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巨神迷宮譚  作者: みざり
7/14

カウンター

ごめんよぉ、遅れてごめんよぉ(´;ω;`)



「おはようございます。イーアさん」

「あら、キイロさん」

「依頼見せてもらってもいいですか」

「……依頼? ああ、通達にあったものですね」


 少し待ってください、とイーアさんが受付の奥に引っ込んでいきました。

 どもども、皆さん。朝起きると寒くないことに違和感を覚える北の辺境民のキイロです。

 エシャナダさんから頼まれていた鉱石の運搬を終わらせてギルドにやってきました。とりあえず今日の予定は依頼の確認が済んだら一度迷宮に潜ってみよう思います。

 随分と時間がかかっている気がしますけれど、よくよく考えればガランフォートに着いたのが昨日であることを考えれば、そう、おかしくもないのですよねぇ。

 まぁ、今は依頼の確認からですね。ちょうどイーアさんも戻ってきました。


「すみません、お待たせしました」

「いえ、そんなことないです」

「そうですか。受注して欲しい依頼はこちらですね」


 そういって差し出されたのは分厚い冊子でした。

 塩漬けってこんなにあるものなんでしょうか? 思わずイーアさんの方に顔を向けると、イーアさんは苦笑を浮かべていました。


「まぁ、この中の依頼はギルドでも達成不可能であると判断したものや仲介の必要なしというものがほとんどで、本当にギルドの人間を必要としているのはごく一部ですから」

「達成不可能? 仲介の必要なし?」

「ええ、例えば……」


 イーアさんが冊子をパラパラとめくっていきます。


「達成不可能はこれとかですね」

「これは……」


『凍月火草の採取

 内容:【零獄アクバラ】に生えるという『凍月火草』の採取を願いたい。

 報酬:金貨百枚、場合によっては上乗せ有り。

 依頼主:モント・T・ゼアリア』


「……貴族の戯れという奴でしょうか?」


 依頼主が貴族であるのがわかるかというと『Z』の称号が理由ですね。

 貴族には個人の名、家の名のほかに王家から贈られる称号があります。王家の証である『A』の称号から始まり、地位や役職に応じて贈られる称号はその貴族の格を示します。一番地位の低い騎士爵に贈られる称号が『Z』だったように記憶しています。

 まぁ、貴族位なんてその日暮らしの冒険者、探索者にはあまり関係のない話ですけれど。


「だと思います。それにそもそも【アクバラ】はガランフォートとは真逆に位置しますし、魔境は人の生きていける環境にはないと聞きますから」


 そこの出身です、とは言えません。

 それに『凍月火草』も馴染みのある植物で、自分も含めてあそこの人間からすれば食用にもならなず雑草と変わらないので金貨百枚という報酬は過分に思えます。


「達成不可能なものは大体が貴族からの無茶ぶりですね。あとは仲介の必要なしと判断したものもありますがそちらは紹介する必要もないでしょう」

 

 大半のものが見る必要もないものだったとしても冊子の分厚さが変わるわけではありませんから面倒です。

 はぁ、とため息一つ。

 そんな自分にイーアさんは……、


「ですので、予めこちらで依頼を見繕ってみました」


 差し出されたのは数枚の依頼書でした。

 ニコリと浮かべられた笑顔に後光が差して見えました。




   ◇




 そんなわけでイーアさんが選別してくれた依頼の中から後日『倉庫の整理』を請け負ってみることになりました。

 それはひとまず置いておきましょう。

 なんて言っても、迷宮に潜るのですから余計なことは考える必要もないでしょう。


 迷宮はガランフォートの街の内部に存在しています。

 迷宮は内部の魔物が討伐されることなく増えたりすると『氾濫スタンピード』を起こす危険もありますが、逆を言えばガランフォートのようにきちんと管理されていればそこまでの危険性もなく、むしろそこに待ち構えておけば黙っていても探索者がやってくるわけですから迷宮までの道には簡単につまめる串焼きなどの食べ物を売る出店や迷宮で役立つ道具を売る露天商などが多く開かれておりギルドのある大通りとはまた違った賑わいが見て取れます。

 夜になれば酒を出す店や娼婦などの声掛けも加わり、今より混沌とした様相を見せるらしくそれはそれで楽しみです。


「ふぅん、ここが迷宮の入口かぁ」


 迷宮は洞窟や遺跡などに魔力や瘴気が溜まって発生するタイプ、かつて戦場だった土地が瘴気により汚染されることで発生するタイプ、そして【神】によって試練として人間に与えられた『神造迷宮』と呼ばれるタイプが存在しています。

