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僕と幼女の幸福な1ヶ月  作者: オクトパス
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12月4日(月) 神を待ちのぞむ

 今日は月曜日。いつものように朝御飯を持ってきてくれた真奈と眠たそうな顔をした未来と一緒にちゃぶ台を囲む。未来は昨日見せた明るい顔はどこへやら、不機嫌そうな顔で味噌汁を啜っていた。


「なんか…悪いね。未来の分も朝御飯が増えて…大丈夫か?」


「全然問題無いって。いっつも余分に作ってたからさ」


 真奈は軽く笑って言う。やっぱり真奈は強い。僕だったら絶対に引き受けないような面倒な事を平気でやってくれる。いや、もしかしたら平気じゃないのかも知れないけれど、それでも僕らの前だけでも平気そうにやってくれる。そこが、強い。


「そんな事より…私たちが学校行ってる間、未来ちゃんはどうするの?まさか、お留守番?」


「そ、そういえばそうだな…でも預かってくれる所も無いだろうし…」


「…ボク、お留守番出来るもん」


 未来は小さな声で言った。確かに、未来は突発的に泣き出したり、我儘を言うような事は無く、どちらかと言うと大人しくて、大人っぽい。だから、留守番も出来ない事は無いだろう。ただ…この部屋には。


「鍵が無いんだよな…」


「あ…確かに、もし空き巣に入られたら大変だね」


 今までは盗まれて困るような物は置いてなかったから無防備に部屋を開けていたが、今は違う。大金払っておもちゃを買ったし、何より未来がいる。また雨の中、ダンボールの中に閉じこもってすすり泣くような苦痛を味わわせるわけにはいかない。


「…ボク、お留守番出来るよ」


「いや、未来…そうじゃないんだって…」


「ほんとに大丈夫だよ…乱暴な人には…慣れてる」


「違う、慣れてるとかじゃないんだよ。そんなものに慣れたら…ダメだろ」


 思わず立ち上がった。つい、強い口調になってしまう。暴力とか脅しとか…そんなものに屈してはいけない。


「…だ、大丈夫だよ…ほんとに、大丈夫だから…変な人、来たら、布団の中…隠れるから」


 未来はここまで言っても引かなかった。僕に怯えながらも、強い意志の宿った目だった。


「…まあ、ここ以外に未来ちゃんが安全な場所なんて無いからね…とりあえず応急処置だけでもしとこっか」


「応急処置?」


「うん。ドアノブを紐で固定するの。これは中からじゃないと出来ないから未来ちゃんにやってもらう必要があるけど…出来るかな?」


「…う、うん」


 真奈はいつもの優しい眼差しで未来を見据える。未来も目を逸らしつつも同意した。


「まあ鍵よりは安全じゃないだろうけど…多少はマシだろうから問題無いか…」


 僕も渋々同意した。この後、僕か真奈の声が聞こえたら紐を外して中に入れる事、昼ご飯は真奈が持ってきた弁当を食べる事、そして真奈が未来に紐の結び方を教えて、不安な気分ながらとりあえず家を出る事になった。暫く歩いて真奈とは別れ、ただ一人、孤独に学校(せんじょう)へと向かっていった。


●●●


 僕は学校に着いた後、教室には行かずにある場所へと向かった。ある場所…というのはカウンセリングルームだ。普通に学校生活を謳歌している者ならまず来ないであろう場所。ただ、僕もいじめに遭っている事は言っていない。単に家庭の状況がよろしく無いからというだけの理由で行っているのだ。しかしカウンセリングの先生は何でも見透かしてるような事を言うので既にいじめられている事もばれているかも知れない。


 廊下を歩いている間も嘲笑の渦に巻き込まれる。それを鬱陶しく感じつつも歩き続ける。やっぱり、学校は嫌いだ。学校なんて監獄でしか無い。そして、監獄の中で(いじめ)を下される。何故、皆は監獄で笑っていられるのだろう。


