0-2 大事なもの
「……♪…♪」
ふいに考え事をしていた"俺"の耳に
脳内をくすぐるような甘美で寂しげな
歌が響いた。
(なんだこの歌声…ずっと聞いていたいような…
聞くのが怖いような……)
「……♪♪…♪」
"俺"が考えている最中も歌声は鳴り止まず、
その音の一つ一つが"俺"の思考を乱していく。
(…クソッ!……何だってこんな事に!)
"私"が今の自分の状況を恨めしく思っている。
(…私?…今まで"私"は自分のことを私と
言っていただろうか?)
ここで1つ"わたし?"は違和感を覚えた。
(……そういえば"わたし"の名前はなんだっけ?)
(……何処で生まれた?両親の名前は?)
歌声を聞く度に今まであった物が失われいく
感覚。それはどれだけ色褪せた毎日を送って
いた"わたし"にとっても大事なもの。
零れていく零れていく……
じぶんのなかみ
零れていく零れていく……
……誰の中身?
零れていく零れていく零れていく零れていく
零れていく零れていく零れていく零れていく
零れていく零れていく零れていく零れていく
零れていく零れていく零れていく零れていく
零れていく零れていく零れていく零れていく
零れていく零れていく零れていく零れていく
零れていく零れていく零れていく零れていく
零れていく零れていく零れていく零れていく
……そこで意識が途絶えた。