 一つ目と二つ目は本来ならば同じのようなものなのですがそこに発生する魔物の種類から別のものとして取り扱われています。

 一つ目のタイプは多様な魔物が発生しますが、二つ目は流れた血の影響からか『アンデット』系の魔物が多く発生するのです。その特徴から一つ目のタイプは『迷宮』としか呼ばれませんが二つ目は『不死迷宮』、『不浄迷宮』、『死霊迷宮』などと称されます。

 そして、最後の『神造迷宮』は資格のある人間しか入ることができず、またその難易度もほかのタイプとは桁違いに高いそうです。かつて勇者と呼ばれた人族が一層すらも攻略することすらできなかったと言われるのですからよっぽどなんでしょうね。


 まぁ、そんなわけでガランフォートの迷宮は魔力、瘴気が溜まった結果に生まれた通常の『迷宮』なのですが、この迷宮は歴史的に見ても最低でもかなり古いもので、なおかつ未だに成長しているとのこと。

 予想されている最終階層は二百だとかで現在攻略されている階層が百であることを考えればそのすごさがわかるというもので、それに加えて未だに成長中ですから果たしてこの迷宮が攻略されることがあるのか気になるところです。

 

「とりあえず目標は五階層かな?」


 迷宮の入口にはギルドの職員がフル装備で配置されています。

 これはもし『氾濫』が起きた際にすぐに知らせることができるようにするための措置と許可のない人間が侵入できないようにするためだそうです。

 ここで言う、許可とはギルドの登録証なので入口で提示すれば問題なく迷宮に通れるのです。


「そこの、あー、木の棒持った奴ちょっと待て」


 ……おんや?


「なんでしょう?」

「お前、そんな格好で潜るつもりか?」


 そう言われ自分の格好を改めて確認しますがおかしいようには思えません。

 今の装備を簡単に言えば、布の服、布のズボン、革のローブ、鉄板仕込みの靴、木の棒、布のカバンですけれど何の問題もないはずです。

 ちなみに鉄板仕込みの靴改め安全靴はエシャナダさんから売ってもらいました。

 うん、と一つ頷きます。


「問題ありませんね」

「どう見ても問題だらけだろうが」


 その言葉に首を傾げてしまいます。


「……?」

「いや、首傾げてんじゃねぇよ。まずなんで普通の服なんだよ。鎧くらい用意するだろ」

「鎧とか動きづらいじゃないですか。あとそこまでお金に余裕がありません」

「服に関しちゃ百歩譲ってもいいが、武器はなんで木の棒なんだよ」

「木の棒をバカにしたものじゃありませんよー? 突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀と言いますから」

「いや、でも木の棒じゃねぇか。魔術師ってわけでもなさそうだし」


 門番のお兄さんとあーだ、こーだと言い合いますが平行線です。実に不毛です。

 

「お兄さんの言い分も分かりました。こうなれば実力を示した方が早いですね」

「あ?」

「いい加減、自分も迷宮に潜りたいのでかかってきなさいと言っているのですよ」


 ギャラリーがざわつきます。

 まぁ、ギルド職員に木の棒装備した人間が喧嘩を吹っ掛ければ当然でしょう。


「そもそもあなた如きが心配すること自体がおこがましいのですよ」

「テメェッ」


 心配してくれるお兄さんには悪いですが今の自分の興味は迷宮にしかないので挑発もさせてもらいましょう。


「後悔すんなよ」


 お兄さんが剣を抜きます。

 お兄さんの剣はどうやら普通のもののようで『イグドラ』なら何の問題もなく打ち合えるのでしょうが自分の手札を人前で晒す気にはなりません。

 相手の出方次第ですかね。構えは中段ですがどう来るでしょうか?


「ハッ」


 なんの捻りもない振り下ろしでした。

 とは言っても、お兄さんも結構な使い手らしく当たれば痛そうです。


「よっ」


 相手方の剣に自分の得物を巻き付け、跳ね上げます。 

 跳ね上げられた剣はお兄さんの手を離れ、地面に落ちます。


「これでお分かりいただけましたか?」


 カウンターというのはそれなりの実力がなければ難しいですし、それが武器を目的としたものならより難しくなります。

 お兄さんにも実力は分かってもらえたのではないでしょうか?


「わかったよ。悪かったな、呼び止めて」

「いえ、では自分は迷宮に潜らせてもらいますね」

「ああ。だけどよ、そのうちちゃんとした武器に買い換えな」

「そうですね。そのうち」


 それがいつかは分かりませんし、そもそも『イグドラ』以上の武器となるとそう簡単に出会えるものではないですから換えるとしても大分先のことでしょう。

 なんにせよ、初の迷宮です。

 いやぁ、わくわくしますね!



なんか納得できないのであとで書き直すかもしれません。

あと【氷結白夜】だと話的に合わなかったので【零獄】に変更しました。

それに合わせて他の魔境も【~獄】という形になりました。

アクバラを除いても一つしか出ていませんが。

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