 そんな事を考えている間に、カウンセリングルームに着いていた。一度、大きく深呼吸をして、引き戸を開けた。そこには円卓と二つの椅子があり、椅子には一人の幼j…女の先生が座っていた。偉そうに足を組み、ジョッキに入った泡いっぱいのビールを大仰に飲む姿はまさにおっさんである。


「…ちっ、まーた君か」


「…悪かったですね。僕で」


 不機嫌そうに僕を出迎えたのはカウンセリングの先生、石川亜希(いしかわあき)だ。年齢は非公表だが…話を聞く限りだと多分25~30歳ぐらいだろう。だが…身長は僅か145㎝しか無いので、見た目的には中学生、いや、小学生にしか見えない。その癖して酒や煙草が大好きである。その為、彼女を知っている一部生徒には『ロリババア』だの『ロリ教師』だの『ロリジジイ』などと揶揄されている。一見かなり酷いあだ名に聞こえるが、あながち間違っていないので困る。


「ていうか、また朝からビールですか。教師がそんなんでいいんですか…」


「はは、君は愚かだな。あたしは教師じゃない。あたしはただ学校にいるだけの相談しやすい姉御キャラだ」


「いや、姉御っていうのには身長が足りないと思いますけど…」


「…やかましいわ。まあとりあえず座りな」


 石川先生はビールを一気に飲み干した後、懐にしまっていた煙草を取り出して口に咥える。流石に火は点けていないが、何故これで誰からもお咎めを受けないのかが謎である。とりあえず僕は先生の指示通り片方の椅子に座る。


「で?彼女さんとはセッ○スしたのか?」


「なっ…いきなり何を…してないですよ。それに、彼女でも無い、ただの幼馴染です」


「ふん…面白くも無い。年頃の男女が同じ部屋で過ごして何もしないとか…もしかしてイン○テンツなのか?」


「…だから違いますって」


「そうか。あたしはもうお前と同じぐらいの年で既に初めてを奪われたぞ」


「そのどうでもいい告白やめてください…」


 このように、完全に言動がジジイである。こんな事なら真奈の事を教えるんじゃ無かったな…と今更ながら後悔する。だが、僕は更に言わないといけない事がある。


「あの…今日は先生に言っておきたい事がありまして…」


「何だ?ナンパの方法か?」


「違いますって。その…ちょっと僕の家に三日前、新しい住人が来て…」


「へぇ!もう彼女さんと子供使ったのか…避妊具でも付け忘れたか」


「茶化さないでください…公園に捨てられていた小さな女の子を拾って…」


「えぇ…ちょっと真面目に引いたぞ…幼女を家に連れて帰って色々やるとか…それなんてエロゲ?」


「ぼ、僕はそんな幼女を好きになるような趣味はありません!」


「いやいや、お前、普通の奴は街中で見かけた幼女をお持ち帰りしたりなんてしないぞ。ロリコン?ペドフィリア?も、もしかしてあたしに会いに来てるのもこの幼い体が目当て…」


 石川先生は肩を抱いて怯えて見せる。いつまでこの冗談の嵐に付き合ってなければならないんだ…と、大きくため息を吐いて、


「その娘には虐待の虞があります。だから…助けないとって思ったんです」


 そう言うと、急に先生の目は真剣になった。そう、僕は未来が親からの虐待を受けている…と考えている。あんな雨の中に捨てていくなんて普通の親はしない筈だ。


「…それは確かか?」


「確認はしていません。でも…」


「体に痣だとかの異常はあるか?それにその娘の住所は?塞ぎ込んだりしてる?」


 そういえば、一昨日未来と戦闘に入った時には未来の体に痣は見受けられなかった。いや、別に未来の裸体をじろじろ見ていたわけでは無いし、眼鏡も掛けていなかったので確かな事は分からないが…でも、未来の体は確かに綺麗だった。体だけで見れば虐待の形跡は無い。


