ポリ容器置き場
今思えば、どうして私は先輩について行ったんだろう。あの時ゆ、ゆうやく振り切ってさ、入学式に参加してれば普通の高校生活をエンジョイ出来たのかな…。それは無いか、友達出来たって制服を売ってくれなんて言ったらドン引きするよね、普通。
つまり、制服ノルマというスティグマが私の心に暗い影を落とし、怪しいルートへと私を進ませたのだ。
「哲子ちゃん、こっちだよ、はやくぅ」やっぱり金髪は目立つなぁ。学校で先生に何も言われないのかな。私は小走りして先輩に追いつく。先輩は駅を出てから学校とは逆方向に進んだので何処に連れて行かれるのかと思ったけど、なんてことはない裏通りを進んだだけでほぼ学校の眼と鼻と先と言える場所に到着。
「ここで〜す」そう先輩が指し示す扉にはこう書いてあった。
「ポリ容器置き場?」マンションのゴミ捨て場の様な。
「大丈夫、臭いのは最初だけだからっ」
「この中に入るんですか?」
「そうだよ」
「中に何があるの?」
「それは入ってからのお楽しみ」ここまでついて来たンだからと私は健気にも先輩と一緒にポリ容器置き場の中に入った。
「普通のゴミ捨て場ですね」制服捨ててないかな。なんてゴミを観察していると。
「臭いが移るから早くこっちにおいで」奥で手招きしている。
「開けゴマ〜」先輩が威勢良くそう声を上げながらコンクリートの壁をペタペタと触ると、アラジンもビックリな隠し扉が開き、その先には地下へと繋がる階段が見える。
「ささ、どうぞどうぞ」勧められるがまま私は非常灯のみの階段を恐る恐る下りだす。後ろの秘密扉が音もなく閉じると一殆ど何も見えない暗闇状態。いや、階段の先に僅かな光に気がついた。
「気をつけてね」頭の上から先輩の声が聞こえる。私は一段一段と階段を進んだ。階段が終わり踊り場を90度曲がると開放状態の分厚い扉と、その先に光源の正体である扉があった。
「喫茶店?」ゴミ置き場の地下に喫茶店があるなんて。
「確かに喫茶店みたいだな。でもね、ここが私達のアジトなの」そう言って先輩がドアを開けるとカランカランと来客を告げる音が鳴り響いた。鈴も玄関マットもあるし哲子が喫茶店と錯覚したのも無理からぬ事ではあった。