8/20
夜灯
今夜お別れを告げに行った
もう終わりにするのだ
何を?
それは脱いだきり忘れてしまった上着
本当に必要なものなら忘れはしないでしょう
夜の川は誘いながら流れていた
こっちへおいで おいで
悲しみはとうに乾いてしまって
ただ底の見えない暗い渓谷になっているのに
立ち止まってしまえばいいと
それでもその言葉を使いたくはないのはなぜ?
連続を諦め落ちてしまえば
敗北のようであり
逃亡のようであるからか?
青白い街灯の下に佇んでいる
家々の灯りの中に黙っている
嘘の亡霊は群れることを知らず
独りきりで夜を過ごす
まるで手遅れの朝を待つみたいに