「多分…痣は無いと思います。住所は教えてくれません。塞ぎ込んでは…いないと思います」


 真奈には心を開いていないようだけど…決して塞ぎ込んでいる事は無いだろう。


「…うーん、それを虐待というのだろうか…ただの迷子だったんじゃないのか?」


「いや、それは無いと思います。交番に行った時…彼女は迷子じゃないと言って…僕の事を警官の前で親だと言い張ってました」


「…分からないな…」


 確かに、先生に言われて自分でもよく分からなくなってきた。本当に彼女は虐待を受けていたのか?そう決めつけるには証拠が少なすぎる。虐待なんて受けていれば当然痣ぐらい出来るだろう。消す事だって出来るだろうが、それにしてはあまりにも…綺麗すぎた。昔の僕とは違って…


「…うむ、ほんとに分からない。何故お前がその幼女に痣がある事が分かるのだ…もしかして…見たのか?」


「こんな時にふざけないでくださいよ…」


「ふっ、判断はもう少しよく調べてからの方がいいだろうな。だが、お前の事を親だと言ったのには何かの理由があるのだろう。ま、精々守ってやれ」


 そう言って、先生は時折見せるとんでもなく大人っぽい笑みを見せて…懐にしまっていた缶ビールをぐいっと飲んだ。


「ありがとうございます。ちょっと気が楽になりました」


「お~。またいつでも来いよ」


 僕は席から立ち上がり、酔っぱらって微妙に顔が赤くなっている先生に背を向けてカウンセリングルームを出た。予鈴が廊下に鳴り響く。恐らく滅茶苦茶にされているであろう自分の机を想像して一瞬気が滅入るが、未来の事を思うと…そんな事はどうでも良かった。


●●●


 今日も全ての授業が終わり、下校の時間となった。今日もいつもの『日常』が繰り広げられていた。ただそれは僕にとっての日常なのであって、他の人の日常とはかけ離れていた。案の定、机には酷い落書きがされていたし、机の中に置いていたものは消失している。その後も嘲笑の渦に巻き込まれては嫌がらせを受けた。まあ…いつもよりは多少はマシだった気がするけど。


 今日もいつも通り家に帰ろうと校門を出た所で、


「ちょっとあんた」


 と、声が聞こえた。学校で話しかけられる事は皆無に近いので僕に言ったなんて微塵も思わずに通り過ぎようとした。


「ちょ、ちょっと…待ってよぉ!」


 声の主は慌てたように僕の前に立ち塞がる。声の主は怒ったようにこちらを見る。そこでようやく自分が呼ばれているという事に気付いた。周りの人はこちらを興味深そうにジロジロと見てくる。


「何…何か用?」


「用があるから呼んでるんでしょ!とにかく早く来て!」


 それだけ言うと、その声の主である少女は校舎の方へスタスタと歩いていった。これは付いていけばいいのだろうか。可愛い少女を使って僕を呼び出す作戦かな?一体何をされるのだろう…また意味も無く殴られるのか…それとも金を奪われるのか…どちらにせよ行きたくは無いが、今行かずに明日もっと酷くなると思うと苦痛だ。とりあえず今は大人しく付いて行った方がいいな…と、色々考えた末、早歩きでズンズン進んでいく少女の後を小走りで追った。


 少女は腰まで届くぐらいの長いツインテールを揺らして歩いていく。いつの間にか僕は僕は薄暗い校舎の中にいた。てっきり体育館裏でやられるのかと思ったがそんな事は無かった。空き教室でじっくりやられるのだろうか…しかし、ツインテールって言ったら僕は某古代怪獣の方を思い浮かべてしまうのだが、これはジェネレーションギャップという奴だろうか。


 暫く歩いていると、急にツインテールの少女がある部屋の前で立ち止まった。慌てて僕も立ち止まる。そこは生徒会室だった。まるで僕とは無縁な場所だと思っていたのだが、こんな時に来る事になるとは…


