもないがなぜか喋らない。というより僕ではなく僕の後ろの何かに目を向けているようだった。どうしたのという僕の問いかけにもゴキブリ君は答えない。

 僕はゴキブリ君の視線の先に目を移した。そこにはパンのくずのようなものが落ちていた。どうやら食べるつもりらしい。隣のゴキブリ君はタンスの隙間から出るとパンのくずに向かっていった。

 そんなゴキブリ君を見ながら、ゴキブリって雑食っていうし木でも紙でも何でも食べるイメージだったのにわざわざ食料なんて探すんだなとふと思った。

 ゴキブリ君は着実にパンのくずとの距離を縮めていった。そんなゴキブリ君を狙う影があった。彼女だ。僕に向けたのと同じ表情をゴキブリ君に向けている。違うのは手に持っているものが、雑誌からゴキブリ駆除スプレーに変わったことだけだ。

 僕はそんな彼女の姿に改めて身震いした。そして心のなかでゴキブリ君にさよならを言った。しかしどういうわけか僕はゴキブリ君に向かって駆けていた。彼女は目の端から急に現れたもう1匹のゴキブリに驚いて小さな悲鳴を上げる。そんな彼女に向かって僕は羽を広げ飛び立つ。彼女は悲鳴を上げながらスプレーノズルをこちらに向けなおし発射する。僕はそれを華麗に避ける・・・必要はなかった。スプレーから発射されたガスは明後日に向けて広がっていく。僕は無事に着地し、冷蔵庫下に身を隠す。

 肝心のゴキブリ君は僕の後についてきたのか気づけば隣でパンを食べていた。何の感謝もないらしい。僕はつい声を荒げて言う。感謝の言葉もないんですかと。ゴキブリ君は不思議そうな表情を浮かべこちらを見る。彼は感謝されることはされてないというとまたどこかに行ってしまった。

 ゴキブリには感謝というものがないらしい。命を懸けて損をした気持ちになる。というよりなぜゴキブリなんかに命を懸けてしまったのだろうか。自分でもよく分からない。こういうのが本能と呼ぶのかなと自分勝手に解釈する。

 それよりも彼女との接触は何とかとれた。結局僕と分かってもらえるような行動は示せなかったけれど。

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