東陽ライスを召し上がれ
先輩が準備する為にどこかに行っている間、私は喫茶スペースのテーブル席でやることが無くなってしまう。
みかかさんといくるみちゃんはこれから執り行われるセレモニー対策なのだろうか、薬を飲んでみたりバケツを用意したりと大忙しだ。
「みかかちゃん、舌の何処の部分が味を感じないんだっけ?」
「バカ。そんなのうまく行くわけ無いから水で流し込むのよ」
「舌を麻痺させるために歯医者に予約よ」
「え〜〜。流石にそれは間に合わないよ〜」
「いや〜お待たせした諸君」ガ〜〜ン。
先輩がにこやかに戻ってきた。
先輩が戻ってくるとみかかさんといくるみちゃんは覚悟を決めたというか諦めたようで大人しく着席する。
「さて、ふかばすへの加入の儀式といえば!これで〜す」先輩がアルミ出前箱から得体のしれない料理を人数分取り出す。
「見たことのない料理です」そして白くて綺麗。
「そう、これは私がこれから東陽町の名物として売りだそうとしている、その名も東陽ライスよ!」隣ではみかかさんといくるみちゃんが祈ったり辞世の句をしたためたりしていた。
「食べたら命にかかわるんですか?」私がそう聞くと。
「そんなことないわよ、とっても栄養満点。美味しそうでしょ?」白いクリームで覆われたそれの見た目はご飯のように真っ白で、クリーム状。
「スイーツみたいですね!」
「そうよ、生クリームでコーティングされていて、そこに白米が振りかけてあるからね」
「白米?」
「そう、白米。私は深川めしに対抗してね、要するにあさりが食べたいならご飯の代わりにあさりを食べればいいじゃないって思ったの」
「はぁ」
「それで深川めしのあさりとご飯の立上を逆転させた訳。要するにあさりをドーンと入れてそれを生クリームでコーティング、そこに白米を振りかけたものが東陽ライスなのよ」
「あ〜」生クリームだけおいしくいただいちゃ駄目かなぁ。
「これ完食しないとふかばすに入れないゾ」マジっすか。
「いただきます」私は覚悟を決めてスプーンを手にし、目の前の白い悪魔の攻略にとりかかる。
「お味はどう?」先輩が期待を込めてそう聞いてきた。
「あさりですね」
「他には」
「あさり・あさり・あさり。あれ?これはしじみかな?」
「隠し味に入れてみた」
「(笑)」
私はみかかさんといくるみちゃんの水ヘルプ力を借りてなんとか東陽ライスを完食した。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
そう言って、先輩がからになった皿を回収して奥に引っ込んだ。
「お二人とも完食したんですね」
「あぁ」
「頑張りました」
「でも今日のは少しマシだったヨ」「同感」
「量が少なくなったのが嬉しいね」みかかさんといくるみちゃんが頷き合っている。
「白米じゃなくてあられにすればいいんじゃないか?」
「あと、あさりは砂抜きをして欲しいところだな」
我々三人は白い悪魔・東陽ライスを通じて少し距離を縮めた。これって、先輩してやったり??