「…僕は何でこんな所に来てしまったんだ」


 まさか生徒会室でボコボコにされる事はあるまい。じゃあ何故?別に僕は悪い事はされた覚えはあるけど、した覚えは無い。即ち、ここに連れて来られた理由が皆目見当が付かない。


「何でって…ウチが呼んだからでしょ」


「だから何で呼ばれたんだ…」


「…あ、あんたを…助ける為よ」


「…どういう意味だよ」


「うっ…うるさい!いいから早く入るよ!」


 ツインテールの少女は露骨に不機嫌そうな顔になって、生徒会室の引き戸を大仰に開けて中に入っていった。正直、気は進まないが「あんたを助ける為」という言葉の真意を確かめる為に、僕も生徒会室に入る。


 中には、大きな黒いソファーが高そうに光った木の机の両端に置かれている。壁には棚があり、難しそうな本が大量に置かれていた。少なくとも漫画や小説は無さそうだ。そして、生徒会長用の校長の机に負けないような大きさの机が置かれていた。で、その机には生徒会長と思わしき人物が笑みを浮かべてこちらを見ていた。あの人が生徒会長なのか…何だかあまり好かない笑みだ。


「こんにちは。冬野くん」


 生徒会長はいけ好かない笑みを浮かべながら挨拶してくる。何故名前を知られているのだろうか…不審に思いつつ、僕は軽く会釈をする。会長はその後、手だけでソファーに座る事を促してきたので、また会釈をして座る。ツインテールの少女は反対側のソファーに座った。そういえばよくよく見ると、この少女、確か副生徒会長だった気がする。正直、副生徒会長としてはあるまじき態度だとは思うが…


「で、用件は何?僕、急いでるんですけど」


 急いでるのは事実だ。家には未来を置いているのだ。やはり幼女を家に一人きりで放置しているというのはあまり良いものでは無いだろうし…


「それは…副生徒会長の霜谷由香(しもやゆか)が言ってくれるよ」


 生徒会長…今、名前を思い出したのだが、風間優馬(かざまゆうま)が霜谷というらしい少女に話を促した。霜谷は不機嫌そうな顔のまま頷き、僕に視線を合わせないまま喋り出した。


「つまり…あんたを助けたいの。その…いじめからね」


「…今、なんて?」


「だーかーら!あんたをいじめから助けたいって言ってんの!何度も言わせないでよ恥ずかしい!」


 成る程そういう事か…ようやく自分がここに呼び出された意味を理解した。僕は、助けられるのだ。生徒会に。その提案はなかなか魅力的だと思った。未来を助けるのに精一杯の今、彼女らに頼るのも良いかもしれない。だが…


「具体的にどうするつもりなんだ?」


 いじめなんて、たとえ生徒会の力を使っても解決出来る程、簡単な問題じゃない。根はとてつもなく深く、根本から断ち切るなんて不可能だ。まさか教師を介入させるわけでは無いだろう。そんな事をすれば大事になって、余計厄介な事になる。


「それは考えてないけど…とにかくどうにかするの!一応、生徒会の公約に『いじめの撲滅』の項目があるから…生徒との約束は守らないといけないし…」


「でも作戦を考えずにどうこうなんて無理に決まってる。僕は降りるよ」


 どうせ『いじめの撲滅』なんて、生徒会長に当選する為にとりあえず入れておいたような項目だろうし、生徒との約束と言ったって、生徒会が勝手に約束をしただけで、生徒側は誰もそんな約束を交わしたとは思っていない。寧ろ、彼らはいじめを推奨しているんだ。僕を除いて、僕を標的に、楽しむのだから。


 僕は面倒臭くなってソファーから立ち上がり、引き戸に手を掛けた。


「ダメ」


 短いけれど、確かな意思の籠った声が僕を止める。いつの間にか霜谷はさっきまでの不機嫌そうな顔からは考えられないような真剣な顔になり、真剣な眼差しでこちらを強く見つめていた。今日、彼女と初めて目が合った。よく見ると、この校内だとなかなかの美形だった。


