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河口
消えそうな北風は空の向こう側を知らない
冷たさを忘れて眠る蝉はまだ朝を知らない
今のわたしは明日のわたしをまだ知らない
冬という名の川が流れていく
薄青の空には大きな雲が映る
橋の上より遥か下流を追えば
輝ける夜明けへと続いていた
ここに道があった
始まりの泉に日は沈み
太陽は夜の川を流れ
やがて河口に日は昇る
繰り返される終わりと始まり
繰り返される答えと問いかけ
求め続ける者と与え続ける者
隠れ続ける者と探し続ける者
慌てることはないのだ
停滞した思考の隙間から日常が浸食して
落ち葉のように訪れた言葉たちが散逸してしまっても
やがて わたしの河口から日が昇る
優しき凍えに洗われて
より一層の透明となって