☆第二十七話 天狗の里での一幕
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三途の川を越えたオレ達は一里程歩き、竹林へとやって来た。竹林は青々と育ち、遥か頭上には家らしき物が幾つも建ち並ぶ。そんな異様な光景に、オレはここが"天狗の里"だと直感的に悟った。
風もないのに、オレ達が竹林に足を踏み入れた時から、強固に育った竹は慌ただしく揺れ動く。姿こそ見せないが、何者かに監視されているようだ。
「チッ! さっきからウザいな。オレ達は逃げも隠れもしない。そろそろ姿を現したらどうなんだ?」
オレが声を張上げるも、そいつらは問いに答えることなくただただ監視するのみだ。
「タクマ、無視して行こう。私達にビビって姿を現さないのよ」
「そうだな。オレ達も有名になったってワケだ」
オレとお雪はわざと聞こえるように、挑発にも似た言葉を発した。どうせ、戦闘になるのは目に見えている。こうした方が、手っ取り早いと考えての作戦だ。
すると上空から鼻の長い妖怪が二体……竹林の陰から一体現れた。
「ケケケっ。大した自信だな。俺達を天狗三兄弟とわかっていての挑発か?」
「天狗三兄弟? 知らんな。田舎者に用はない。目障りだ、そこを退け!」
「ようよう、退けと言われて退ける奴がいるか? 兄上、喰っちまおうぜ!」
「まぁ、待てお前達。旅の者、弟達が失礼した。俺の名は土天狗。そして、ここは天狗の里……お主らの来るような場所ではない」
「ほう……頭のキレる奴もいるんだな」
「貴様――っ!」
「風天狗! 落ち着け。旅の者よ、何用でこの地に参られた? 三途の川を越えて来たとなれば、余程の事……」
「オレは、酒呑童子を倒しに来た。"勾玉"を手に入れる為にな」
「酒呑童子様を? 笑わせるな!」
「火天狗! 落ち着け。見苦しいぞ! 旅の者、度々申し訳ない。こやつらどうも血の気が多くて……。して、旅の者よ。酒呑童子様を倒しに参られたとは、まことか?」
「あぁ、廃屋病棟で倒した鬼童子が言っていたんだ。親玉の酒呑童子が、勾玉を持って天狗の里に行ったってな」
オレがそう言うと、三体の天狗は何やら話し込んだ後、土天狗は告げた。
「その話、まことなら興味深い。旅の者よ、着いて参れ。案内する」
「兄上、こんな輩に」
「風天狗! この者達の言っていることがまことなら、我らの敵う相手ではない」
「くぅ……」
風天狗と火天狗は土天狗の背後に着いた。怪しい雰囲気はあるが、ここは従うべきか、それとも……。
躊躇するオレに、土天狗は言った。
「どうした? 着いて参られよ」
「タクマさん、どうするの? 罠かもしれないわ」
川姫の言うことも強ち間違ってはいない。しかし、土地勘のないオレ達は、着いて行くのも一つの手だ。
散々迷った挙げ句、オレは……
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着いて行くなら、『着いて行く』へ
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