「ダメよ。あんたそれでいいの?そんなつまらない人生でいいの?辛くないの?」


 そのまるで母親が子供に叱りつけるような言い方に少しムッとした。僕は体を霜谷の方に向け直した。


「そりゃあ…辛いに決まってるでしょ。これじゃ良くない事ぐらい知ってるし、何とかしたいって思ってるさ。でも…どうにも出来ないでしょ…こんなんじゃ」


 こっちもまるで子供のように反論してしまった。子供のように、なんて言っても、実際に僕はまだ子供でしか無いのだろうけど。


「そうやって何もしないから何も変わらないんでしょ?あんたの事、いじめられてるって知ってからずっと見てきたけど…あんた、妙に達観してさ…あんな状況を変えようともしなかった。だから…ウチらが変えてやろうって思ってんの!」


 霜谷は一気に捲し立てた後、顔を赤くして不機嫌そうにそっぽを向いた。僕は…まだこんな少女に何か出来るとは思ってないし、もし生徒会長が介入してもここまで続いた時間がすぐに終わるとは思っていない。でも…今の霜谷の言葉を聞いたら…ダメ元でもやってみようと思わざるを得ないでしょ。


「冬野くん。どうか大船に乗ったつもりで『いじめ撲滅作戦』に協力してくれないかな。君の為に、この学校の為に」


 今までずっと笑みを浮かべながら黙っていた生徒会長、風間が言う。いや、彼は三年生だから『風間先輩』だな…


「…はい。分かりました。お願いします」


 僕は一つの望みを叶える為に、彼らに願いを託した。これで何か変わってくれるなら…そんな淡い希望を胸に秘めて。霜谷はそっぽを向いたまま頷き、風間先輩は微笑みながらその言葉を受け取ってくれた。さっきまではいけ好かない笑みだと思っていたが、今ではすっかり頼りがいのある笑みになっていた。


●●●


 その後は、明日から放課後に生徒会室に立ち寄っていじめ撲滅の為の会議をする事を決めて、今日の所は解散となった。無論、学校に行くのは億劫だし、絶対に行きたくない。でも、一筋の希望が見えただけでも少しは学校に行く意義があるというものだ。


 アパートに着く。自分の部屋のドアノブに手を掛けるが…開かない。そうか、防犯用に紐で固定してるんだった。固定されてるって事は空き巣などが入ったわけでは無さそうだ。実は、この部屋に引っ越してから約三年経ったが、二回空き巣に入られた。別に部屋に金目の物は無かったので荒らされただけで済んだのだが…今後入られない可能性はゼロでは無いのでやはり固定しておく必要はあるだろう。


 僕は部屋に入る為、二回ノックする。だが、暫く待ってもドアが開く気配が無い。おいおい…僕は更にノックするが、返事が無い。


「おーい!未来ー!僕だー!開けてくれー!」


 まさか寝てるのか…?それは困る…こんな寒い中で未来が起きるまで待つのか…詰んだ…これは詰んだ…


 僕が膝を抱え込んで落胆していると、ドアの向こう側でガチャガチャという音が聞こえてきて、ゆっくりドアが開いた。そして、恐る恐るという感じで未来がドアの僅かな隙間から顔を出す。


「キョ、キョウくんだったの?」


「あ…未来…そうだよ、僕だよ」


「…声出してくれなかったから分かんなかった…」


「そ、そうか。ごめん」


 声も出さずに、ドアノブをガチャガチャしてノックしまくったらそりゃ未来だって警戒するだろう。完全に空き巣のやり方だ。これは迂闊だった…


「ほんとに悪かった。怯えさせて悪かったよ…許してくれよ」


 ご機嫌直しに未来の頭を撫でる。すると、未来は恥ずかしそうに俯き、顔を赤くする。


「ん…いいよ」


 未来も完全に警戒を解き、僕は部屋の中に入る事が出来た。今日は疲れた…さっさと寝よう。明日に備える為にもね…

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