忠実な伴走者
文豪と呼ばれた作家の文字は
象形文字か迷路か嫌がらせか
一文字が溶けて垂れ下がっていた
暗号解読させる気か
針金を無闇にくねらせたような
顕微鏡で眺めた微生物のような
文豪曰く「文字」
苦戦したであろう編集者の
解読文字が伴走者のような
忠実さで並んでいた
専用の文字解読マニュアルが
あったのか
熟練の業か
考えるだけで気が遠くなる作業だ
苦し気に眉間に皺よせ唸る
編集者の姿より
難解であればあるほど
待ってました!の勢いで文字解読に
勤しむ姿の方が
イメージとして鮮やかに浮かんだのは
忠実な伴走者のような文字に
湯気立つ熱を感じたから
かもしれない