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第八十話 物語を紡ぐ者

 凌統に任せろとは言ったものの、義経は草薙の剣の柄を握り締め、クラーケンの出方を伺っていた。膝丸とは違う感触……この立派な剣を、自分に使いこなせるのかと自問自答した結果、本来の持ち味を引き出せずにいたのだ。


「義経、早いとこその“草薙の剣”で、この烏賊野郎をぶっ飛ばしてやれよ」


 攻撃に転じない義経に痺れを切らした弁慶が声をあげる。その瞬間、クラーケンは目の色を変えた。


「草薙の剣だと? ま、まさか……」


 明らかに動揺したクラーケンは、思わず身構えた。どうやら、草薙の剣が自分に取って脅威だと自覚しているらしい。


「あの、馬鹿……余計なことを……」


 お雪と川姫が待つ船に乗り込もうとした甘寧は、振り向き様に言うと凌統の肩を掴み、


「凌統、戻るぞ! 義経を援護する」


と、息巻いた。

 凌統はと言うと、それを予想していたかのように、


「そう来ると思ったぜ」


と、再び方天戟を握り締めた。

 歩くことさえままならない。役に立てるとも言えない程憔悴しきっていたが、義経達との絆が甘寧と凌統を奮い立たせたのだ。

 一方、義経はと言うと、草薙の剣を手にしたはいいが未だ攻撃に転じることが出来ずにいた。


「某に……草薙の剣は……」


「何だ、宝の持ち腐れか? ならば、恐れることはない」


 クラーケンは草薙の剣の使用を躊躇する義経に、触手で襲い掛かった。しかし、その行動が義経を覚醒させた。


「やるしかないですね」


 義経は鍔で受け止め押し返すと、そのまま触手を根元から切り落とした。


「義経、やれば出来るじゃねぇか」


 弁慶がそう言ったのも束の間、触手は再生した。


「な、何故だ? 義経、お前……」


 弁慶の目に映ったのは、膝丸を持った義経だった。草薙の剣を使いこなせないと判断した義経は、瞬時に膝丸へとシフトしていたのだ。


「やはり、某には使いこなせない……」


 肩を落とす義経を見てクラーケンは、触手で左手に持った草薙の剣を弾いた。


「し、しまった!」


 空高く舞い上がる草薙の剣。それは、玄武池へと向け落下していった。玄武池は底無し。一度底まで落ちると、二度と浮き上がってくることはない。






 誰もが絶望を感じた瞬間――







「これが、草薙の剣か!」


 水虎の背中に乗り駆け付けたオレは、寸での所で草薙の剣を掴み上げた。


「タ、タクマ殿!」


 義経は安堵の表情をオレに見せた。


「皆……待たせたな。確かに草薙の剣は受け取った」


「遅ぇぞ、タクマ」


「甘寧、すまない。所で、酒呑童子はどうした?」


「クラーケンにバラバラにされちまった。全て俺様の責任だ……」


 甘寧は、酒呑童子の死をオレに告げると自分を責めた。だが、それを払拭するようにオレは言い添えた。


「自分を責めるな。この勾玉があれば、奴は生き返る。離れていろ!」


 オレはそう言うと勾玉を握り締め、バラバラにされた酒呑童子に祈りを捧げた。すると、バラバラだった肉体が集結し、酒呑童子は目を覚ました。


「ここは? 我輩は……死んだ筈じゃ……」


「酒呑童子、タクマに感謝するんだな


「ふん、礼など言わん。だがな、カリは返すぞ……テイマー」


「期待はしない……さぁ、後はオレがコイツ(クラーケン)を倒す。皆、船から脱出してくれ」


「おいおい、タクマ。そりゃねぇだろ?」


「甘寧! 脱出しろと言っている!」


 優しさの裏返しで、オレは強い口調で言った。揺るぎないオレの気持ちを察してか、義経や甘寧は沈みかけた船から脱出した。


「我輩は、お前の指示を受けない」


「勝手にしろ!」


 オレと共に船に残った酒呑童子。口では、強がりを言ったがその気持ちを嬉しく思っていた。


「さぁ、クラーケン。続きを始めようか?」


「草薙の剣を持とうとも、我に勝てる者はいない」


「それを今から証明してやるさ。バトルフォース展開!」


 オレは水虎のバトルフォースを展開すると共に、草薙の剣を強く握り締めた。

 


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