表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/155

第八十八話 クラーケンの無駄な足掻き

 クラーケンは天を仰ぎ、何やら独り言を呟き始めた。オレはその行為がなんなのか気にもとめず、妖怪達にクラーケンの攻撃に備えるように促した。


「馬鹿だ。馬鹿な奴らめ……」


 クラーケンはそう言うと、攻撃に転じた。どうやらターゲットは、真琴のようだ。

 前方に守備を置く真琴の側面から、忍び寄る触手。真琴は自らの長い髪に視界が遮られ、反応に遅れた。


「真琴、横よ!」


 川姫が注意を促すも、クラーケンの素早さは健在だ。真琴は呆気なく触手の餌食になり、75のダメージを受けた。――HP45/250――


「うぅ……へへっ……何とか耐えたよ」


「真琴、よく耐えた。それでこそお前だ。さぁ、川姫! クラーケンに止めを刺すぞ!」


「任しておいて。真琴、やられた分は返すのよ」


 川姫の振ったDDは、3の通常攻撃を示した。

 真琴は相当なダメージを受けながらもケロッとしている。どうやら戦闘を重ねることにより、タフになってきたようだ。


「クラーケン、ボクはこっちだよ!」


 お返しと言わんばかりに、真琴はクラーケンの周囲を縦横無尽に駆け回った。


「ちょこまかと、煩いハエが!」


「ハエが止まったよ!」


 真琴は憎まれ口を叩くと、クラーケンの顎に飛び膝蹴りを喰らわし57のダメージを与えた。


「うぎゃぁ! 己れ――っ!」


 クラーケンが怨嗟を抱きながら叫ぶと、ポロポロと自慢の牙が大地に転がった。――HP128/750――

 更に追い打ちを掛けるように、オレは水虎に対するDDを振った。出た目は2の通常攻撃だ。

 水虎は華麗に飛び上がると、クラーケンの後頭部にのし掛かり残り少ない牙を蹴り上げた。クラーケンに81のダメージを与えた。――HP47/750――


「はひゃ、はひゃ……」


 全ての牙を失ったクラーケンは、言葉を発することさえ出来なくなった。哀れな末路だが、生かしておくわけにはいかない。続けざまにDDを振る。出た目は同じく1の通常攻撃だ。


「シーサーペントよ、止めだ!」


「御意」


 シーサーペントは、巨体を揺らしながらゆっくりとクラーケンに近付いた。


「はひゃ、はひゃ……ひゃのむ。ゆゆひてふぇ……(頼む、。許してくれ)」


「クラーケン……命乞いか? 残念だが、運命には逆らえない……死ね!」


「うぎゃわ――っ!」


 クラーケンの断末魔と共に飛び散る肉片……。やがて、それが鳴り止むと玄武池に静寂が訪れた。

 クラーケンは煙のように消え、比較的大きなクリスタルを残した。


「主よ、約束だ。このクリスタルは、我が頂く」


 いの一番に飛び付く一本だたら。確かにそう言う約束だった。


「好きにしろ。よし、お雪、川姫! 甘寧達を追うぞ!」


「ちょっと、タクマ。義経と弁慶はどうするのよ。置いてくつもり?」


 お雪がそう言うと、義経が言い添えた。


「今回のことでわかりました。やはり、某達には修業が必要です。今度こそ邪馬台国に戻ります」


「あぁ、そうしてくれ。役に立たないからな」


「当たってるだけに、悔しいですね。

しかし、タクマ殿、鬼骨王には十分注意して下さい」


「どう言うことだ?」


「三種の神器も残す所、あと鏡だけ。このまま鬼骨王が黙っているとは思えません。きっと、取り返しに来る筈です。決戦の時、再び落ち合いましょう」


「わかった。あまり、無理はするなよ」


「タクマ殿も」


 義経に強い口調で言ったのには、訳がある。実力があるからこその言動だ。裏を返せばそれは、オレなりの“優しさ”って奴だ。

 オレ達は振り返りもせず、魔合肥へと歩き出した。


「タクマよ、さっきのクラーケンの独り言じゃが……」


 突然、言葉を発する妖怪大翁。


「それがどうした?」


「どうも、引っ掛かるんじゃ。それにクラーケンを甦らせた主。ワシらの目の届かない所で、何か飛んでもないことが起きてるやも知れんな。もしや、バックベアード?」


 少しずつ絡み合う歯車……。鬼骨王、それにバックベアード。どうやら、オレは色んな“物の怪”に好かれているようだ。


「じいさん、心配するな。オレが必ずぶっ飛ばしてやる!」


 オレは漆黒に染まる鬼赤壁の空を見上げ、唇をキュッと噛んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