凍てついた愛
ある夏の日の放課後。
僕、綾小路隼人は2つ下の後輩の貴博と新聞部の部室で過ごしていた。
天気が悪いせいか、それとも部活の疲れか、妙に眠い。
僕は首からタオルを下げたまま、机に突っ伏した。
「…寝ますか?」
「……いや、まだ……大丈夫…」
とか言いながら、少しずつだが確実に意識は遠のいていき、ものの1分後にはすっかり寝てしまった。
※ ※ ※
「……っぐ…!」
あまりの息苦しさに目が覚め、ゆっくりと目を開けると貴博が僕の首を絞めつけていた。
ぐっ、と首筋に添えた手に力がこもり、親指を気管にあてて塞ぐようにぐぐと押した。
叫ぼうにも、気道を塞がれてうまく声が出ない。
「綾小路先輩。僕はあなたの事が好きでした。独り占めしたいです。
でも、手を繋いでも抱き合ってもキスをしても、あなたが僕だけのものになるわけじゃないんですよね。それならば……」
じわじわと指を押す力を強めていく。
貴博は込められるだけのありったけの力で絞めあげ続け、ヒューヒューと弱々しい音が僕の喉の奥で漏れた。
「僕と一緒に永遠を生きませんか。……ねぇ、綾小路先輩」
「…あ……あがっ………」
彼はニコリと、まさに神の如き何の邪念も恨み辛みもない無邪気な笑みを浮かべた。
ああ、僕はこのまま死んでしまうのか…………。
温かい闇が僕を飲みこんでいき、そして、心臓と呼吸が止まってしまった………。